“きっかけ”を一過性で終わらせない。

挑戦が次につながる現場を支える、TOMOSの支援設計とは



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福祉の現場には、いまだ「優しさ」や「個人の献身」という属人化された構造に支えられている側面が少なくありません。しかし、その社会との閉鎖性こそが、障がいを持つ人々から社会との接点を奪っているのではないでしょうか。


栃木県宇都宮市を拠点とする株式会社TOMOS companyは、この課題に対し、感情論ではない「支援のシステム化(支援設計)」で挑んでいます。私たちが運営する刺し子ブランド「TERAS」が届けるのは、単なるプロダクトではありません。

私たちが展開する刺し子ブランド「TERAS」を通じて、メンバーは自らの仕事が誰かの喜びになる手応えを掴み、自信と誇りを持って一般就労の次のステップに進んでいきます。社会との接点が一人の人生を動かす大きな“きっかけ”になる瞬間があります。

本記事では、スタッフが日々利用者と向き合う中で実践している「役割の提供」や「個性に合わせた導線づくり」の具体例を紹介。誰もが社会を創る一員となれる・TOMOSが描く「境目のない世界」という新しい福祉のあり方を伝えます。

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株式会社TOMOS company(本社:栃木県宇都宮市、代表取締役:飯島 亮、以下「TOMOS」)は、宇都宮で就労継続支援A型・B型事業所を運営しています。

その現場から生まれた手仕事を社会に拓くブランドが「TERAS」です。

TERASが届けたいのは、プロダクトだけではありません。

つくり手が価値を届ける側として社会と出会い、反応を受け取り、自信と誇りを持って一般就労へとつながっていく。その循環をつくることです。私たちは、そのための“きっかけづくり”を設計しています。


この記事でわかること

  • 社会とつながる役割を生み出す支援設計。
  • TOMOSが現場で築いてきた“挑戦が続いていく仕組み”とは。


  • 原宿での刺し子実演をきっかけに、あるメンバーの世界が大きく広がりました。

    本記事では、その一日の出来事と、裏側で支えていた支援の工夫、そしてそれが現場全体にどのような変化をもたらしたのかを紐解きます。

    • 原宿での挑戦 — メンバーの人生が動いた瞬間
    • 挑戦を“特別なイベント”で終わらせない支援設計
    • 積み上げてきた階段とオープンファクトリー構想


    昨年の10周年を節目に、TOMOSは「会社はローカルに、モノはグローバルに」をテーマにさらに挑戦を続けます。オープンファクトリーとグループホームを軸に、“欲しいから選ばれる”モノづくりを通じて新しい就労機会を創出し、誰もが誇りを持って働ける未来をデザインしていきます。

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    設計①|社会と出会う役割をつくる

    → 私たちは、メンバーが社会と直接出会う機会を、現場の中にどう生み出すかという課題に向き合ってきました。

    Story 1|原宿の実演での「差し入れ」と偶然の「国際交流」——人生に残る、“返ってくる瞬間”

    2024年 @原宿その日、彼女は会場の奥から全力で走ってきて、息を切らしながら、キラキラした笑顔で言いました。

    「海外の人と話せましたー!!」

    東京・原宿。「スナワチPOPUP原宿2024」の会場で、刺し子の実演に立ったのは、TOMOSのB型の利用者(以下、メンバー)でした。難聴の障がいのある彼女にとって、“夢だった国際交流”が、目の前の現実になった瞬間です。

    社会との接点が、本人の自信と力を引き出し、日常の意欲へとつながっていくこと。さらにその変化が、家族や仲間へ波及していくこと。原宿での一日は、その理想が形になった、忘れられない一日でした。


    2024年12月8日。彼女は原宿の会場で、いつも事業所でやっているように刺し子を実演しました。

    当日の朝、いつも陽気な彼女からは、明らかな緊張が伝わってきました。けれど東京の景色に目を輝かせ、毎朝のルーティンである“日光浴”をこなすうちに、少しずつ自分のリズムを取り戻していきます。

