「似合う」を考える時、人は相手をどう見つめ、なにを理解しようとするのだろうか。バリアフリー対応、多言語翻訳に取り組むオンライン型劇場の「THEATRE for ALL」と日本財団が主催する『True Colors Festival-超ダイバーシティ芸術祭-』の公式YouTubeチャンネルで2021年3月5日から配信されている『True Colors FASHION ドキュメンタリー映像「対話する衣服」-6組の“当事者”との葛藤-』は、山縣良和の私塾「ここのがっこう」の卒業生・在校生から選抜された6人のファッションデザイナーが、車椅子、義足、トランスジェンダーなど様々な心や身体を持ったモデル6人とタッグを組んで服作りをするドキュメンタリー映画だ。
INTERVIEW:河合宏樹×蓮沼執太
スタート時のモチベーションは感動ポルノ的な要素を否定すること
──THEATRE for ALLから河合さんへ、当初どういったオファーがあったのでしょうか。河合宏樹(以下、河合) 僕の作品である『うたのはじまり』という、写真家の齋藤陽道さんのドキュメンタリーを観たTHEATRE for ALL ディレクターの金森(香)さんからオファーをいただいたことがきっかけです。当初『True Colors FASHION』というプロジェクトはファッションショーの企画で、様々な心や身体を持った方がモデルになり、デザイナーが一緒に服を作り、お客様を入れてのパフォーマンスになる予定でした。しかし、一度目の緊急事態宣言の発令の影響で頓挫してしまい、服作りの一部始終を追った映像作品というかたちに変更となったことで、『河合の視点で撮ってほしい』と金森さんから依頼されました。オファーをいただいてから、映像作品が最終的にアップされる予定のオンラインメディアの「THEATRE for ALL」という言葉に対して引っかかるものがありました。様々な心や身体を持った人たちを、“一つのメディア”で語ろうとするのであれば、「for ALL」なんてできない、と。ALLという言葉を僕は信じていないし、少なくとも2ヶ月の制作期間ではALLを体現するような答えらしい答えは撮れないだろうと。
映画『うたのはじまり』予告編
──ドキュメンタリーは、完成した6組の作品をLILY SHUさんの写真と蓮沼執太さんの音楽、そして音声ガイドと字幕といったさまざまな角度から伝える映像でクライマックスを迎えます。映像作品に新しい機能性を持たせるための独自の手法は、実験的であると同時に、表現としてとても完成度の高いものでした。河合 ファッションという視覚に頼りがちなメディアで、多種多様な楽しみ方ができる方法を模索したい、というのが金森さんの要望でした。僕が『うたのはじまり』でトライした「絵字幕」*1と発想は同じです。一般的な、聴覚障害者の方向けの字幕って、ミュージシャンが歌をうたっているシーンの場合、映像の画面に「歌がうたわれています」ということを文字の字幕だけで伝えるわけですが、その歌自体の豊穣さは伝わってこない。どうにかして歌の豊饒さを伝える手段はないかと思い、絵の力でビジュアル的に歌を表現したのが絵字幕です。その経験を踏まえて、ファッションを多角的に表現するための方法を模索する中で、まず白羽の矢が立ったのが蓮沼さんだったんです。
ハーモニーを求めるのではなくポリフォニー的な共存を目指す
──巷のダイバーシティやバリアフリーといった言葉にどこか形骸化したものを感じてしまうのも、ひとつひとつの事象に誠実に向き合う作業が置き去りにされがちだからかもしれません。河合 例えば、健常者が視覚障がい者と同じ条件で、音と映像を体験してみるとき、映像をシャットアウトして、「彼らの世界を理解した」というのは暴力的で。割り切った表現に留めてしまうことって、時にすごく危険だと思うんです。彼らはもっと色々な感覚をもって僕らとは違う楽しみ方をしているかもしれない、という想像力をないがしろにしてはいけない。今回はファッションを通した対話がテーマなんです。対話というのは、ハーモニーを求めるのではなく、お互いの違いを認めて深掘りし、それを対立しないかたちで共存させる「ポリフォニー」のことなのだ、ということを本で読んだことがあります。
──あえてカオスな状態の完成形を目指すのは、とても難しいことに思えますが。河合 やり方によっては不協和音になりかねないですよね。蓮沼さんやLILYさんみたいな作り手にとっては、字幕や音声ガイドで自分の作品を説明されてしまうのは嫌な場合もある。でも、今回はそれぞれの視点と解釈を持ち寄るというやり方でやってみたら、意外と面白いものが出来上がった。それぞれが、ぞれぞれの表現に責任を持ってやった、という感じです。成立するかどうかについては、あまり責任を感じていなくて、とにかく普通のやり方を崩して新たな方法論を探ることが目的。
蓮沼執太フィル オンライン公演 #フィルAPIスパイラル|Shuta Hasunuma Philharmonic Orchestra #phil_api_spiral
忘れられがちなことに気付くには、とにかく丁寧にやるしかない
──蓮沼さんは、今回の作曲と普段の作曲とで、なにか作業内容や向き合い方で大きな違いはありましたか。蓮沼 固定概念を疑う、ということがこの映画のテーマとしてあると思ったので、僕もそういう考えを持って少しでも新しいものを、という気持ちで取り組みました。
映画『ほんとうのうた~朗読劇「銀河鉄道の夜」を追って~』予告編
当事者のことを知るためのプロジェクトではなくて、コンテンツを通して見識を広げるためのもの
