Gateballers。GODや小山田壮平バンドのギタリストとして知られる濱野夏椰がボーカル・ギターを務め、カネコアヤノバンドでもベースを担当する本村拓磨が在籍するサイケデリックロックバンドだ。

Interview:Gateballers
実験精神あふれる前作を経たからできたこと
──今作の『Infinity mirror』の話をする前に、去年の話をさせてください。昨年2月にフルアルバム『「The all」=「Poem」』をリリース、12月に“Moon river”も含まれるEP『Thank you Part-time Punks』をリリースされました。今一度過去2作を振り返って、いかがでしたか?濱野 夏椰(Gt.&Vo. 以下、濱野) 『「The all」=「Poem」』では、詞を読んで、その詞に適した音像でレコーディング作業をしました。簡単に言うと音楽的にやりたいことをやれたんです。そこから、さらに踏み込もうと思ったのが、前作のEPです。そしたらめちゃくちゃになった(笑)。
Gateballers - 「The all」=「Poem」
──めちゃくちゃって(笑)。実験的でサイケデリックな要素の強いEPでしたよね。本村 拓磨(Ba. 以下、本村) 当初は、3曲入りのシングルをまとめた作品にしようと言っていたんです。
──最高ってことじゃないですか(笑)。久富さんはどうですか? 手数を抑えた楽曲が多い印象でしたが。


初の海外旅を経て生まれた楽曲群
──制作の大半はみなさんがインドに旅をしてからできた楽曲群なんですよね。濱野 そうですね。インドに旅する前に確か2曲ありました。“スーフィー”は昨年末の最後のライブで披露したので。

時制を越えて響く言葉達
──歌詞の面にフォーカスしようと思うのですが、歌詞ではリアルとイメージの世界、どっちもあるよ、みたいなことをこのアルバムを通して言ってるのかなと僕は勝手に思っていました。矛盾を孕んでいる“過去と現在と未来”の時制を行ったり来たりすることとか。頭の中の世界に行ってしまうことフィジカルに何かを感じることの両方を感じられる言葉遣いだなって。濱野 そう解釈してくれているのは嬉しいですね。アルバムタイトルになっている“Infinity Mirror”は歌詞で《道に迷ったら 待ち合わせは 合わせ鏡の古い一枚》って言っているんですけど、合わせ鏡の古い一枚っていうのは一番奥にある“はじまり”のことなんです。果たしてこれは過去の話なのだろうか、未来の話なのだろうかと考えたら難しいじゃないですか。──難しいですね。濱野 そこに“はじまり”の鏡があるかを認識しようとした時に、そこには既になくなっていて、またさらに奥にある。だから言葉も時系列もグチャグチャにしてみたんです。──以前「ウェディングドレスを着る瞬間は人生で一番の幸せを約束された瞬間だ」という話をされていましたよね。Gateballersの歌詞は《体は入れ物》という言葉遣いとか、“Moon river”の《難しいことはもうやめる時間だ》とか《旅をするのに体重はいらない》とか。精神世界の中を生きるといったように、自分の人生をそういったレイヤーでみることを追いかけているのかなとかって思ったんですけどどうですか?濱野 現代って今ここにある現実と仮想空間どっちでも生きられるみたいな世界になってきているじゃないですか。もうすぐリアルと仮想空間の垣根もなくなるだろうし、そのどちらも本物みたいな。そうなってしまったら本当に「体は入れ物」でしかなくなるし、誰でも誰にでもなれる世の中になると思っているんです。でも、個人的には、《体は入れ物》と歌いつつ、やっぱり体が気持ちいいことが最高だ、みたいなタイプなんです。自分は“美味しいと感じること”を大事にしたいんです。できれば携帯とか捨てたいし。──言いたいことはわかります。濱野 でも、仮想の方で生きている人もいるんですよね。いつも寂しい気持ちになるのは、死んじゃった人のTwitterがずっと残ってしまうことなんです。誰でもそのTwitterを見れば、その人のその時間を追うことができる。これからもっとそういう状況になってくると思うんですよ。石の墓場じゃなくて、0と1の墓場になってくる。それは果たしてどんなことなんだろうって考えたりもしますね。