    「与えられる福祉から、与えるクリエイティブへ」  TOMOSが社会との“きっかけ”をつくる理由


    ▶︎彼女がデザインされたポスター

    会場には、彼女の晴れ舞台を応援しようと宇都宮から家族も駆けつけました。

    「こんなに素早く、丁寧に刺し子ができるんだ!」

    働く姿を見て驚き、誇らしそうに見守るお母様とお姉様。その視線が、彼女の背中をピンと伸ばしました。

    そして、彼女の人生に残る出来事が起きます。人生で初めて自分に向けた「差し入れ」を受け取ったのです。

    「自分が一番最初のファンでありたい」そう言って差し入れを手渡してくれたのは、以前からTOMOSを支えてくださっている方でした。

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    ▶︎左:刺し子実演の様子、右:初めての差し入れ・記念の1枚

    “誰かに応援される”のではなく、“自分の手仕事に対して、想いが返ってくる”。その経験は、彼女の表情を一段と明るくしました。


    さらに彼女の夢だった「海外の人との対話」も、原宿で実現します。手話や身振り手振りで想いを伝え合い、通じた瞬間に、彼女は思わず声にならない声で笑いました。

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    ▶︎左:報告会、右:海外の方との交流

    その経験は「国際手話を勉強したい」という新たな目標にもつながっていきます。

    翌週の報告会で彼女が語ったのは、こんな言葉でした。

    「貴重な経験で、とても楽しく1日を過ごせました」



    その一言は、事業所の仲間にも伝播します。

    「私も事業所の外の世界へ行ってみたい」

    原宿の一日は、彼女だけの出来事ではなく、勇気の連鎖を生みました。

    同行職員コメント(B型松原店:増渕栄美)

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    難聴の障がいのある彼女と出会ったことがきっかけで、私も手話を学び始めました。















    手話の勉強に行く日は必ず、『頑張ってください!』と応援してくれて、試験の日も彼女がかけてくれた、『ゆっくりやれば大丈夫です』という言葉が私の励みになりました。手話は彼女の想いを同じ目線で理解できる大切な言語です。



    原宿でのPOP UPの時に2人でいったマクドナルド。たまたま居合わせた外国人の方との会話で、世界には自分と同じ障がいを持つ方がいる事を知り、国際手話を覚えたい。と新たな夢ができました。

    言葉や文化は違うけれど同じ人として繋がる事ができる!と学んだ彼女のとびっきりの笑顔が印象的でした。



    事業所での報告会では、堂々と体験してきた事をみんなに伝え、『また出張に行きたいです!』と話してくれた彼女。一般企業で働けるようになりたい!と毎日頑張っている、彼女の『原宿出張』は自信になり、今後に繋がる毎日を作っています。



    事業所の中だけの世界ではなく、もっと視野を広げてみると、メンバーさんの自信や楽しいを生みだしてくれるきっかけがたくさんあると改めて感じました。



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    ・就労継続支援A型:事業所と雇用契約を結び、最低賃金以上の賃金が支払われます。労働関係法令が適用され、勤務時間や社会保険(要件充足時)も一般就労に準じます。主な目的は、一般就労に近い働き方の定着です。

    ・就労継続支援B型:雇用契約を結ばず、体調やペースに合わせて生産活動に参加します。作業量・成果に応じた工賃が支払われます(※賃金とは法的性質が異なります)。主な目的は、就労訓練・社会参加・能力向上です。

    ・TOMOSとTERASの位置づけ:A型・B型の双方が同一ブランド「TERAS」の制作・販売に参画し、“境目のない”現場づくりを進めています。

    ※TOMOSの就労継続支援A型・B型事業所で働く利用者を、私たちは「メンバー」と呼んでいます。

    本記事でも以下「メンバー」と表記します。

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    設計②|挑戦を“特別な出来事”で終わらせない

    → 社会との接点が生まれても、それが一度きりの体験で終わってしまえば、次の挑戦にはつながりにくくなります。

    Story 2|挑戦を“特別なイベント”にしない。日常の延長となる設計

    原宿への“出張"は、メンバーにとって簡単なことではありません。毎日事業所に来ることが難しい方もいれば、移動が難しいと感じる方もいる。そんな日々の中での挑戦です。

    そして、この原宿への挑戦、そして彼女が無事に日常に戻れたこと。たまたま偶然の奇跡ではありません。彼女と一緒に目指してきた“挑戦が生まれる仕組み”の、ひとつの結果でした。

