1986年の誕生以来、世界100カ国以上で展開しているインスタントラーメンの「辛ラーメン」。その製造元である韓国では昨年9月に、新製品となる「辛ラーメン トゥーンバ」が登場しました。
辛味のあるスープが象徴的な辛ラーメンのイメージとはやや異なり、クリーミーで少しマイルドな旨辛さは多様な消費者層の支持を集め、発売からわずか4ヶ月間で2,500万食の販売を記録しています。

韓国での反響を受け、2025年2月からは、一部チャネルに限定して袋麺の販売を日本でも開始。同年4月には、レンジ調理も可能なカップ麺タイプをセブン-イレブンで数量限定の先行発売をしました。

なぜ「辛ラーメン トゥーンバ」は多くの反響を呼んだのか。今回は製品の開発ストーリーやプロモーションについて、辛ラーメンを日本で展開する株式会社農心ジャパン(以下、農心ジャパン)成長戦略部門 マーケティングチーム長の三浦善隆に話を聞きました。

ファンの声を元に誕生し、広がった「辛ラーメン トゥーンバ」。...の画像はこちら >>


画像左:三浦善隆(株式会社農心ジャパン 成長戦略部門 マーケティングチーム長)

辛ラーメンと相性の良かった「モディシューマー」の存在。SNSでの盛り上がりを受け、今回の製品が誕生

2016年ごろから韓国で高い人気を誇る「Toowoomba Pasta(トゥーンバ)」は、エビとマッシュルームを使ったピリ辛のクリームパスタです。その料理が韓国で一大ブームを巻き起こし、辛ラーメンをトゥーンバ風にアレンジする人が続出。そのような社会的なニーズを受け、正式に製品化する形で「辛ラーメン トゥーンバ」は誕生しました。辛ラーメンの特徴である”うまからっ!” と「Toowoomba Pasta」特有の濃厚なクリームソースが融合した味わいで、コシのあるもちもちとした食感の麺とも相性抜群です。

ファンの声を元に誕生し、広がった「辛ラーメン トゥーンバ」。歴代製品の中で最も話題を呼んだ裏側にある、お客様との向き合い方。
ファンの声を元に誕生し、広がった「辛ラーメン トゥーンバ」。歴代製品の中で最も話題を呼んだ裏側にある、お客様との向き合い方。


そのような「辛ラーメン トゥーンバ」誕生の背景には、韓国における「モディシューマー」の存在がありました。モディシューマーとは、「MODIFY(修正する)」と「CONSUMER(消費者)」を合わせた言葉で、“自分好みに製品やサービスをたのしむ消費者“のことで、なかにはトレンドをつくるほどの影響力を持つ人もいることから、近年多くの韓国メーカーから注目を集めています。
もともと辛ラーメンはアレンジがしやすく、創作レシピを親しむ文化が根付いていました。人気のアレンジレシピの中には、牛乳やチーズを使った「ロゼ辛ラーメン」など、クリームパスタ風のメニューも見られます。

このような工夫を楽しむ土壌があったからこそ、「店へ行かずとも、トゥーンバを家庭で手軽に味わってみたい」といった思いを持ったモディシューマーの間に、辛ラーメンで「Toowoomba Pasta」を再現するアレンジレシピが大流行しました。そうしたSNSでの盛り上がりや消費者のニーズを受け、今回の製品化に至っています。

ファンの声を元に誕生し、広がった「辛ラーメン トゥーンバ」。歴代製品の中で最も話題を呼んだ裏側にある、お客様との向き合い方。


さらに韓国での盛り上がりを見た国内のKカルチャーファンや、辛ラーメンファンからは、「早く日本でも発売してほしい」という声がSNS上で多く見られるようになりました。そうした期待に応える形で韓国の発売からおよそ半年後、2025年2月から日本でも販売を開始します。

昨年韓国で発売したカップ麺は24日間で300万食を販売し、ブームに!「辛ラーメン トゥーンバ 袋麺」が2月21日、いよいよ日本でも販売を開始PR TIMES×

発売後の反響は非常に大きなものでした。特にカップ麺を発売した4月以降は、HPの中でも製品ページにおけるアクセス数が従来不動の1位だった「辛ラーメン 袋麺」の2倍を記録(2025年4-6月実績)。当初の想定を超える多くの流入がみられました。また、10代~20代女性向けトレンドメディア『Trepo(トレポ)』の実施した「2025年上半期Z世代トレンドランキング」のフード部門では第二位にランクインするなど着実に支持を広げています。

