賃貸管理会社の株式会社長栄(本社:京都市/代表取締役 社長執行役員:舩井 渉)は、京都市が全国で初めて実施する「市営住宅の空き住戸を若者・子育て向けに活用する」事業(愛称「こと×こと」)の委託事業者に選定されました。

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(左から)長栄 舩井代表取締役 社長執行役員、京都市松井市長、長栄 奥野執行役員、き京都市伊藤担当局長。
向島市営住宅にて撮影

当社では、向島市営住宅の空き住戸を京都市から借り上げ、リノベーション工事した後、若者や子育て世帯を対象に廉価で提供する取り組みを行っています。

なぜ、賃貸管理会社である長栄が市営住宅を活用した取り組みを進めるのか――。その背景や活動の内容、この事業に込めた想いをお伝えします。

――そもそも、京都市の「こと×こと」事業とは

【市営住宅を民間企業に貸し出し、若者世帯の入居促進 全国初の取り組み】

京都市が実施する「市営住宅の空き住戸を活用した若者・子育て世帯定住促進事業」は、市営住宅の空き住戸を当社などの民間企業に貸し出しリノベーションした上で入居してもらうという全国初の試みです。

所得制限を設けず、公営住宅の枠を超えた制度設計が特徴で、「京都市若者・子育て応援住宅」として、愛称「こと×こと」のもと2023年にスタートしました。

京都市とタッグ、市営住宅をリノベ 長栄が挑む“若者流出”対策「こと×こと」事業の実像と成果は


背景①【住宅価格高騰 新築マンション平米単価100万円超】

全国の都市部と同様に、京都市でも地価上昇に伴い住宅価格や家賃が高騰しています。

不動産経済研究所(※1)によると、2024年の京都市内における新築分譲マンションの1戸あたりの平均価格は5,610万円、平米単価は104万円に達しており、若い世代や子育て世帯が京都市内に住むことが難しい状況にあります。

背景②【人口流出ワースト1、2位の常連】

2023年の人口動態調査では、京都市の人口は137万9,529人となり、全国市区町村の中で神戸市に次ぐ人口減少率ワースト2位となりました。

2020年から2022年までは3年連続でワースト1位。2023年はワーストこそ免れたものの、依然として若者・子育て世帯の流出が深刻な課題となっています。

【向島市営住宅について】

京都市伏見区南部に位置する「向島ニュータウン」は、市営住宅、UR賃貸住宅、分譲マンションなど全11街区で構成される大規模な住宅市街地です。

その中の一つ、「向島市営住宅」は、竣工から48年経過しますが、建築当初からお住まいの方が多く、入居者層の高齢化が進んでいます。

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       京都市南部に位置する「向島ニュータウン」

〇当社が管理する「向島市営住宅9街区住棟」について

市営住宅には空き住戸が多くみられ、当社が管理する「向島市営住宅9街区住棟」では、当事業を開始した2023年9月時点では全219戸中、71戸が空室となっていました。

同年7月、先行試作型として1室、リノベーションし、その後9室の改装を行ったところ、想定を大きく上回るスピードで全室ご入居が決まりました。「想像以上に快適で住み心地が良い」と反響をいただいていることから、2023年度の10戸に引き続き、2024年度は追加で20戸をリノベーションしました。2025年度はさらに30戸ほど再生し、向島ニュータウンの活性化と子育て世代の定着化に取り組んでいます。


――長栄による向島住宅での取り組みとは?

【設備を一新、ライフスタイルに合わせた間取りに】

まずは、ソフト面ですが、50年前に主流だった和室3DKの間取りから、現在のライフスタイルに合わせた洋室2LDKへと改装し、家族が自然と集まる団らんの場をつくりました。

収納スペースの充実や、老朽化した住宅設備機器の一新など、住み心地にこだわりました。

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               改修前の室内の様子

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   改修後の室内。3DKから2LDKに間取りして、収納スペースを多く設けた

【賃料を廉価に設定 所得制限なし】

リノベーション後の住戸は、2LDK(57.72㎡)で、家賃相場より約1万5,000円抑えた月額58,000円、共益費5,000円に設定。

「こと×こと」事業では、若者・子育て世帯であれば所得制限なく入居可能で、経済的負担を軽減する仕組みとなっています。

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           壁面収納を設け部屋をすっきりさせた

