自社製品「3Dオフィスデザイナー」を活用した、組織横断プロジェクトの舞台裏

「旧オフィスでは、社員全員が出社した際に座席が足りず、しかもその状況が3年続いていました」

株式会社メガソフト東京オフィスで働く社員たちが抱えていた悩みは深刻でした。フリーアドレス席はわずか2席。在宅勤務をしていた開発部メンバーが出社すると、座席の調整に四苦八苦する日々。
複数のオンライン商談が重なれば、休憩スペースや作業台を急きょ使うしかありません。そんな場所探しに疲弊していた社員は少なくありませんでした。

特にコロナ禍を経て、営業担当も客先訪問からオンライン商談へとスタイルを変えざるを得なくなりました。手狭なスペースで複数の会議が進行すると、隣席の会話が相手に聞こえてしまいます。商談の質の低下にもつながる深刻な問題となっていました。

「これ以上、問題を放置してはならない」

2025年1月、ついに役員会で移転が決定されました。

与えられた時間は、わずか半年強



営業・開発・総務から選抜されたメンバーで組織横断型の移転委員会が発足。経営陣からの依頼は明確でした。「8月の決算前の移転を実現してほしい」。通常であれば、オフィス移転の計画から実行まで1年はかかります。残された時間は半年強しかありませんでした。

移転委員会のリーダーを務めた法人営業部部長の守田は当時、厳しい状況をどのように感じていたのでしょうか。

「私は以前から役員会に移転の必要性を提案していたため、ようやく正式承認されたという嬉しさがある一方で、『8月末まで』という短期間での実現は正直厳しいと思っていました。
不動産会社、内装工事会社からも希望スケジュールを伝えると苦笑いされたり、表情が曇ったりでしたので、これは組織横断的なチームを組んで、ハイスピードでやるしかないと思ったんです」(守田)

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守田が頼れるメンバーを集めて作った移転委員会。それぞれのメンバーは今回の挑戦をどう受け止めたのでしょうか。

「2012年に大阪本社が移転する時、少しだけですがサポートした経験があったので、移転がどれだけ大変なのかは分かっていたつもりです。今回はより短期間だったので、本当にできるのかという不安も最初にありました」(開発部・川田)

3Dオフィスデザイナーで理想のオフィス移転をわずか半年で実現したメガソフトの挑戦


「移転委員会に加わってほしいと言われたときは、素直に嬉しかったです。私は、負荷がかかると燃えるタイプです(笑)。整理収納アドバイザーの資格も持っていたので、まずは不要な荷物を減らす"断捨離"の面で貢献できるのではと考えました」(総務部・澤田)

3Dオフィスデザイナーで理想のオフィス移転をわずか半年で実現したメガソフトの挑戦


「入社から2年で、こんな大きなプロジェクトに関われるとは思っていませんでした。責任の重さに緊張しましたが、普段は3Dオフィスデザイナーの利用をお客様に勧める仕事をしている私がユーザーの立場で操作する貴重な体験ができると思うとワクワクしました」(法人営業部・畠山)

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「新オフィスをより快適な空間にしよう」全社的な断捨離プロジェクトの始まり



運良く出会えた理想的な物件。しかし、想定よりも面積が小さかったため、効率的で機能的なレイアウトの実現のために断捨離を決意します。溜まってしまいがちな過去の資料や荷物と決別するには、移転というタイミングはまたとない絶好の機会です。

「新オフィスをより快適な空間にしよう」

合言葉のもと、移転委員会メンバーが中心となり「断捨離プロジェクト」が始まりました。

「当初、メンバー数名で1時間程度の予定だったんですが、始めてみるとみんな止まらなくなって、最終的に全員参加で3時間も続きました。『新オフィスをより快適な空間にしよう』と、長年蓄積されていた使われなくなった資料や備品を一気に整理するなど、みんなの意識が変わった瞬間でした」(澤田)

マニュアル、開発資料、展示会備品……。「ひょっとすると、いつか使うかも…」「もしかしたら必要かも」「いつか見返したいときにないと困る」という判断が積み重なってきましたが、そのほとんどは5年、10年経過しても、一度も使われていません。
つまりは、今後も使われない可能性が極めて高い、不要なものだったと気づくきっかけになりました。

新オフィスでは、個人ロッカーが導入されることにより「ロッカーに入る程度の荷物や資料しか持ち込めない」という明確なルールを作りました。収納スペースが限られているからこそ「必要なものだけを見極めて、適切に保管する」という社員個人の意識づけが生まれるきっかけにもなりました。