トレンドお届けメディアTrepo(トレポ)が選ぶ「2025年上半期Z世代トレンドランキング」PR TIMES×

「ファンの声をキャッチする」SNSの運用姿勢と、新たなファンづくりに向けた情報発信が確実な盛り上がりに。

今までにない反響が生まれた背景の一つにはSNSを活用したプロモーションと、SNSを運用する上で継続して大切にしてきた考えがありました。
「当社にとってSNSは、単なる情報発信の場ではなく、ファンの方々の声を直接キャッチアップする場所になっています」と三浦は話します。

「ありがたいことに、当社の製品はSNSで非常に多く取り上げていただけています。『韓国』や『辛さ』といったエンタメ的な要素も、話題にしていただきやすいのかもしれません。

ファンの方の投稿は熱量が高く、知らなかった情報や素晴らしいアイデアが溢れ日々元気をもらっています。そうした熱いファンにもお返し出来るような『辛いって、たのしい!』を届けたいと考えています」

ファンの声を元に誕生し、広がった「辛ラーメン トゥーンバ」。歴代製品の中で最も話題を呼んだ裏側にある、お客様との向き合い方。


辛ラーメンとして、どのようにSNSを活用してきたのか話す三浦

この継続的なファンとの対話姿勢があったからこそ、韓国での発売当初から「辛ラーメン トゥーンバ」に反応していた、韓国好きの方々の動きを素早く察知することに繋がりました。「韓国旅行で食べた」「お土産で買ってきた」といった投稿が増えていることを確認し、日本のファンの間でも高い関心と期待が寄せられていることを発売前から実感します。

そこで日本での発売前から公式SNSで「辛ラーメンで作るトゥーンバ風アレンジ」を積極的に発信し、日本のファンから期待感をより高める取り組みを行いました。このアプローチにより、新製品として唐突に日本市場に投入するのではなく、ファンからの注目が高まった最適なタイミングで発売することができたのです。

×また実際に販売を開始してからは、「簡単かつ美味しく楽しめること」「従来の辛ラーメンの製品よりも幅広い層に届けること」という2点を意識し情報を発信してきました。手軽さと美味しさの発信については、カップ麺なのに電子レンジ調理で食べることをお勧めしています。この調理法では湯切りがいらないため、より手軽に楽しめます。さらに熱湯を入れてから電子レンジ調理をすることにより容器の中で再沸騰し、まるで鍋で煮込んだようなもちもちの食感になるという特性もあります。

湯切りが不要という簡便性に加え、この「麺がより美味しくなる」という付加価値を積極的に発信してきました。

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上記のようなイラストで、電子レンジ調理の方法をパッケージやプレスリリースにも記載

幅広い層へのリーチという観点では、インフルエンサーの起用軸を拡大し、より多くの方に製品の魅力を伝える戦略を展開します。「辛ラーメン」の一番の特徴である「辛さ」に抵抗感を抱く方がいるため、これまでは「辛いものが好きな方へしっかり届ける」という考えのもと、辛い物好きな方やコアなファンに向けた施策や発信を行ってきました。

しかし、「辛ラーメン トゥーンバ」は辛いものが苦手な方や、これまで辛ラーメンに馴染みのなかった方にも楽しんでいただける製品だからこそ、より広く、多くの方に魅力を届けることを重視しています。そこで、これまで中心としてきた「辛いもの好き」の方々に加え、「韓国好き」「ラーメン好き」といった、より幅広いジャンルのインフルエンサーの方々に協力をいただきました。

「これまでとは少し異なる辛ラーメン」を知ってもらうため、直接的な接点を持てるオフラインの施策にも注力

SNSでのコミュニケーションに力を入れる一方、リアルな接点づくりも大切にしてきました。「辛ラーメン トゥーンバ」は、従来の製品よりも多くの方に受け入れられる味だと確信したからこそ、直接その味を体験してもらう機会が必要だとマーケティングチーム内では感じていました。そこで話題性と体験価値を重視したオフライン施策を大きく2つ展開しました。

