時代を超えて守り続けるおもてなしの心

 正面玄関をくぐり静謐なロビーを抜けると、2階まで吹き抜けとなったメインラウンジが広がる。足元には澄んだ水をたたえた回廊が巡り、その先には清冽なしぶきをあげる滝がやわらかな光を集める。館内はスタンウェイの自動ピアノが奏でる心地よい音色に包まれ、訪れるゲストをいっとき非日常へと連れ去っていく──。


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※写真: 株式会社ロイヤルホテル 代表取締役社長 植田 文一

 長い歴史のなかで、時代の変化とともに進化を重ねてきたリーガロイヤルホテル。その歩みのなかで、揺るがずに守られてきたのは「あたたかいおもてなしの心」だ。

 代表取締役社長の植田文一氏は、こう語る。

 「大阪で産声を上げ、多くの方に愛されてきたリーガロイヤルホテルを旗艦とするロイヤルホテルは、未来に向けて自らの在り方を見つめ直し、2024年に新たなパーパスを策定しました。それは、『人を、地域を、日本を、世界を、あたたかい心で満たしていこう。』というメッセージです。

 かねてから大切にしてきた『温かいおもてなし』『美味しい料理』『心地よい空間』という3つの要素を念頭に、先人から受け継いだ精神やサービス技術、マニュアルを超えたあたたかい心配りこそ私たちの価値だと再定義し、これを未来へとつなぎ、あたたかい心に満ちた世界を実現したいという願いを込めました」

 コロナ禍を経て、消費者の価値観やニーズは大きく変化した。折しも、ロイヤルホテルは2023年3月にリーガロイヤルホテルの土地と建物を売却し、ホテルオペレーターとして新たな一歩を踏み出した。転換期を迎えるにあたり、あらためてロイヤルホテルの存在価値を明確にしたいと考えたのだという。

 「パーパスの策定にあたっては全従業員へのアンケートを実施しました。幅広い社員との対話を積み重ねるなかで、『人が生み出すあたたかいおもてなしの心』こそ、私たちの原点でありアイデンティティだという結論に至ったのです」

90年の歴史が培った細やかな心配り

 その原点をたどれば、時はおよそ90年前に遡る。1935年、まだ大阪に近代的なホテルがほとんど存在しなかった時代に、リーガロイヤルホテルの前身である「新大阪ホテル」が中之島に誕生した。国内外から多くの賓客を迎え、細やかな心配りと真心を尽くしたおもてなしが評判を呼び、やがて「関西の迎賓館」と称されるようになっていく。
当時のスタッフが抱いていた「おもてなしの心に終着点はない」という想いは、今も受け継がれるロイヤルホテルのDNAだ。

 「今回の大阪・関西万博をはじめ、これまで数多くの世界的なイベントや国際会議の舞台として、世界各国からVIPをお迎えしてきました。こうした経験の積み重ねが、私たちのきめ細やかな対応力を育んできたと言えるでしょう。一方で、週末の小旅行やご家族でのレストラン利用など、より身近なシーンでホテルを訪れてくださるお客様が多いことも特徴です。幅広いお客様一人ひとりのニーズに寄り添い、心を込めてお応えできる柔軟さも、私たちの大切な資産だと考えています」

 確かに、賓客を迎えるラグジュアリーホテルなどでは、小さな子ども連れのファミリーには敷居が高く感じられることもあるかもしれない。でも、ロイヤルホテルには、そうした壁を感じさせない雰囲気がある。かつてあるゲストが「一流でありながら、アットホーム」と評したことがあるというが、まさにロイヤルホテルの魅力を端的に表している。

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※写真: 新大阪ホテル

社員の成長がホテル全体のサービス力に

 ロイヤルホテルのおもてなしを支える仕組みのひとつに、人材育成の制度がある。ひとつは「接遇インストラクター」という社内資格だ。

 「接遇の五原則と呼ばれる『挨拶』『身だしなみ』『表情』『言葉遣い』『態度』を徹底的に学ぶ接遇研修を実施しています。一定の経験を積んだ社員がこの研修を受講し、試験に合格すると『接遇インストラクター』の資格が与えられます。インストラクターは各現場で講師として接遇の指導を行い、新たなインストラクターを担うことになります」。

