ダウンロード数歴代1位を記録した、リサーチ会社のホワイトペーパーとは
―設問文・選択肢の見せ方で回答データは変わるのか?検証レポート(ホワイトペーパー):ダウンロードはこちらから
―はじめに
マーケティングリサーチ業を行う株式会社アスマーク(以下アスマーク)は、創業から長きに渡り市場調査を行い、今年設立20期を迎えています。そんな当社には数十名のリサーチャーが在席しています。マーケや営業とコミュニケーションを取り業界トレンドを作りつつ、日々のリサーチ実務に従事する中、一人のリサーチャーがある実験調査を企画。
調査テーマは「設問文・選択肢の見せ方で回答データは変わるのか?」。
・アンケートで提示するコンセプトを、設問文の上に置くか下に置くか。
・選択肢の配置は左から並べるべきか、右から並べるべきか。
調査はこれらの、”設問文や選択肢の見せ方”について、回答データに差が生じるのではないか、という仮説の下、実施されました。
調査会社ならではの視点が詰まった当レポート。
2021年3月にホワイトペーパーとして公開後は、大変多くの反響を呼び、数百件のダウンロードの末、歴代最高を記録しました。これを以ってアスマークでは調査結果の公開セミナーも実施。視聴のお申込みは累計100件超を記録いたしました。
今回は、アスマークのリサーチャーを務め、JMRA(日本マーケティング・リサーチ協会)における委員も担う里村雅幸の、検証レポート誕生秘話について本人にインタビュー。マーケティンググループの畠より、コラム形式にてお届けいたします。
―検証レポート構想へ至った経緯
「調査会社だから適切にデータを聴取して、データを基に考えよう」この考え方が根本にあった里村。『質』にこだわる、という自社の考えにのっとり、「提供するデータの品質を高めるため、知見を深めたい」という欲求が、今回の実験調査を実施するに至った経緯であると語ります。話は10年程過去に遡ります。当時実務セクションの業務を行っていた里村は、ある月曜日にアンケートの回収数が予測の半分にも届いていない、という焦りを経験したとか。
今までにないレベルで「回収予測数のズレ」が生じたことに疑問を抱き、検証を行うと、アンケートモニターの回答環境が起因していることが明らかになったそうです。
この経験をきっかけに、回答率指標の妥当性を検証する『実験的な調査』の実施意義を感じたといいます。
その後は『回答品質』について検討することをテーマとし、「PC回答者とスマホ回答者の違い」や「スマホで回答しやすいアンケート画面とは」等、いくつかの実験調査を行い、今回の調査が誕生しました。
―調査結果の考察
調査結果では「価格は考慮せずにお考え下さい、と注釈を加えると、購入意向のTOP2スコアが10pt程度高まった」など、想定していた仮説が支持される結果や、思ってもいなかった結果も得られました。(詳細はこちらより無料でご覧いただけます)
概ね想定した通りの結果ではあるものの、『具体的にどのくらい影響する可能性がありそうか』については、実験調査をしなければ分からなかったポイントです。『データを基に』説明するための材料を得たことは、里村自身も大きな成果だと考えています。

写真:アスマーク・リサーチャー 里村 雅幸
―”回答の質を上げる”重要性について
インターネットリサーチは、個人単位で気軽かつ低コストに、アンケート画面作成~回答データ回収までが可能な時代となりました。しかしそこで注意したいのが、データの品質担保ですね。回答データの品質によっては、リサーチ結果をその後誤った意思決定へ活用してしまうリスクが高まり、注意が必要です。
回答の質を高めるためには、リサーチの教科書に載っているような調査票設計のスキルももちろん有効ですが、その他にも品質に関わる重要な要素があるとのこと。
お伝えしたいのは以下の2点です。
・アンケートモニターが正しく回答しやすい調査設計を意識する
(回答のし易いアンケート画面の作成を行い、回答負荷を考慮する)
・回答データのチェックを適切に実施する
そのために、アスマークでは以下の2点をサービス提供しています。
・リサーチャーによる調査設計/お客様の調査設計のフォロー
・専任の実査担当による、調査票確認~画面作成~データチェック
調査運営やデータ回収などの実務(実査)へ長年力を入れてきた当社。システムで効率よく全て完結させるのではなく、手間がかかっても人が関与して確認することの重要性を認識し、実現に努めています。
データサイエンスで言われる格言、「Garbage In Garbage Out(ガーベジ・イン・ガーベジ・アウト)」。聴取した回答データが不正確であれば、どれだけ素晴らしい分析を行っても、結果は不正確なもの(役に立たない)という、この概念をいかに重要視できるかが大切ですね。

写真:歴代1位のDL数を記録した、刊行ホワイトペーパー
―今後調査してみたいテーマ
最近、「VUCA(ブーカ)」という言葉をよく目にするようになったように思います。
「Volatility:変動性」「Uncertainty:不確実性」「Complexity:複雑性」「Ambiguity:曖昧性」という4つの単語の頭文字をとったワードで、ビジネス環境や市場、組織、個人などあらゆるものを取り巻く環境が変化し、将来の予測が困難になっている状況を意味する造語です。
今回アスマークが取り組んだ「調査品質に関わる」実験調査。テーマがマニアックであるため、あまり反響が得られないのでは?と意見もありましたが、その予想を覆し、非常に多くの反響が得られました。
不確実性が高まる環境下で、データを基に意思決定したい、リスクを逓減したい、といったお客様の思いが高まっているのではないかと里村は肌で感じたとのこと。
どうやら現在は「”回答方式の違い”によるデータの違い」について研究を深めたいとか。
例えば同じ選択肢において
・マトリクス形式
・ランキング形式
・当てはまるもの3つ
このように回答形式を変えることにより、回答者傾向にコントラストが出るのか、といった検証のようです。
非常に興味深く是非考察を進めたい分野ですね。今後の実験調査も『回答データの質』をメインテーマとして、品質に関わる題材で実施・公開を進めていきたいと考えています。
―終わりに
設立20期を迎えたアスマーク。
いかに日頃の業務の中でこのような姿勢を持ち探求を進めることができるか、今後在るべき調査会社の姿として、引き続き使命を持って努めていきたいものです。
新たな検証レポートの公開まで、しばしお待ちください!
今後もアスマークは皆様のマーケティングリサーチを支援してまいります。
(マーケティングコミュニケーショングループ・畠)
