UXデザイナー兼インフォメーションアーキテクトとして活動し、2020年に人間中心設計(HCD)スペシャリストの資格を取得した仙崎萌絵。資格取得は、未経験でUXデザイナーとして入社し、数々の経験を地道に積み重ねたひとつ証明となりました。
資格取得で、自身のスキルを証明したい
前職の上司が教えてくれた1冊の本をきっかけに、「UXデザイナー」という職種に出合いました。当時、ビジュアルやコンテンツがその先のユーザーに届いているのかをわからないまま制作に携わっていた私は、体験を考えるデザイナーがいることに衝撃を受け、UXデザインに携わる仕事がしたいと考えるようになりました。本格的にUXデザインを学ぶために通ったのが、ネットイヤーグループ主催の社会人向けUXスクールです。その受講をご縁に、UXデザイナーとしてネットイヤーグループに入社しました。HCD-net認定人間中心設計スペシャリストの認定制度についても、このUXスクールを通じて知りました。
入社後は、UXデザイナーのアシスタントからスタート。仕事をする中で刺激になったのが、すでに人間中心設計の資格を取得していた先輩UXデザイナーたちの活躍です。私も資格を取得すれば、一人前のUXデザイナーとして認められるのではないか。そう思いながら、プロジェクトを任せてもらえるようになるまで、地道に目の前の仕事に取り組みました。
HCD-net認定人間中心設計スペシャリストの認定後に起きた変化
メインのUXデザイナーになったタイミングで、受験準備をスタート。HCDスペシャリストには13のコンピタンス(専門業務の遂行に必要となる、能力・技能・知識)があり、その中の6項目以上について過去の業務で完遂したことを証明しなくてはなりません。不足している点もあるけれど、もう少し経験を積めばスキルを証明できる。そう確信が持てました。準備の過程で知ったのが、この認定制度は知識や理解度をテストされるのではなく、自身のスキルを見つめ直すものであること。UXは知識だけでは測れないものであり、だからこそ、この制度には意味があると感じました。
HCDスペシャリストの資格を取得したのは2020年3月です。取得したことで、たとえば提案の質も上がり、クライアントからの信頼も得やすくなりました。そして何より自信を持ってUXデザインに携われるようになりました。積み重ねてきたスキルが証明されたことへの喜びは大きかったですが、一方でスペシャリスト認定がゴールになっていたことにも気づきました。正直、その後の活動や働きを思い描けていなかったのです。
そこで立ち返ったのが、認定者の心構えです。その中には「ユーザー体験を啓蒙していくこと」と記載されており、“認定はゴールじゃない、これが始まりなんだ”と気持ちを引き締めました。
クライアントと向き合うたびに見えてきた課題
プロジェクトで、様々なクライアントとの関わりが深まるにつれ感じた課題があります。クライアントとより良いユーザー体験を描き、実装できても、その体験の維持が難しいということです。私たちがすべてのマーケティング活動を恒久的に支援するケースは稀で、プロジェクト終了後は、クライアント自身がユーザーを捉え、課題を認識し、遂行して検証していくことになります。でも、それは容易ではありません。従って、同時に「どうしたらクライアント側にUXプロセスを浸透させることができるのか」も考えるようになりました。資格を取得するまでは自分のスキル向上に向いていたベクトルが、関わるクライアントや社内のメンバーに向かうようになったのです。
自分ごと化して、目の前のユーザーを捉えてもらうために
そんな折、お付き合いのある大手メーカーのご担当者から、広告代理店や制作会社から提供される情報をどのように自社で活用していくべきか困っているとご相談がありました。実際に自分たちでペルソナやカスタマージャーニーを描かれていましたが、活用するには、もっとブラッシュアップが必要でした。それまで提案型で進めていたプロジェクトスタイルを、クライアント自身が考え、議論しながら整理できる体験型に変えることを提案。オンラインワークショップでペルソナやカスタマージャーニーマップの作成など、UXデザインを定着化させました。ご担当者からは、「ユーザー視点で考えるのは面白いですね」と所感をいただきました。
ユーザーについて考えるきっかけを提供したことで、クライアント自身に変化があったことは非常に嬉しく、UXデザイナー冥利に尽きました。この小さな種を少しずつ成長させながら、ゆくゆくは現場レベルでユーザー目線の体験を話し合い、理解し、課題を見つけて解決してもらえたら素敵だなと考えています。そのためのユーザーとクライアントの小さな懸け橋をつくることが、UXデザイナーの取り組みなのではないか、とも考えています。
社内外を問わず「同じ目線でユーザー体験について話せる人を増やす」ことは、UXプロセスの重要度の理解を促進するため、専門領域のアウトプットでの合意形成も得やすくなります。
最後に、UXはUXデザイナーだけの領域ではありません。