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個人の荷物を机上に放置せず個人ロッカーにしまうルールに

自社製品「3Dオフィスデザイナー」が生んだ奇跡のコミュニケーション



移転プロジェクトにおいて、メガソフトには大きなアドバンテージがありました。私たちが開発・販売するオフィスレイアウトソフト「3Dオフィスデザイナー」の存在です。

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検討を重ねてブラッシュアップしたレイアウト

「まずは設計や施工業者さんとの会話がしやすくなるというメリットがありました。プロの方たちは、平面図を見ただけで、頭の中で立体図を想像できますよね。でも、私たちのように専門家でない一般人にとっては、3Dのパースを見てようやくイメージできることがあります」(川田)

実際に設計・施工業者から受けた提案の多くは、明るい色調をベースに、植栽を配置した今風のオフィスデザインでした。しかし、メガソフトが目指した方向性は大きく異なっていました。

新オフィスのデザインコンセプトとして掲げたのは、ミッドセンチュリーモダン。昨今の流行を模倣したような空間にはしたくありませんでした。流行はやがて廃れますし、飽きが来るのも早いと考えたからです。旧オフィスで象徴的な空間として長く愛されていた黒いバーカウンターの重厚感やキリッとした感じを引き継ぎ、ダークトーンで統一した品格と重厚感を感じられる空間を目指しました。



3Dオフィスデザイナーで理想のオフィス移転をわずか半年で実現したメガソフトの挑戦


シンプルで機能性を重視したデザインが特徴のミッドセンチュリーモダン

しかし、当事者だけがイメージできても、移転に関わる他のスタッフや協力業者に伝わらなくては実現できません。ミッドセンチュリーモダンという言葉だけで、理想像を共有するのは難しいことです。

複数の候補からメガソフトが選んだパートナーは、富田商事(東京都墨田区)。設計・施工から、オフィス移転や内装工事までを一貫して手がける専門性の高さが強みです。選定の決め手となったのは、提案までのスピード感と、修正を依頼した後の対応のすばやさでした。

3Dオフィスデザイナーで理想のオフィス移転をわずか半年で実現したメガソフトの挑戦




棚や机の高さを再現したうえで実際の目線で

シミュレーションできるのは3Dならではの魅力

「富田商事様もまた3Dオフィスデザイナーを使用していたため、最短で1日、平均3日ほどで修正案を提示できる機動力がありました。通常の流れと比べると、3倍以上も早いスピードでディスカッションを重ねられることになります」(守田)

双方が同じツールを使うことで「ここをもう少し右に」「この色をダークトーンに」といった細かな調整も、リアルタイムで確認しながら進めることができました。3Dオフィスデザイナーは言わば "共通言語" でした。

3Dオフィスデザイナーで理想のオフィス移転をわずか半年で実現したメガソフトの挑戦
3Dオフィスデザイナーで理想のオフィス移転をわずか半年で実現したメガソフトの挑戦


左が実際のリフレッシュスペースで右はCG。

高精度に再現できていたことがわかる。

居抜き退去を実現し費用を削減



プロジェクトが進む中で、思わぬ幸運が舞い込んできました。当初は誰も予想できなかった旧オフィスからの居抜き退去の実現です。

通常、オフィス退去時には原状回復が必要と取り決められており、退去時には相当な費用がかかります。
居抜き退去という選択肢があることを知った移転委員会のメンバーは、当初ダメ元で旧オフィスの不動産管理会社に相談しました。

しかし、ビルでの前例がないことや契約手続きの変更が複雑となることから、難色を示されます。そこで諦めずに可能性を探りました。今回の新オフィスが居抜きで入居できたように、居抜き入居によって初期費用を抑えようと考えるテナントはいるはずです。

3Dオフィスデザイナーで理想のオフィス移転をわずか半年で実現したメガソフトの挑戦


東京メトロ永田町駅にほぼ直結する便利なロケーション

「旧オフィスの居抜き退去の交渉が正式にまとまったときは嬉しかったですね。管理会社からは『前例がない』とつれない返事でしたが、居抜きに詳しいコンサルタントを見つけて相談して、交渉を続けた結果、同じビルの既存テナントさんが手を挙げてくださったのです。自分たちで行動を起こすことで道が開けるんだなと実感しました」(守田)

結果的に名乗り出たのは、同じビルで他のフロアを借りている既存テナントでした。他の拠点を統合してフロアを拡張したいと考えていたのです。早期に入居希望企業が見つかり、内見もスムーズに終わり、とんとん拍子に話が進みました。管理会社は「そんな簡単には入居者が見つからない」と話していましたが、実は身近なところにニーズが潜んでいたわけです。

