yahyelがワンマンとしては約2年ぶりに恵比寿リキッドルームでライブを開催した。『THE CHOIR』とタイトルされた同公演は2部制で、各公演300名限定でチケットを販売。
※本レポートでは一部演出・曲目についても紹介しています。ライブに参加されていない方、また配信をご覧になる予定の方は、注意してお読みください。
ライブレポート:yahyel 『THE CHOIR』
会場を見回して驚いたのは2階、1階、そしてフロア内にも複数の工業用扇風機が設置されていたこと。開演ギリギリまでフロアのドアは開放されており空気の循環が実感できる。そして床にはソーシャル・ディスタンシングを維持するために立ち位置のフットプリントが貼られている。空間に余裕がある分、後方でもステージがよく見渡せることに気づいた。


18時25分、開演前の合図が鳴り、公演に際しての注意事項がアナウンスされる。現実的に必要な注意喚起でもあるのだが、同時に一編のドキュメンタリーに参加する気持ちにもなる。その後、完全に場内が暗転した時、公共の場でここまで完全な闇の世界に立っていることが束の間yahyelの“メンバー”であることへの儀式のように感じられた。



続いてはインダストリアルな質感もある新曲を披露。大井のみならず、篠田もパッドを全力で叩く姿が目に飛び込んでくる。滑車が廻り続ける古いフィルムをエディットしたように見える映像が不気味な印象を残す。一転して4分のビートに自然に体が動く“The flare”。序盤から大きなアクションを伴い歌う池貝をはじめ、単独公演に2年のブランクがあったことを早々に忘れてしまう完成度だ。さらに初期から馴染みの“Once”で静寂から徐々にビルドされてサビに登り詰めるカタルシスを堪能。大井のスネア・ロールから始まったドラムソロはエフェクトが施されていて、ダイレクトに身体で受け止める感覚。



宗教曲のニュアンスはそのままこの日3曲目の新曲へ。教会で聴くようなオルガンの音色とスポットライトに照らされる池貝の姿が何か象徴的だ。懐かしさと哀しみを湛えたエレジーとソウルが融合されたこの曲はライブ・タイトルを端的に示唆していたように思う。続く“Body”ではサビで混沌の色合いが増すエフェクトがよりノイジーに空間を埋め尽くし、渦を巻くベースサウンドも相まって、思わずその場に立ち尽くす足に力が入る。それぐらい揺さぶられる。「yahyelの皆さん、今日はお越しいただいてありがとうございます。



自然と起こる大きな拍手と歓声を受けて、池貝が「みんなには(メンバーなのに)何もしてもらえなくて申し訳ないけど、今日、みんなクビなんで、ごめんな。我々にとってはすごいことなんで」と笑いと感銘を同時に起こす発言をした。だが、この日の客は客ではなくメンバー、そしてこのメンバーはCHOIR=聖歌隊なのだ。歌えない聖歌隊というのも現状のライブ空間においてyahyelからの皮肉と愛の入り混じったメッセージだと受け取ったのだが、実際には静的な反応でも感情は発信できる。不思議な信頼関係が充満したフロアは居心地が良かったからだ。ラストはいくつものドアが開く映像も示唆的な“Iron”。池貝の伸びやかなファルセットが響く。〈I just don’t want you to go / Why is it so hard to stay? / We’ve got it all〉――祈りと決意が空間を埋め尽くすような歌とサウンドスケープは真っ赤な背景に浮かぶバンドロゴとともにエンディングを迎えた。約80分の一部から90分のインターバルを経て二部へ。少なくとも一部を見た限り、この後のことを意識して臨んだステージングには見えなかった。






INFORMATION

YAHYEL『THE CHOIR』Live at Ebisu Liquidroom STREAMING
初回配信:2020年9月4日(金)20:00~21:30頃※巻き戻し再生不可アーカイブ配信:2020年9月4日(金)22:00頃~9月10日(木)23:59視聴チケット:¥2,000販売期間:2020年8月28日(金)12:00~9月10日(木)16:00※初回のライブ配信終了後、本配信チケットをお持ちの方は9月10日(木)23:59までアーカイブ配信をご利用いただけます。※アーカイブ配信期間中は何度でも視聴可能です。ZAIKOLIVEMINE
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