昨今、様々な商品・サービスを取り扱う自動販売機が全国各地で展開される中、株式会社JR東日本クロスステーション ウォータービジネスカンパニーでは、「エキナカ」という強みを活かした自動販売機の企画に取り組んでいます。期間とテーマを決め、飲料だけにとどまらず食品や雑貨など様々なアイテムを、季節やイベントに合わせて販売するコンセプト型自販機「イベントアキュア」もその一つです。
この「イベントアキュア」が派生する形で2024年に誕生したのが、地方の魅力とつながる自販機「ふるさとアキュア」です。

首都圏の“駅”を起点に、地域と人をつなぐ「回遊×地方活性」を実現する新たなモデルとなるこの自動販売機は、どのような戦略のもと生まれ、どんな可能性を見据えているのか——。これまでの歩みと、今後の展開について、ふるさとアキュアを担当する齋藤さん、南里さん、小泉さんに話を伺いました。

地方産品×首都圏の“エキナカ自販機”がもたらす新たな価値—— 「売る」を超えた挑戦

第一弾:福島県天栄村 “世界一のお米”を大宮駅から発信

“エキナカ自販機”が地域の魅力発信に!?「ふるさとアキュア」仕掛け人が語る地域とつながるホットスポット戦略
第一弾として実施したのが、福島県天栄村との取り組みです。天栄米という“世界一のお米”をPRするべく取り組んでいた天栄村ですが、大宮駅にて開催された産直市に天栄村が出展していたタイミングに合わせ、同駅にふるさとアキュアを設置しました。

その際はモニター付き自販機を活用し、生産背景や地域の風景を映像で伝えたことで、足を止めて見入る人も多く、自治体からは「エキナカで地域の魅力を発信できる貴重な機会だった」との声をいただきました。

第二弾:群馬県みなかみ町の自動販売機——テストマーケティングの場にも

“エキナカ自販機”が地域の魅力発信に!?「ふるさとアキュア」仕掛け人が語る地域とつながるホットスポット戦略
第二弾は群馬県みなかみ町。アキュアとしては、From AQUA 谷川連峰の天然水の採水地であり、自社の飲料工場があるこの地として、親交の深い町です。町の特産品として、“はちみつ”や“アロマスプレー”など、普段の自動販売機ではあまり見かけない商品をラインナップしました。特に、“はちみつ”は想定以上の売れ行きを見せ、生産者からも「町外で販売した実績がほとんどなかったので、これほど手に取ってもらえて感慨深い」と喜びの声をいただきました。

また、フレグランススプレーの会社では、ふるさとアキュア限定の新作を開発・販売し、売れ行きがよければ今後店舗でも販売していく予定で、テストマーケティングの場としても活用いただいています。

鉄道で通り過ぎてきた町・村の魅力を発信したい——

“エキナカ自販機”が地域の魅力発信に!?「ふるさとアキュア」仕掛け人が語る地域とつながるホットスポット戦略


(左:南里さん、右:齋藤さん)

「鉄道を利用した時に、“名前は知っていて、降りたことはないけど、いつも通過する町”や“特産品はあるけれど、単体でアンテナショップを出展するにはハードルが高いという自治体”。また、“首都圏ではなかなかお目にかかれない、知る人ぞ知る特産品のある地域”など。こういった地域の魅力を、ふるさとアキュアを通じて発信していきたいんです」と齋藤さんは話します。

エキナカという多くの人の目に触れる場所で、地域を知るきっかけをつくり、最終的には“実際にその土地を訪れてもらう”ことを、ゴールとして見据えています。


自治体側にとっては、アンテナショップよりも、比較的初期投資を抑えながら首都圏でPR・販売ができる点が大きなメリット。認知拡大から現地訪問まで、段階的な地域活性化を実現する新しいモデルとなっています。

地方産品×首都圏の「エキナカ自販機」がヒットする「ホットスポット戦略」

■商品選定~販促までを伴走——細部にこだわる仕掛けづくり

“エキナカ自販機”が地域の魅力発信に!?「ふるさとアキュア」仕掛け人が語る地域とつながるホットスポット戦略


(商品ディスプレイを整理している小泉さん)