細部への徹底したこだわり



居抜き退去の成立により、当初組まれていた予算からかなりのコストを削減することできました。その残予算の一部は、かねてから検討されていたサウンドマスキングシステムの導入に充てられました。

3Dオフィスデザイナーで理想のオフィス移転をわずか半年で実現したメガソフトの挑戦


サウンドマスキングシステムの操作端末(YAMAHA)

以前から、「集中して作業したい」「電話の声が気になる」「周りの会話が電話相手に聞こえてしまう」という声が社員から上がっていました。



一方で「営業の商談内容や電話での会話は、開発部の社員にとっても貴重な情報源だ。音をかき消すのは逆効果」といった指摘もあり、それなりの費用もかかることから、幾度となく提案が却下されていました。

しかし、移転委員会メンバーがショールームで実際にYAMAHAのサウンドマスキングを体験したことで「電話の内容は聞こえても、気にならない」様子を実感。

働きやすさの追求は、家具や設備の細かな選定にも及びました。ここで中心的な役割を果たしたのも、総務部に所属する移転委員会メンバーの澤田でした。デザイナーとしての能力がフルに発揮されました。

3Dオフィスデザイナーで理想のオフィス移転をわずか半年で実現したメガソフトの挑戦


こだわりのデザイン家電

「小物からサイン一点に至るまで全てのアイテムにこだわり、休日を利用して各メーカーのショールームを巡り、実際に触って確かめながら選定を進めました。落ち着きがあって重厚感のある空間とは言っても、暗い印象を与えるのはマイナスですからね。カーペットなど既存設備や備品との調和も考えました。考えることは膨大でしたが、正直に言って、楽しかったですね」(澤田)

3Dオフィスデザイナーで理想のオフィス移転をわずか半年で実現したメガソフトの挑戦


リフレッシュスペースにはこだわりのラウンジチェア

2025年6月2日、新オフィス稼働

移転直前になって「社員個人で管理していた資料など、多めに持っていかせてほしい」という声が一部の社員から上がりました。

しかし移転委員会は「個人が管理する荷物は、1名につき段ボール1箱まで」というルールを厳格に守りました。例外を認めると、収拾がつかなくなることを懸念していたためです。移転直後は快適なオフィスでも、やがて散らかってしまっては意味がありません。


新オフィスの快適性を守るための毅然とした対応は、他の社員からも支持されるようになり、移転準備が進むとともに社員の間に「不要なものは手放す文化」が定着してきました。

多くの引越し業者は段ボールに、新たな配置場所を示す通し番号のみを記載します。これに対して、メガソフトでは中身を詳細に記載することを徹底しました。「展示会備品」「日常業務用」「文房具」など、開梱時の判断をしやすくする情報を記載することで、新オフィスでの業務再開がかなりスムーズになりました。

そして2025年6月2日、ついに新オフィスが稼働を開始しました。

3Dオフィスデザイナーで理想のオフィス移転をわずか半年で実現したメガソフトの挑戦


個室ブースを設置。リモート会議や商談への対応がしやすくなりました。

「任せる」ことの大切さ

移転委員会が主導した今回のプロジェクトを井町社長はどう評価しているのでしょうか。

「移転委員会を組織し、彼らに主導権を委ねたことが今までとの大きな違いです。過去の移転では、バーカウンターの設置など私の意見やわがままも反映させてきました。でも今回は全く違うアプローチで、このメンバーが本当に思い入れを持って、『ここで働きたい』と思えるオフィスにしてもらうことが重要でした。だから基本方針だけ示して、あとは彼らの主体性に任せることにしたんです」(井町)

3Dオフィスデザイナーで理想のオフィス移転をわずか半年で実現したメガソフトの挑戦


「『任せる』ことの大切さを実感しますね。任せるというのは無責任になることではなく、最低限の方向性は示しつつ、あとはメンバーの専門性と判断力を信頼するという意味です。その結果、想定よりもはるかに質の高いアウトプットが生まれました。特に今回は他部署のメンバーが一つの目標に向かって連携することで、お互いの新たな一面を発見し合えたのも大きな収穫だったのではないでしょうか」(井町)

3Dオフィスデザイナーで理想のオフィス移転をわずか半年で実現したメガソフトの挑戦


個人の荷物はロッカーや机の下にしまったすっきりと。

パンフレットなどは倉庫にしまい、秩序を保っています。

「立地もよいですし、駅からのアクセスもいいロケーションだと感じています。執務スペースが1か所にまとまっているので話がしやすいし、1人で集中したい時も、個室など充実していて、柔軟な働き方ができるように感じています。天井が高くなり、これまでのような圧迫感がなくなったとも思いました」(井町)