    同行職員(A型東宝木店・施設長/サービス管理責任者:相澤 哲洋)



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    鍵になったのは、彼女が普段から大切にしている「リズム」を崩さないこと。



    いつも素直で真っ直ぐながらも、お茶目な一面も良く見られる彼女が、会場に着く前

    に緊張をしている姿もありました。会場に着いていつものルーティンでもある日光浴や職員との会話から少しずついつもの彼女らしさが出て、普段と違う環境でも刺し子を進める事が出来ました。



    きっとそこにあったのは、「覚悟」と「楽しさ」と「自信」と「安心」だったと思います。

    私たちが社会との接点となるきっかけを作り続ける事で、特別な成功体験で終わるのではなく、日常の中の自信を持つことに繋げていきたいと思っており、お互いの「境目のない世界」を広げていく一つだとも信じています。



    その積み重ねが、日常生活の幅を広げたり、一般就労や将来に繋がってい

    く、そういった「きっかけ」を設計し、サポートしていく事がやりがいの一つでもあります。



    TOMOSがつくりたいのは、イベントの時だけ頑張る姿ではありません。

    社会との接点(実演・接客)が“きっかけ”となり、メンバーの自信と能力を引き出し、それが日常の仕事への意欲にさらに還元される状態です。

    ひとつの挑戦が、本人だけでなく、家族や仲間の未来にも波及する。原宿での一日は、そのスタッフたちが日々願い、作りたかった世界が一前身した日でした。

    設計③|社会に出るための導線を整える

    →「やってみたい」という気持ちが生まれても、移動や環境の変化が大きな壁となることがあります。

    Story 3|“パンプス”をはいて、まちを歩く。“やらない理由よりできる方法を考える”。福祉の「当たり前」を更新していく



    2025年3月、原宿「ハラカド」でのイベント。人、人、人…。栃木ではなかなか見ないほどの人の数。インバウンドの方も多く、街全体がエネルギーに満ちていました。

    今回原宿へ向かったメンバーは2人。

    1人は、普段は事業所では見かけない素敵なスカートとヒールのあるパンプスで現れました。それは単なるお洒落ではありません。「TOMOSの代表として仕事に行く」その誇りと自覚が、装いにも姿勢にもはっきりと表れていました。

    もう1人は、車椅子での移動に挑戦しました。電車での長距離移動、乗り換え、原宿の人混み。決して簡単なことではありません。それでも、「やらない」ではなく、「どうしたらできるか」を一緒に考えながら準備を重ねてきました。

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    宇都宮を出発し、新宿で乗り換え、原宿へ向かう。その道のり自体が挑戦でした。スタッフも、ご家族に心配をかけない体制で臨めるか緊張しながら同行しました。夢だった原宿に目を輝かせる2人。少しの不安と、大きな期待を抱えながら、ついにその場所に立ちました。

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    ハラカドで昼食をとり、会場へ向かうにつれ口数は減ります。

    しかし代表やスタッフの顔を見ると、少しずつ緊張がほどけていきました。いよいよ刺し子実演の本番です。

    “支援される存在”ではなく、“価値を届ける側”として社会の中に立つ。自分の刺し子を、自分の手で魅せる。その実感が2人の背中を押しました。

    最初は少しそわそわしていた2人も、針を持つといつもの仕事スタンスへ。お客様から声をかけられ、「ここの部分は私が刺しました!」と堂々と説明します。自分のプロダクトを、自分の言葉で伝える。その姿は、確かに“働くプロフェッショナル”でした。