「みなかみ町のふるさとアキュアでは、機体の構造上モニターがついていない自動販売機でしたが、上部の棚にモニターを設置し、自治体のPR映像を流しました。また、フレグランススプレーやアロマスプレーを販売していたため、香りのテスターも用意するなど、お客さまにどんな商品かわかりやすいように仕掛けを工夫しています。」と小泉さん。

“エキナカ自販機”が地域の魅力発信に!?「ふるさとアキュア」仕掛け人が語る地域とつながるホットスポット戦略


(自動販売機では珍しいテスターを用意)

既存の飲料自販機がある程度型が決まっていて効率的なビジネスになっているのに対して、ふるさとアキュアはまだプロトタイプを作っている途中のようなもの。それぞれの自治体の商品に合わせ、機体仕様から提案し、その後も販促から最終的な商品補充まで、一つひとつを考えながら、自分たちの手で作り上げています。

自動販売機内にPR映像を流すことで、通りかかった人が足を止めて見てもらえるきっかけに。商品のストーリーを通じて、地域の背景まで伝えられることが、単なる物販にとどまらない価値を生んでいると考えています。

■地産品は首都圏の「駅」でどんな人に売れるのか? —— データから見える購買傾向

購入者の傾向を見ると、昼前から夜にかけて幅広い時間帯で売れており、特に平日よりも休日の方が販売数は伸びる傾向にあります。特にみなかみ町のふるさとアキュアは東京駅に設置(※取材当時)しており、通勤客だけでなく、観光客や手土産需要を意識した商品設計によって、売り上げも好調です。

“エキナカ自販機”が地域の魅力発信に!?「ふるさとアキュア」仕掛け人が語る地域とつながるホットスポット戦略


どの駅や場所に自動販売機を設置するかは、自治体と相談しながら決定します。今回設置していた東京駅の丸の内側は、オフィスワーカーの目にも留まりやすく、地方へ向かう人の動線上にもなる場所。「今後もJR東日本を使って実際にその地域へ行ってほしいという思いもあることから、東京駅は引き続き重要な拠点になると思います」と南里さん。

■自動販売機販売ならではのハードルと、その打開策

最大の課題は商品管理と物流です。特に冷凍商品は補充オペレーションや配送コストの面でハードルが高く、現状ではなかなか難しい状況です。
また、瓶製品などは割れないよう自動販売機の形状に合わせる必要があり、パッケージ設計段階から工夫が欠かせません。

自治体から販売したい商品のラインナップを出してもらった上で、自動販売機での搬出に適した商品(重さ、形状、温度帯等)であるかの見極めや、駅のターゲットを踏まえて選定しています。

一方、価格設計も重要で、“商品の価値”と“自動販売機で買える範囲の価格”のバランスに、細心の注意を払っています。購入前に実物を手に取ることができないため、映像やPOPを活用し、品質や背景をしっかり伝えることで、「このクオリティなら納得できる」という購買につなげている点は、ふるさとアキュアならではの特長とも言えます。

地域×エキナカ×自動販売機がつくる新マーケット——次なる挑戦

“エキナカ自販機”が地域の魅力発信に!?「ふるさとアキュア」仕掛け人が語る地域とつながるホットスポット戦略
自動販売機業界全体では原価高騰や価格改定が続く中、ふるさとアキュアは“価格以上の価値を伝えられる自動販売機”として、新たな可能性を模索しています。単なるモノの販売ではなく、ストーリーや体験を届けることで、ふるさとアキュアを「地域を知ることができる立ち寄りたくなる目的地」にしていきたいと考えています。

今後は、1つのテーマで複数の自治体を横断した企画や、限定商品の展開なども視野に入れています。立ち上げ期だからこその大変さもありますが、逆に言えば無限の可能性を追えるチャンスとも言えるのが、ふるさとアキュアです。

最後に、「“ふるさと”をどう定義していくかがキーとなる」と齋藤さんは話します。県単位ではなく、市町村単位の魅力を掘り起こす——アンテナショップでも物産展でもない第三の選択肢として、ふるさとアキュアはエキナカから地域と都市をつなぎ続けていきます。
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