1872年に庭園業として創業し、現在、全国約190拠点で展開する株式会社日比谷花壇(以下、日比谷花壇)。「すべての明日に、はなやぎを。」をコーポレートメッセージに掲げ、フラワーギフトの企画・販売から、ウエディング装花、葬祭事業、法人向けサービス、地域創生事業まで、花とみどりに関わる幅広い事業を手掛けています。
そんな当社が誇る最大ともいえる価値の一つが「品質」です。実際にお客様からは「花持ちが良い」「長く楽しめる」といった声を多くいただいており、この評価の背景には、創業当時から一貫して大切にしてきた「品質管理」への揺るぎない信念があります。
なぜ品質管理に強いこだわりを持っているのか。その価値はどのようにして守られているのか。今回は、当社の象徴ともいえる「日比谷花壇 日比谷公園本店」の総店長を務める鎮野宏幸に、現場で積み重ねられてきた取り組みやその根底にある想いを聞きました。
■ 店舗に届く前から徹底した品質管理を実施
花はわずかな環境の変化にも敏感に反応する繊細な生き物です。そのため、季節や気温、流通の状態など、さまざまな要因が花の日持ちに影響を与えます。さらに近年では気候変動により、花の品質を保持することが年々難しくなっています。花や植物の持つ不確実性と向き合いながら、一定の品質を保つ背景には、店舗に届く前段階からの徹底した品質管理が存在します。グループ会社が仲卸機能を持つことで、流通過程での花へのストレスを最小限に抑える「コールドチェーン」と呼ばれる低温物流システムを確立しています。産地から店舗まで一定の温度を保ち輸送することで、花の状態を良好に保ったまま店頭へと届けることができます。

品質管理へのこだわりは、店舗に届いてからも続きます。到着した花は、スタッフが一本ずつ検品。

さらに鮮度保持剤を使用することで、花の美しさを長持ちさせる工夫をしています。また、店頭ではご購入時にお客様へ切り花長持ち剤(鮮度保持剤)を配布するなど、自宅でも花を長持ちさせるためのサポートを行っています。

こうした徹底した品質管理の中でも、当社の「お客様に長く花を楽しんでほしい」という思いを最も体現しているのが、全店で実施する「5日間の日持ち保証」。ご購入後5日以内に万が一花が枯れてしまった場合、同等の新しい花と交換するサービスです(※)。これは同時に、「最低5日間は美しさを保つ」という当社が掲げる品質への約束でもあります。
(※)生花を購入後5日以内に生花が枯れた場合、購入時のレシート、及びスマートフォンなどで撮影した画像を購入店の店頭で提示いただくと、1回に限り、替わりの生花と交換します。購入した生花が店頭にない場合、購入時と同額の別の生花と交換します。交換を行うのは、28度以下の室内で、切り花長持ち剤を使用した場合に限ります。日持ち保証販売の対象は、店頭持ち帰りの生花で、花束やフラワーアレンジメントとしての加工品、及び一部の生花の種類を除きます。
■当たり前のことを、どこまでもひたむきに、徹底的にやり抜く
この徹底した品質管理への取り組みには、深い理由があります。それは、当社では花を単なる商品ではなく、大切な人への想いを運ぶ特別な存在だと考えているからです。
「感謝の気持ち、送別のエール、人生の門出を彩るお祝いなど、花には贈り主の気持ちが色濃く乗ります。

当社が実践している品質管理は、特別な技術を用いているわけではありません。しかし、当たり前のことを、どこまでもひたむきに、徹底的にやり抜く。当社ではこの姿勢を長年大切にしてきました。
「花や植物への愛情を持つスタッフが多いからこそ、『品質が良いのは当たり前』という意識が多くのスタッフの中で自然と根付いています。一人ひとりの丁寧な仕事への意識が、花の鮮度と美しさの維持に繋がり、結果的にお客様との信頼関係を築く土台となっているのだと感じます。」

また、この丁寧な品質管理は、裏方の仕事のように見えて、実は接客の中でも大きな意味を持ちます。「この花、きれいですね」など声をかけてくださるお客様との会話から、飾り方や育て方のアドバイスに繋がることもしばしば。品質が良いという安心感が、会話のきっかけや信頼関係の礎になっているのです。
■ 日比谷花壇の顔である「日比谷公園本店」。高い期待に独自の体制で応える
鎮野が総店長を務める日比谷公園本店は、1950年の開店以来、日比谷花壇の顔として親しまれてきました。長い歴史の中で培われたお客様からの信頼もあり、全店の中でも特に花に対する深い知識や高い審美眼を持つ方々が多く訪れます。
本店では、毎日変わる花の状態に柔軟に対応するため、日々のチェック体制を明確にしています。5~7名のスタッフが勤務する中、日替わりで1名が「品質管理担当」を務め、開店前に切り花や鉢物を一つずつ、傷の有無や鮮度が保たれているかなどを目視でチェック。開店後も、1時間に1回のペースで売り場全体を巡回し、花が水から抜けていないか、花が弱っていないかなど、花の状態をこまめに確認しています。