【松井孝治京都市長、現地を視察】

2025年4月、松井孝治京都市長が向島市営住宅9街区を訪れ、改修前後の住戸を実際にご覧になりました。日当たりが良く明るい居室をご確認いただき、「リノベーション前後の違いに驚きました。この広さで家賃が月額約6万円というのは、民間の賃貸市場と比較しても非常に割安です。これほどの価格設定なら、入居者がすぐに見つかるのも納得できます」と評価をいただきました。

さらに「向島市営住宅9街区で得られた成果を、他の市営住宅にもぜひ展開したい」とのご意見を賜りました。

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        リノベーション前の部屋を視察する松井市長

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            廊下からの眺望を確かめる松井市長

【イベント・コミュニティ形成で定住促進】

既存の入居者様、新たに入居される方の垣根をなくし、お互いが安心で快適に暮らせるよう、交流の場・機会をつくるよう心掛けました。

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              キッズルームのイメージ

〇キッズルーム設置

9街区の1階住戸をリノベーションし、入居者が利用できるキッズルームとして開放しました。

洋間の押し入れを撤去し、玩具や絵本を収納できる棚を設置し、床には座ったり寝転んだりしやすいファブリックフロアを採用。
また、ダイニングスペースにはミニキッチンを設置し、子どもを遊ばせながら親同士が交流できる環境を整えました。

〇イベント開催・参加

向島市営住宅9街区限定でさまざまなイベントを開催し、既存入居者の方と、新規子育て世代の方との間にコミュニティが醸成できるように努めています。

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 向島市営住宅 公園遊具ペイントの様子。塗装後、子どもたちの利用が増えたという

①京都市主催のイベントに参加・協力

京都市主催の「向島市営住宅 公園遊具ペイント」に参加・協力し、向島市営住宅区内の公園3箇所にあるすべり台、象形遊具などを塗装しました。参加者からは「きれいに生まれ変わって良かった。きれいになって居心地が良くなったので、これからは利用したい」「楽しかった。もっと塗りたかった」などの声が寄せられました。

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       ファブリックリースづくりに体験してもらったときの様子

②企業とイベントコラボ

左京区の老舗企業・川島織物セルコンとのコラボレーションでは、着物の帯やカーテン、舞台の垂れ幕、緞帳(どんちょう)などの端材を活用したワークショップを開催。参加者は、ランタンやファブリックリース、ハーバリウム、メッセージカードなど、作ってみたいアイテムを選びながら、ものづくりの楽しさを体験しました。織物の装飾に使われる「タッセル釣り」も行い、子どもから大人まで多くの方が夢中になって取り組まれていました。

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      意外と難しいタッセル釣りに老若男女問わず楽しんでいた

J:COMとのコラボレーション企画としては、的に向かってボールを投げる「ストライクナイン」や、お菓子のつかみ取りといったアクティビティも実施しました。

地域の方々に楽しんでいただくと同時に、企業連携による地域交流の広がりを実感できる一日となりました。


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         屋外ではストライクナインゲームで賑わっていた

〇当社独自のイベント実施

当社では「入居者ファースト」の理念のもと、管理物件にお住いの方に対して、「このマンションに住みつづけたい」と思っていただけるよう、春夏秋冬を通じてさまざまなサービスやイベント・キャンペーンを企画・実施しています。

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              いちご食べ放題のいちご狩り

中でも毎年恒例の「ベルヴィ夏祭り」では、びわ湖大花火大会を有料観覧席でお楽しみいただける特別体験を提供しています。

恒例キャンペーン「チャポン宝゛(だから)くじ」では、総額2,500万円相当をプレゼントする抽選会を行い、多くのご入居者様にご好評をいただいています。

そのほか、いちご狩りツアーやクリスマスケーキづくりなど、季節ごとのイベントを開催しており、今後もさまざまイベントを開催する予定です。

これらの人気イベントに、向島市営住宅9街区にお住まいの皆さまにもご参加いただけるようになりました。

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   花火全体が見えるオリジナル有料観覧席「長栄マリーナ席」を用意している

【市営住宅における今後の展開】

これまで取り組んできた向島市営住宅の再生事業の実績を踏まえ、京都市内をはじめ、京都以外の地域においても市営住宅の有効活用に向けた協議を進めていきたいと考えています。

加えて、近年では子育て世帯にとどまらず、留学生の住まいの確保も重要な課題となっており、特に一部エリアでは住居不足の声が上がっています。

こうした多様なニーズに対応すべく、市営住宅の空室を活用した新たな住まいの供給についても、積極的に提案・検討し、関係行政機関や地域の方々と緊密に連携し、地域課題の解決と、持続可能な住環境の実現に貢献してまいります。
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