働き方と意識の変化

新しいオフィスでの働き方に変化は確実に現れていました。

「集中力が上がって、仕事がしやすくなりました。デスクパーティションで適度に区切られていることで、コミュニケーションは取りやすく、でも集中もしやすいという両立ができています。座席の配置も何パターンも検討して決めた動線なので、移動しやすいのではないでしょうか」(畠山)

「個人ロッカーの導入で、PCや資料を机上に置きっぱなしにせず、自然と整理整頓する習慣が生まれました。デスク周りがすっきり保たれ、より効率的な業務環境が実現しています。見た目も整い、気持ちよく働けるようになりました」(澤田)

サウンドマスキングシステムもフィットしているようです。

「実は最初、懐疑的な意見もあったのですが、実際に使ってみると、静まり返ったオフィスよりもよほど働きやすいですね。カフェの中にいるようで、周りに気を遣わずにパッと話せるので、コミュニケーションが活発になりました」(川田)

3Dオフィスデザイナーで理想のオフィス移転をわずか半年で実現したメガソフトの挑戦


現在、就業時間中のオフィスでは、かすかな波の音や鳥のさえずりがいつも聞こえてきます。シーンとした静寂空間と比べると、周囲と気兼ねなく話しやすくなったといった声もあがっており、より一層、スタッフが業務に集中できるようになりました。

成功の要因を振り返って

結果的に短期間でプロジェクトはうまくいきました。成功のカギは何だったのでしょうか。

「私たちそれぞれが専門分野や強みを活かして力を発揮できたからだと思います。さらに当初の役割分担を越え、みんなが『もっとやりたい』『こうすればもっと良くなる』という自発性を発揮したことは大きかったのではないでしょうか」(守田)

「プロジェクト自体が楽しかったので、まったく苦労だとは感じませんでした。やはり自らやりがいが感じられる仕事ができるのはいいですよね。このような環境で働けることに心から感謝しています」(澤田)

3Dオフィスデザイナーで理想のオフィス移転をわずか半年で実現したメガソフトの挑戦


VR体験スペース

移転プロジェクトのメンバーにとって、お客様の立場を体験し、3Dオフィスデザイナーの真価を実感できる機会でもありました。

「提案を受ける側になってみて、お客様の気持ちが少し分かったかなと思います。普段から自分なりに相手の立場を考えて営業しているつもりですが、お客様の立場になって気づけたことが多かったです。こうした学びは、私の営業スキルの向上にもつながると思います」(畠山)

「みんなが使う備品や設備をどう配置するのがいいのか、自分のこと以外を考える時間が多かったように思います。すべての希望は叶えられない中で大切なのは最大公約数を考えることでした。その作業を、3Dオフィスデザイナーで視覚化しながら社員に見せたことが説得力にもつながりました」(川田)

移転を検討している企業の皆さまへ

移転委員会のメンバーに移転を検討する企業の皆さまへのメッセージをもらいました。

「妥協しないことが大切ですね。そういった細部へのこだわりは、のちに結果となって現れることを感じました。もちろん、時間や予算といった制約はありますが、与えられた条件の中でどうベストを尽くすかをチームで考え抜くことが、成功の秘訣かと思います」(澤田)

「ツールをうまく使うことです。たとえば3Dオフィスデザイナーがあったことで、業者さんと、または社内でのイメージのすり合わせがしやすくなりました。図面さえもプロにすべてを任せるのではなく、自分たちから提案できるようになればよりよいレイアウトが追求できますからね」(川田)

「社内外で折衝を行う際、すべての情報をただ漏れなく共有するのではなく、自分の領域で判断できることは取捨選択を行い、全員の判断事案を削減することで、最終的に最短で理想のオフィス空間づくりを実現できたと思います」(畠山)

3Dオフィスデザイナーで理想のオフィス移転をわずか半年で実現したメガソフトの挑戦


「自分たち自身が主体性を発揮することが大切です。できあがったオフィスを使うのは、その企業のスタッフです。だからこだわりを一番強くもたなければ、理想の空間は実現しません。何を理想とするかは、組織によって優先順位が異なるのは当然のことです。だから、とことん話し合って理想系のイメージをもってほしいと思います」(守田)

短期間で自分たちが「理想」と胸を張れるオフィス移転を実現したメガソフトの移転プロジェクト。効率的な業務環境が実現しただけではなく、移転に関わったメンバーがそれぞれ成長することができたこともうれしい結果です。各メンバーの専門性と主体性、そして自社製品「3Dオフィスデザイナー」という存在があったからこそ、限られた条件の中で妥協のない結果を生み出せました。
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