──それこそ、“スーフィー”が神秘主義の詩人ルーミーの『愛の詩』に影響されたものと知って。歌詞で歌われていることと、インドで見てきたものの世界の風景と感じたことが混ざっているような気がしました。でも、あの曲がインドに行く前に生まれていたのは、結構不思議ですよね。濱野 確かにそうですね。インドは初めての海外旅行だったので、1分1秒無駄にせずにああいう歌詞の気持ちで旅をしていました。
Gateballers - スーフィー
──これまでもやろうと思えばシンプルなストレートパンチを打てたと思うんですけど、それをこれまでやってこなかったのにはどんな背景があるのでしょうか?濱野 どうしても最初からストレートパンチを打ちたくなかったんですよ。最初からストレートパンチをやることを目的にすると、どうしても手法が人の真似になってしまうじゃないですか。それが一番嫌だったから、自分のやり方とか道具とか武器を揃えて使い方も学んで、それを使ってストレートパンチを打つ方が絶対に創作として正しいと思うんです。……意外と硬派なんですよ(笑)。──たまたま今回、音像がストレートパンチになっただけで、歌詞の部分とか通底するテーマは変わっていない気もします。大学時代からずっと一緒にいる本村さん的にはどうですか?本村 根元はまったく変わってないですね。濱野 淘汰はされてきてますけどね。本村 変わっているところもたくさんあると思うんですけど、それがあるからこそ変わっていないところにより目がいくんだろうなって思いますね。他の人に対してもですけど、 変わっていないところは本当に変わっていないんです。人といると本当にすごくはしゃいでいて、笑顔だし(笑)。でも、みんなが帰るときに寂しそうっていうのはずっと変わっていないですね。

──最後にこれからの野望といいますか。バンドとしてのスタンスについて教えてください。本村 僕がパッと思ったのは、ライブをしている時とスタジオの時と比べると、笑っている量が変わらないのが重要だと思います。「この人の音何?」「なんで!?」みたいなシーンが絶えず起き続けていて、その度にみんな爆笑してたので(笑)。ライブだから笑顔になっているわけでもなく、制作でもゲラゲラやっているのは、絶対バンドのスタート地点としてあるので、それは守り続けていきたいですね。濱野 俺はめっちゃ俺になりたいです。──俺になりたい?濱野 小さい頃から音楽家になることを決めて音楽家をやっているので、「バンドをやってるから、武道館を目指せ」みたいな考えは嫌なんです。あんまりどういう場所にいたいとかはないです。興味持てなくて。──音楽を作ることが生理になっているということですね。濱野 それに関して言えば、もっと空気を吸うように音楽を作れたらと思うし、赤ちゃんが泣くようにギターを弾けたらなと思います。最終的には、ファミレスとかに行ってギターを弾いてオムライスを注文するみたいな。本当にそうなりたいです、まじで。──自身を強化していくことでしかないですからね。どっちにせよ。濱野 そう。だから芸事を磨いていくのみかなと。……どうですか、(久富)奈良さん? ごめんね、いつも最後で(笑)。久富 これからどうなりたいか……。やっぱり自分の人生を大切にしたいですね。

Text by Hiroyoshi TomitePhoto by Yuki Aizawa

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RELEASE INFORMATION

Infinity mirror
2019.09.04(水)発売中GateballersPSCM002¥2,484(tax incl.)詳細はこちら
EVENT INFORMATION
Gateballers 3rd ALBUM「Infinity mirror」レコ発ツアー
2019.10.04(金)大阪府 梅田 Shangri-LaLINEUP:GateballersベランダARSKNNewdums(Opening Act)2019.10.11(金)福岡県 Kieth FlackLINE UP:GateballersHAPPYthe perfect me2019.10.13(日)広島県 4.14LINE UP:Gateballers愛はズボーンARSKN2019.10.17(木)宮城県 仙台 LIVE HOUSE enn 3rdLINE UP:Gateballersキイチビール&ザ・ホーリーティッツ2019.10.20(日)愛知県 名古屋 CLUB ROCK'N'ROLLLINE UP:GateballersHAPPY2019.11.07(木)東京都 代官山 UNITLINE UP:Gateballers髭Helsinki Lambda Club詳細はこちら
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