    休憩時間には竹下通りでクレープ。「迷うー!」と笑いながら選ぶ姿も、原宿を楽しむ姿も、すべてがかけがえのない経験でした。

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    そしてインスタライブの生放送にも挑戦。事業所で練習を重ねてきた2人。本番で「季節をイメージしながら刺しています」と自然に答える姿に、日々の積み重ねの強さを改めて感じました(スタッフ一同涙)。

    翌週の報告会では、それぞれが自分の言葉で振り返ります。

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    「実はバスにも1人で乗った事もなく、前回のPOPUPの時に挑戦したけど、怖い気持ちがあった。けど、東京出張の話をもらった時に、嬉しくて、夢を諦めないで挑戦しようと決めて頑張りました。私の夢が叶って嬉しかったです」



    「原宿に行ってみたいという夢が叶って嬉しかったです。みんなの代表として行くという事も最初は不安もあったけど、楽しく出張を終える事ができました。また行きたいです!」



    それを聞いた他のメンバーからも、「感動しました」「本当に頑張ったんですね」という声が上がりました。

    同行職員コメント(B型松原店:大出剣太)

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    すべてが繋がって1つの物語が生まれる。今回行けなかったメンバーさんもたくさんいらっしゃいました。



    そこには、ひとりひとり思う事もあったと思います。





    「行きたいけど、様々な理由があって行けない。」「自分にも出来るのかな。」「次は行きたい!」それぞれ色々な想いがある中で、メンバーさんみんなに感謝したいのは快く2人を送り出してくれたこと。「頑張ってきてね!」、「インスタライブ見るよ!」仲間からの言葉は、ほんとに温かく励みになったと思います。



    そして、職員もみんなが想いを持ってサポートし準備してきました。イベントの企画から始まり、ルートやスケジュールの確認を一緒に行ったり、少しでも不安を安心に変えてあげたい。一方で、TOMOSの代表としてのお仕事というところもしっかり伝えなくてはいけなくて、2人にとって厳しく感じる言葉もプレッシャーになってしまうかもしれない言葉もあったかもしれません。



    個人的な想いと職員としての想いも混ざり、葛藤することもありますが、それでも2人から出た言葉と涙。「楽しかった!」「夢が叶った!」 感極まる瞬間でした。



    初めての経験をやり遂げ無事に帰ってこれた。不安も楽しさも嬉しさも。色んな気持ち全部が詰まった1日でした。

    設計の横展開|挑戦の機会を広げていく

    → 一人の挑戦を特別な出来事で終わらせないためには、機会そのものを増やしていく必要があります。

    Story 4|2022年→2025年:「市場の反応を肌で感じる」階段を、一段ずつ上がっていく

    TOMOSが運営する「TERAS」の販売会の挑戦は、2024年に突然始まったわけではありません。毎年、着実に“階段”を積み上げてきました。

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    目の前のお客様やコラボ先のパートナー様の反応が返ってくる現場は、つくり手にとって、何よりのフィードバックの機会になります。

    例えば、原宿・ハラカドで開催された「Pepar」様とのブランドとのコラボイベントでは、メンバーが“服に刺し子を施す”という新しい表現にも挑戦しました。

    「与えられる福祉から、与えるクリエイティブへ」  TOMOSが社会との“きっかけ”をつくる理由


    完成した作品を実際の販売の現場で披露し、お客様の目の前で実演する。

    そしてコラボ先のブランド「Pepar」様からも「丁寧に作業してくれて本当に感謝です」と言葉をいただきました。その経験は、メンバーにとって単なる作業の延長ではなく、

    「自分たちの仕事が社会の中で価値として届いている」と実感する機会になっていきます。

    私たちは「良いものをつくる」だけではなく、“手を抜かず手間をかけ”障がいの有無を越えてともに働き、ともに暮らす「境目のない世界」をつくることに力を注いでいます。

    目の前のお客様の反応が返ってくる現場は、つくり手にとって何よりのフィードバックです。 その小さな積み重ねこそが、やがて大きな挑戦につながっていく。

    2025年、原宿でのこの一日もまた、そうした“階段の途中”にある出来事だったのだと思います。

    同行職員コメント(B型上大曽店・施設長/サービス管理責任者:Tomomi)

