
はじめに:ザ・チェインスモーカーズとは?
ドリュー・タガートとアレックス・ポール、そしてマット・マグワイアからなるプロジェクト。2012年にニューヨークで結成され、14年に発表した楽曲“#SELFIE”が、全米ダンス・チャートで1位を獲得したことで注目、その後16年に発表した“ローゼズfeat.ロゼズ”、“ドント・レット・ミー・ダウンfeat.デイヤ”が軒並み総合チャートのトップ10入り、さらに“クローサーfeat.ホールジー”では同年最長記録となる12週連続1位にランクイン。グラミーでも「最優秀ダンス・レコーディング賞」を獲得するなど、一躍音楽シーンの最前線に躍り出た。さらに、コールドプレイ(Coldplay)をフィーチャーした“サムシング・ジャスト・ライク・ディス”のヒットによって、さらなる人気を獲得。17年リリースのデビュー・アルバム『メモリーズ…ドゥー・ノット・オープン』は、全米チャートで初登場1位、日本を含む配信チャートでも首位を獲得するなど、ジャンルを超越し時代を代表するミュージシャンとしての地位を揺るぎないものに。19年には<SUMMER SONIC>にヘッドライナーとして登場、さらに経済誌フォーブスが発表する「世界で最も稼ぐDJランキング19」にて初の1位に。また全世界でのトータル楽曲再生数260億回を突破、今や最も世界を熱狂させることのできるパワーを持つ存在になっている。1.時代の空気を瞬時に取り入れる、感度の高い音楽スタイル
ザ・チェインスモーカーズが、現代最強のパワーを持つようになった要因のひとつと言えるのが、彼らの「DJ」スタイルにあると思う。フェスでの出演映像をご覧いただけたらお分かりかと思うが、最新のエレクトロ・ミュージックをベースにしながらも、ロックやポップス、ヒップホップなど、枠にとらわれない幅白いサウンドをスピン。「そこにいる人誰もを楽しませ、熱狂させる音は何か」という空気を瞬時に嗅ぎつけ、自由自在に音楽を変化させていく。彼らの柔軟性と洞察力の高さが、クラブのフロアやフェスの会場で大きな熱狂を生み、「世界で最も稼ぐDJ」としての地位へと導いたのではないかと思う。最新アルバム『ワールド・ウォー・ジョイ』においても、例えばカイゴ (Kygo)とコラボした“ファミリー”では、ここ最近注目されているカントリー・ミュージック的な要素を取り入れ、“シー・ザ・ウェイ feat. サブリナ・クラウディオ”ではトラップ的なエッセンスを散りばめるなど、いかに聴き手を「ジョイ(喜ばせることが)できるのか?」にフォーカスした楽曲ばかりが目立つのだ。The Chainsmokers - Ultra Miami 2019 (Official Video)The Chainsmokers with Kygo - Family (Official Video)2.「汗」がほとばしるパフォーマンス!
ジャンルにとらわれない音楽性であると同時に、その表現スタイルも枠にとらわれない自由さを感じる彼らのサウンド。ライヴにおいても、ラップトップやターンテーブルとにらめっこしているだけではなく、ギターやドラムなどの「生楽器」を駆使したパフォーマンスを披露する場面も。しかも、轟く音はとてもエモーショナルで、思わず圧倒されてしまうほどだ。3.「ドラマ性」のあるキャッチーなメロディ!
エモーショナルな部分を表現し、誰もを熱狂させることだけが、ザ・チェインスモーカーズの魅力ではない。一方で、メロディの美しさ、流麗さも人気のポイントでないかと思う。一度聴いたら思わず口ずさんてしまいたくなるキャッチーさがあり、しかもその展開がアメリカのポップスのような大胆な印象ではなく、日本の音楽に通じるよう繊細な「ドラマ」を感じさせるようなものなのだ。実際どういう思いでこういう旋律を選んでいるのかは不明であるが、メロディだけでも楽曲の持つストーリーや彼らの思いが伝わるようなものを提示したいという考えが伝わってくるのだ。最新作においては“プッシュ・マイ・ラック”で響かせるメランコリックな旋律は、せつない余韻を与える美しいものになっていると思う。The Chainsmokers - Push My Luck (Official Video)4.パズルの最後の「1ピース」のような歌詞
スマートフォンなどを通じて「自撮り」をする日常を追いながらも、それで満たされることのない孤独を描いた“#SELFIE”。離れ離れになってしまった恋人との距離に思いを馳せる“クローサー”など、彼らの描く歌詞は、時代の持つ空気感を的確にとらえながらも、どんなに時が経過しても人間が抱える喜びや不安などを赤裸々に表現したものが多い。しかも、それらの出来事を、一歩退いた冷静な視点で表現したものが多く、聴き手の感情によって、さまざまな風景や状況が導き出されるものばかりなのだ。またその言葉の数々は、「パズルの最後の1ピース」のように、心の隙間にちょうどよくハマるものが多い。最新作においても“テイクアウェイ with イレニアム feat. レノン・ステラ”は、本当は好きな人とともに生きていきたいけど躊躇する心境を描いているものの、その奥底には「一歩前進できない」もどかしさをありのまま表現している印象で、多くの人の心に届くような仕上がりになっていると思う。The Chainsmokers, ILLENIUM - Takeaway (Official Video) ft. Lennon Stella5.多様なミュージシャンとコラボし、新たな魅力を構築
DJやエレクトロ系のミュージシャンが、ヴォーカリストを迎えて楽曲を制作するのは、今や当たり前の状況にある。ザ・チェインスモーカーズもホールジー、コールドプレイ、さらに最新作においてもファイヴ・セカンズ・オブ・サマーや“P.S.アイ・ホープ・ユアー・ハッピー”ではブリンク182(blink 182)をフィーチャーするなど、多彩なミュージシャンたちとセッションを重ねている。
Text by Takahisa Matsunaga
RELEASE INFORMATION
World War Joy|ワールド・ウォー・ジョイ

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