 おもてなしの精神を体現できる社員を着実に増やすことで、ホテル全体のサービス力を底上げしているのだという。


 おもてなしを支えるもうひとつの制度は、1976年から続くフランスへの海外調理研修だ。将来、ロイヤルホテルの食を担う若手調理スタッフの中から、毎年2名を選抜し、半年間ずつフランスの二つ星ないしは三つ星レストランへ派遣している。派遣されるのは、語学力や調理技術だけでなく、リーダーシップや人間性、将来シェフとしてホテルの食を支える力を兼ね備えた社員だ。

 「フランスでの研修を経た社員たちは、帰国後も高いモチベーションで業務に臨み、それぞれのレストランで質の高いサービスを提供しています。時代とともに料理や嗜好は変化します。だからこそ、昔ながらの技術を守りつつ、新しい技法や知見を取り入れる。こうした取り組みが、ロイヤルホテルらしい食のおもてなしを生み出す源泉になっているのです」

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※写真左: 「接遇インストラクター」認証バッジ、写真右: 調理風景

歴史と革新が交わる上質な空間

 おもてなしは、人によるサービスだけにとどまらない。2025年4月、リーガロイヤルホテルは大規模なリニューアルを果たした。長い歴史を尊重しながら新しい風を吹き込む改装が施されたが、その隅々にもおもてなしの心が息づいている。冒頭で紹介したメインラウンジは、その象徴とも言える存在だろう。

 「当ホテルは、近代数寄屋建築の巨匠と呼ばれる吉田五十八氏によって設計されました。リニューアルにあたっては、氏が追求した“日本の伝統美”を継承しながら、和洋折衷という文化融合の精神を礎とし、地域の生活と文化を育んできた中之島の水や川への敬意をこめて、『伝統美と水の融合』をテーマに据えました」

 ロビーの床一面を彩るのは、紅葉をモチーフとした大緞通「万葉の錦」。華やかさのなかに凛とした品格をたたえる絨毯は、ロイヤルホテルの歴史への敬意を込めてリニューアル後も受け継がれた。
柱には、かつての鳥模様金蒔絵を2面残し、もう2面にはグレーンペンミラーを新たに設置。鏡面が周囲の景色やレセプションを映し込み、空間の連続性と広がりを生み出す。絢爛のなかにもやすらぎが広がる設えには、おもてなしの精神が宿っている。

 「このほか客室やレストランなどもリニューアルによって新たに生まれ変わりましたが、大切にしているのは、変えるべきところは変え、変えないところはレガシーとして未来へつなぐという姿勢。どんなに時代が移り変わっても、人に寄り添うあたたかさを忘れずに、お客様一人ひとりの心に残る体験をお届けしたい。その思いが、リニューアルの根底に流れています」

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※写真左: メインラウンジ、写真右: ロビー

お客様の期待を超えるホテルグループへ

 2025年に創業90周年を迎えたロイヤルホテルは、次なる100周年に向けて歩みを進めている。目指すのは、「安心のサービスと感動のおもてなしで、世界中のお客様の期待を超える、日本最高峰のホテルグループ」。この理想に向け、4つのフェーズに分けて段階的に未来像を形にしていく。

 「2035年の創業100周年を見据え、現在は第1フェーズとして、新規ホテルの展開に取り組んでいます。拠点が増えることは、若い世代が挑戦し、成長できる舞台が広がるということ。新しいホテルの誕生は、未来の人材が育つ土壌をつくることでもあると考えています」

 もちろん、時代が変わっても、「温かいおもてなし」「美味しい料理」「心地よい空間」という3つの理念は、言葉を変えながらもロイヤルホテルの根幹として受け継がれていく。植田氏はそう強調する。


 あらためて、おもてなしとは何か、植田氏に尋ねると、「相手の立場に立って物事を考えること」という答えが返ってきた。お客様が何を求め、どんな時間を過ごしたいのかを感じ取ることが、最良のサービスにつながる。

 実は植田氏は、かつてソムリエとして活躍していた時代がある。お客様にブラインドテイスティングを楽しんでいただこうと、同じワインを温度だけ変えて提供したところ、全員が別のワインだと答え、同じワインだと種明かしをすると驚かれたそうだ。遊び心を大切にしながらお客様との時間を重ねてきたと植田氏は微笑む。

「自分自身が楽しめなければ、お客様を楽しませることはできません。もちろん、そのためには学びを絶やさず、自身を磨き続けることが大切です」

 こうして培われたあたたかいおもてなしの心は、訪れる人の記憶に刻まれていく──それが、ロイヤルホテルの未来を照らす大きな力となるのだろう。

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※写真: 株式会社ロイヤルホテル 代表取締役社長 植田 文一
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