    「与えられる福祉から、与えるクリエイティブへ」  TOMOSが社会との“きっかけ”をつくる理由




    毎日の作業に対していつも真剣に丁寧に取り組んでくれている2人ですが、このお話しを頂いて2人に相談すると、とても前向きに即答でやります!と言ってくれた事が2人とも気付かないうちにどんどん自信が付いているんだなぁと感じました。



    外部で行う販売会や実演にもいつも積極的で、その中でもスタッフのフォローもしてくれるとても頼りになるお2人です!



    今回のコラボ企画のお仕事を頂いて、初めて洋服に刺し子をする。という新たな挑戦もありました。今までは布一枚に刺し子をしていたのですが、立体的な生地に刺し子をしていくのは本当に大変で、糸の引き加減や模様の見え方など、色々試行錯誤しながら制作に向き合ってくれていました。



    自分の中で何日で仕上げる。という目標も作りながら製作してくれていて、どんどん責任感が増している2人を見ていて仕事に対して真剣に向き合ってくれる姿が、何の不安要素もなく安心して任せられていました。そして当日を迎え、ドキドキの中にも背筋がピンっとするような気持ちで実演してくれている姿がありました。今回の原宿での実演では、いつもの事業所と変わりなく真剣に丁寧に製作してくれていました。



    ゆくゆく将来に向かって目標がある2人なので、本人の中のステップアップや自信に繋がっていったと思います。

    本当にかっこよかった!尊敬しています(*^^*)



    設計の積み重ね|段階的に社会接点をつくる

    → 原宿だけでなく、メンバーが挑戦できる場所を広げる必要があります。

    Story 5|「できない」を「できた」へ。バスの壁を越えた先に

    自分たちで“魅せる”場所は、原宿だけではありません。2025年2月、JR宇都宮駅パセオでの販売会では、より多くのメンバーにとってもその機会になりました。

    「与えられる福祉から、与えるクリエイティブへ」  TOMOSが社会との“きっかけ”をつくる理由


    ▶︎PASEOでの販売会・実演の様子

    人混みが苦手で、これまで一人でバスに乗ることが「難しい」と言っていたあるメンバーが、こう言って、笑顔で会場に現れたのです。

    「ダメだと思っていたバスも、挑戦したら大丈夫でした!」



    TOMOSが行っているのは、根性論の支援ではありません。メンバー本人が自ら「やってみたい」と思える場と、そこで果たせる役割を設計すること。社会との接点が生まれることで、内面に変化が起きる。

    宇都宮PASEOでの刺し子展も今年で2年目。2025年は15名のメンバーが実演に参加し、先日2026年2月に行われた実演には19名が参加しました。このような販売会は社会との接点との“きっかけ”になると信じ、2026年はより積極的に開催をして行きたいと思っております。

    2026年は今まで年2回行っていた販売会を4回に増やします。

    ▶︎関連記事はこちら

    【宇都宮|2026年】刺し子ブランド「TERAS」工房公開の販売会を拡充:オープンファクトリーに向け年4回開催へ

    同行職員コメント(A型東宝木店・施設長/サービス管理責任者:相澤 哲洋)

    今回のPOPUPでは、多くの挑戦を間近で見ることができました。 一人でバスに乗れなかった方が勇気を出して会場まで往復できたり、人混みを避けていた方が「挑戦したら大丈夫でした!」と笑顔で話してくれたり。「お客様が買ってくださる所を見られて嬉しかった!」「他の事業所の仲間と働く夢が叶いました!」など、一人ひとりにとって充実した時間になったようです。みんなそれぞれ自分と向き合う事も頑張った!!