しかし、花の品質管理は個人の感覚や経験によって基準が異なりやすいもの。品種や入荷日、季節によっても判断の基準は変わり、マニュアルでは対応しきれない場面も少なくありません。だからこそ、どのスタッフが担当しても品質を均一に保てるよう、日比谷公園本店では工夫を重ねています。
「一人の担当者だけに品質管理を委ねるのではなく、全員が見守る意識を持つことで、品質の均一化を図っています。休憩から戻った際には、スタッフ全員が自然と売り場を一周し、『あの花、少し元気がないかも』などと声をかけ合う環境作りを大切にしています。特に経験の浅いスタッフが担当する日は、先輩がサポートにまわるなど、チームで品質を守る体制を整えています。」

こうしたスタッフによる品質管理に加え、花にとって最適な空間を維持することにも細心の注意を払っています。天井が高く、大きなガラス面が特徴の本店は、開放的で心地よい空間を演出する一方で、強い日差しや室温の調整が難しいといった課題もあります。そこで、直射日光を避けた花の配置や、大型サーキュレーターによる空気の循環を工夫しながら、花に負担をかけないよう繊細に環境を整えています。

■スタッフが直接産地まで足を運び仕入れ。立体的かつ説得力を持った説明を実現

品質管理に並ぶ本店の魅力として挙げられるのが、天然水のみで育てられたバラや陶器鉢に植え込んだ特注の胡蝶蘭など、本店でしか取扱いのない商品を含む豊富な品揃えです。これらの花は、スタッフが産地に直接足を運び、生産者のこだわりや育成の背景を聞いた上で仕入れています。育て方や生産者の思いを知ることで、より立体的かつ説得力を持って花の魅力を伝えることができるようになります。

そんな本店の店づくりにおいて鎮野が特にこだわっているのが、「花をどのように見せ、感じてもらうか」という点です。たとえば、香りのあるバラなどの花は、より香りを感じられるよう、お客様の鼻の高さに合わせてディスプレイ。また光の入り方などを考慮しながら配置することで、花の色や表情がより美しく見えるよう工夫しています。

さらに店舗での業務以外にも、花や植物への理解を深めるための努力を欠かさないと言います。
「自宅でもたくさんの花や植物を育て、本で読むだけではわからない発見を大切にしています。自分の経験として語れる言葉こそが、お客様との信頼関係に繋がると思います。」
その探究心は、鎮野に留まらずスタッフの多くが自分で何かしらの植物を育てているほど。純粋に花が好きで、その魅力を最大限に引き出したいという一人ひとりの情熱が、日比谷公園本店の品質を支えているのです。
■日々の丁寧な扱いと品質への意識が実現する、大切な瞬間を残すサービス

徹底した品質管理は、新たなサービスにも繋がっています。

「これからも特別なシーンだけでなく日常でも花を楽しんでいただけるよう、日々の品質管理を徹底していきます。これまで花にあまり馴染みのなかった若い世代や、海外からのお客様にも是非利用していただきたいですね。」
花は単なる贈り物ではなく、気持ちを繋ぐ存在。だからこそ、日比谷花壇ではその品質に責任を持ち、確かな形で届けてきました。創業から150年を超える歴史の中で培われた品質への信念を守り続け、これからも皆様の特別な瞬間と日々の暮らしに寄り添っていきます。
■ 日比谷花壇 日比谷公園本店 公式HP:https://hibiyakadan-honten.jp/
株式会社日比谷花壇について:https:// hibiya.co.jp/
1872年創業、1950年に東京・日比谷公園本店の出店後、株式会社日比谷花壇を設立。現在、全国約190拠点で展開。ウエディング装花、店舗及びオンラインショップでの個人/法人向けフラワーギフト・カジュアルフラワーの販売、お葬式サービス、緑を通じた暮らしの景観プロデュース、フラワーグラフィックサービス、地域のまちづくり事業等を行っています。今後も花や緑の販売、装飾にとどまらず、暮らしの明日を彩り、豊かなものへと変えていく提案を続けていきます。