一つ目が、発売直後の2月からスタートしたトマトラーメン専門店「太陽のトマト麺」とのコラボです。「辛ラーメン トゥーンバ」をイメージしたコラボメニューは、辛ラーメンを一袋丸ごと使用しており、独自の辛さにクリームと爽やかなトマトの酸味のアクセントが効いた一皿に仕上げています。

期間限定POPUP「辛ラーメン トゥーンバ meets 太陽のトマト麺」! 3月1日(土)から青山で開催PR TIMES×

さらに店内では、「辛ラーメン トゥーンバ」の写真やグラフィックを使った空間演出でSNS映えする店舗ジャックを行い、店頭で注文した方には、先着で「辛ラーメンシリーズ」の製品を配布しました。三浦は当時の施策について、このように振り返ります。

「韓国好きの方以外には『辛ラーメン トゥーンバ』が広く知られていないタイミングでの施策でした。
ラーメン好き、新しいものが好きな方々に対して、『辛ラーメンからクリームパスタのような新しいラーメンが出る』という情報を届け、話題喚起をすることを狙いました」

ファンの声を元に誕生し、広がった「辛ラーメン トゥーンバ」。歴代製品の中で最も話題を呼んだ裏側にある、お客様との向き合い方。


他のイベントでも、実際に食べてもらうことを重視してきた

2つ目が、カップ麺タイプの発売後に実施した世界最大級のKカルチャーフェスティバル「KCON JAPAN 2025」への出展です。同イベントはK-POPを中心とした韓国の文化を体験できるコンベンションとコンサートが融合したイベントで、若年層が中心に来場します。来場者の多くはKカルチャーへの関心が強く、辛ラーメンの認知も高い一方で、「辛いものが苦手で、辛ラーメンはあまり食べない」という方も少なくありません。そこで出展ブースでは「辛ラーメン トゥーンバ」の紹介とともに、無料で試食を提供しました。

世界最大級のK-POP Fan & Artist Festival「KCON JAPAN 2025」に昨年の倍のスケールで辛ラーメンがブースを出展!大ヒット製品「辛ラーメン トゥーンバ」を試食できる!PR TIMES×

結果、3日間の開催期間を通して、ブースは連日長蛇の列となり、試食した来場者からは「これなら食べられる」「購入してみたい」といったポジティブな声が多数寄せられました。イベント後のアンケートでは、約9割が「今後購入したい」と回答。これまで辛ラーメンに苦手意識や、心理的な距離があった層にも、その魅力を直接届ける貴重な機会となりました。

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KCON JAPAN 2025 出展時の様子

限定的なチャネルから全国販売へ。様々な施策を通じて、韓国のラーメン文化を日本に伝える中心的な存在へ

9月からは、これまで限定されていた販売チャネルが全国へと拡大する予定です。スーパーやコンビニエンスストアで袋麺の一般販売がスタートします。これにより、これまで以上に多くの方々が「辛ラーメン トゥーンバ」を手に取りやすい状況になります。

三浦は今後の展望について、「辛ラーメンは韓国での発売から来年で40年を迎えますが日本ではまだまだ新しいブランドとして捉えられていて、知ってはいるけれど食べたことが無い方も多くいます。


私たちはまだまだ挑戦者として、『辛いって、たのしい!』を伝えながら多くの人に体験していただけるように活動していきます。」と想いを語ります。

SNSでのユーザー目線に立った発信とリアルイベントでの体験機会。この2つのアプローチが効果的に組み合わさったことで、これまでアプローチが難しかった方々にも届く製品として、新しい広がりを見せています。ファンの反響を起点に誕生し、多様な層との接点を生み出してきた「辛ラーメン トゥーンバ」。その歩みは、まだ始まったばかりです。今後の展開や挑戦にもご注目ください。

ファンの声を元に誕生し、広がった「辛ラーメン トゥーンバ」。歴代製品の中で最も話題を呼んだ裏側にある、お客様との向き合い方。


2025年6月にオープンした『辛ラーメン粉食POPUPストア』にて

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