    一人の「できた」は、周りの未来も動かします。本人、家族、そして仲間。それぞれの視点が変わっていくからこそ、私たちはこれからも外の世界とつながる入口を増やせるのだと感じます。

    Story 6|「私、今すごいことしてますよね?」

    2025年冬

    原宿の会場で、彼女はふと、こちらを見て言いました。

    「私、今すごいことしてますよね?」

    「与えられる福祉から、与えるクリエイティブへ」  TOMOSが社会との“きっかけ”をつくる理由


    ▶︎左:初めての取材対応、右:ハラカドにて自分の製作した作品と

    この日スポットライトは間違いなく彼女に当たっていて、

    実演を見てくれた方からも「これはみんなに知ってもらいたいモノだと思う。」という言葉を受けました。彼女の刺し子が、お客様の心に響き、この気持ちにさせたのです。

    “支援される存在”としてその場にいるのではなく、社会の中で、価値を届ける側として立っている。その実感が、彼女の内側から立ち上がってきた瞬間のように、私たちには見えました。

    刺し子の針が進むたびに、目の前のお客様の視線が集まり、声がかかり、反応が返ってくる。 「きれいですね」「早いですね」「この柄はどういう意味ですか?」

    その一つひとつが、彼女の仕事を“作業”から“表現”へ変えていきます。

    実際に刺し子の実演では緊張が見られましたが、普段の事業所での作業の向き合い方もあってか、いざ刺し子を始めると、私たちが「少し休んだら?」と言うまで集中が途切れることなく、終始すばらしいパフォーマンスです。

    私たちが大切にしているのは、できる/できないの線引きではありません。

    本人の中に自信になる瞬間が小さくでも生まれること。そして、その瞬間が、日常へ持ち帰られ、次のそれぞれの挑戦の火種になっていくことです。

    彼女は刺し子の古典柄についてのプロフェッショナル!TERASプロダクトの柄の説明も丁寧に教えてくれます。彼女のこの探究心に、説明を受けてTERASのファンになってしまうお客様が多数です。笑

    私たちは、スポットライトを一過性にしない。

    社会との接点、きっかけが、日常の延長になるように設計し続けます。その先にあるのが、「宇都宮のオープンファクトリー構想」です。

    これから|“きっかけが続いていく現場”を作り続ける

    Story 7|変わっていく瞬間を、いちばん近くで

    TOMOS入社9年目となるスタッフ公手は、入社時から縫製担当としてTOMOSをサポートしてきました。複数の店舗での勤務を経て、現在はB型上大曽店に在籍しています。現場の移り変わりを知る、TOMOSの頼れる存在です。

    B型上大曽店:公手繭(写真一番右)

    「与えられる福祉から、与えるクリエイティブへ」  TOMOSが社会との“きっかけ”をつくる理由




    2018年にTOMOSに入社して在籍9年目。現在はB型上大曽店に配属。複数店舗で入社当時より縫製担当として従事しています。



    TOMOSで印象に残っているのは、あるメンバーさんの変化です。最初の頃は自分自身や作品に自信が持てない様子でしたが、徐々に環境に慣れ、自ら会話をしたり、作品が評価されることで自信をつけていきました。今では他のメンバーさんに刺し方のアドバイスをするなど、お互いを高め合える存在になっています。自信が表れたその外見も、本当にキラキラして見えました。



    「与えられる福祉から、与えるクリエイティブへ」  TOMOSが社会との“きっかけ”をつくる理由


    そんなメンバーさんたちが集まる事業所は、それぞれに個性があります。

    落ち着いて集中していると思ったら、急に笑いが起きるようなこともあったり、和やかな雰囲気が流れたりします。



    ただ、一人一人が「TERAS」というブランドの作品を、手を抜かず丁寧な手作業で作り上げている姿はどこも変わりません。すべての事業所において仕事と休憩時間メリハリがあります。うまい、へたではなく、全員が真剣にモノづくりに向き合っています



    TOMOSは、これからも、メンバーさんにとって安心して通える自分の居場所であってほしい。仲間として、モノづくりだけでなく生活の面でも刺激し合い、共に成長していける場所だったら嬉しいです。こうした変化や挑戦を一番近くで見守るなかで、実は私自身も、メンバーさんからたくさんの刺激をもらい、支えられてきた一人なのだとも感じています。



    現在、TOMOS companyは2026年末のグループホーム併設の“オープンファクトリー”設立に向けた準備を進めています。

    みんなで創っているのは、「魅せる」場所。働く姿を社会に開き、地域の人々が気軽に訪れることができる拠点です。

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    10周年イベント:TOMOS代表コメント

    飯島 亮(株式会社TOMOS company 代表取締役)



    『見学』ではなく『魅せる』。障がいのある人たちを“見せ物”にする話ではありません。(参加は利用者の任意・同意のもと、運用していきます。) 働く・暮らす実像を社会に開示することで、企業の障がい者雇用イメージのネガティブさをほどき、ラフに見に来られる場をつくります。また、保護者の『自分がいなくなったら』という不安にも、住まい×仕事が同じ地平にある場を用意することで応えていきます。



    「オープンファクトリーでは、

    TERASのモノづくりを体験できるワークショップ空間を創ります。

    単なる施設ではなく、利益を出しながら共に働く未来に挑戦する場所になります。」



    「ここに来れば、自分も原宿のような場所で活躍できるかもしれない」

    そう思える未来を、宇都宮からつくり続けます。



    障がいの有無を越えて、ともに働き、ともに誇りを持つ。

    “境目のない世界”へ。私たちの挑戦は、まだ続きます。

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    ▪️TERASとは:SASHIKOとBOROを、いまの暮らしへ。

    「与えられる福祉から、与えるクリエイティブへ」  TOMOSが社会との“きっかけ”をつくる理由


    「TERAS」は、株式会社TOMOS company内の就労継続支援A型事業所として2017年に立ち上がった、SASHIKO(刺し子)/BORO(襤褸)を用いたMADE IN JAPANのブランドです。

    “手を抜かず手間をかける”ものづくりを大切に、オリジナル製品の制作・販売に加え、企業・ブランドとの共創やOEMにも取り組んでいます。

    2024年には原宿「ハラカド」に常設店を構え、伝統技術の文化と、その背景にあるストーリーを表現してきました。

    2024年には原宿「ハラカド」に常設店を構え、伝統技術の文化と、その背景にあるストーリーを表現してきました。2026年からはシーズンレスで年中BOROジャケットを販売予定。原宿で通年BORO(襤褸)商品を扱うのはTERASハラカドのみです。

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    株式会社TOMOS company

    「与えられる福祉から、与えるクリエイティブへ」  TOMOSが社会との“きっかけ”をつくる理由


    株式会社TOMOS companyは、就労支援事業所の運営を基盤に、伝統工芸「SASHIKO・BORO」を軸にしたブランド「TERAS」を展開しています。地域発のクラフトを現代のライフスタイルに合わせて発信し、国内外のコラボレーションや販売を広げてきました。これにより、「福祉からブランドをつくる」モデルをいち早く実装してきました。

    2026年末(予定)、宇都宮に業界初の【グループホーム併設・オープンファクトリー】を開業します。「与えられる福祉から、与えるクリエイティブ」へ。生産・販売・見学/体験が循環する“魅せる現場”で、TOMOSが描く「境目のない世界」を実装します。

    事業内容:

    • 就労継続支援A型・B型事業所を運営
    • 障がいのある方々の就労支援と一般就労への橋渡し
    • SASHIKOや100年以上前の古布・BOROを活用したブランド「TERAS」の企画・制作・販売
    • 福祉とデザイン、アート、ファッションを融合したプロジェクトを企画・運営
    • オープンファクトリーやグループホームを通じた地域交流・教育活動を推進


    会社名:株式会社 TOMOS company

    所在地:栃木県宇都宮市

    代表者:代表取締役 飯島 亮

    URL:https://tomoscompany.com/

    設立:2015年7月

    総合お問い合わせ:info@tomoscompany.com

    ※取材、採用のお問い合わせもこちらへお願いいたします。
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