──山縣良和さんが語った、様々な心や身体を持った方との服作りについて「機能を通じた向き合い方はあったが、今回のように感情と感情を通じて作られたものはなかった」という視点についてはどう思われましたか。河合 あの山縣さんのなかでもまだ向き合えてないことがある、ということに「まだやれるじゃん」という気持ちになったし、それはきっと映像や音楽でも同じことで。まだ楽しめるんだなと。山縣さんや金森さんはそういうことを常に考えてらっしゃる方達なので、今回のドキュメンタリーがこういったかたちで完成させられたのは、お二人が我々の意図を理解した上で自由にやらせてくれたおかげだと思っています。ドキュメンタリーの制作は、広告的なことを求められることもあるものなんですが、今回はそういったことは求められず、おかげで新しい可能性を見つけることができた。すべての部分で誠実なアプローチをすることについて、金森さんも山縣さんも向き合ってくれたから実現できたんだと思います。蓮沼 人間ってとかく無意識に差別的な行動をしてしまいがちですよね。人は人、それぞれ違うことを認めないといけないのにどうしても差や優劣をつけてしまいます。僕自身も今回の作曲中に、例えば、この人は義足だから、そのことの意味を探さねば、などあれこれ考えてしまっていた。それは事実なんだけど、なにかと比べてしまう。そこには差別があるんじゃないかと思う。「僕は差別なんてしてないです」と主張しても、構造的な差別はどうしても存在する。そういう日常にいながら、今回のようなプロジェクトに表現者として関わらせてもらう中で、なるべく全ての人に差がないよう、一対一で接したつもりです。それでもやっぱり難しい場面はある。難しさも感じたけれど、それ以上に、もっとできると思えた。コミュニケーションを経た先にあるクリエイションにおいて、そのコミュニケーションのあり方には一歩先があるんじゃないか、もっと踏み出して作れるような領域があると思いました。学びが多い体験でしたね。──「THEATRE for ALL」というプロジェクトに参加した感想を、改めて教えていただけますか。河合 とても勉強になりました。バリアフリー字幕や音声ガイドにこんな作り方があるんだってことをもっと多くの人に知ってほしいですね。こんなに可能性のある表現なんだよと。「THEATRE for ALL」はその当事者のことを知るためのプロジェクトではなくて、コンテンツを通して見識を広げるためのものなんじゃないかな。バリアフリーとかダイバーシティと一緒で、言葉だけがひとり歩きしてしまうことの懸念はありますが、やっぱり大きい枠組みは必要なものだと思います。こういう考えのもとにやっていますっていうのは打ち出すべきだし、みんなそれぞれ違って良いんだということを根底に置きつつ、やっぱりクリエイションをするためには、一対一で個性の本質に向き合ってやっていく作業が必要。そしてそのやり方は十人十色なんだってことを改めて思い知りましたね。今回はまだ点にすぎないので、「THEATRE for ALL」が続いていくことで点が線になってほしいし、そのためにはまた協力して一緒にやっていきたいなと思いますよ。蓮沼 「for ALL」とは、様々な心や身体を持った方々への綺麗事でもなければ、自分のためだけの物事でもなくて、常に相手のことを思い、考えて何か行動を起こす、ということだと感じています。自分の創造のために、という考えが20世紀的であって今までは良しとされていたと思います。でも、それは裏にはビジネスや経済などと結びついていたから成り立っていた部分があって、ファッションも資本主義との関係は密接です。いつまでも変化しないで、未だにそのシステムを続けていていいのかな、と感じてしまうジャンルについては、無意識的だったことをもっと意識的に考えていかなければいけない。どんどん新しい発想を取り入れることは絶対に必要です。このプロジェクトに参加することで、そのためのきっかけはすでに生まれているんだということを実感できましたね。
True Colors FASHIONドキュメンタリー映像「対話する衣服」-6組の“当事者”との葛藤
Photo by 中村寛史Text by 三木邦洋
PROFILE
河合宏樹
ドキュメンタリー監督学生時代から自主映画を制作。東日本大震災以降は、ミュージシャンやパフォーマーらに焦点を当てた撮影を続けた。2014年に古川日出男らが被災地を中心に上演した朗読劇「銀河鉄道の夜」の活動に密着したドキュメンタリー作品『ほんとうのうた~朗読劇「銀河鉄道の夜」を追って~』を発表。2016年、七尾旅人が戦死自衛官に扮した初のライブ映像作品『兵士 A』を監督した。2017年には飴屋法水と山下澄人の初タッグ作品『コルバトントリ、』の公演を映像化。2020年2月に“ろう”の写真家、齋藤陽道の子育てを通じコミュニケーションのあり方にフォーカスした「うたのはじまり」を発表した。Twitter|Instagram|HP|『うたのはじまり』公式HP
蓮沼執太
1983年、東京都生まれ。蓮沼執太フィルを組織して国内外でのコンサート公演をはじめ、映画、演劇、などでの制作多数。また、映像、 サウンド、立体、インスタレーションを発表し、個展形式での展覧会を活発に行っている。主な個展に『 ~ ing』(資生堂ギャラリー 2018)など。第69回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。Twitter|Instagram|HP
INFORMATION
『True Colors FASHION ドキュメンタリー映像「対話する衣服」-6組の“当事者”との葛藤-』
【日本語音声ガイド版】【日本語字幕版】2021年3月5日(金)公開サイト |バリアフリーなオンライン劇場「THEATRE for ALL」より無料配信(https://theatreforall.net/)【英語字幕】2021年3月16日(火)料金:無料公開サイト:THEATRE for ALLデザイナー:市川秀樹/斎藤幸樹/SiThuAung/タキカワサリ/田畑大地/八木華モデル:アオイヤマダ/葦原海/大前光市/カイト/須川まきこ/ちびもえこ/プランナー・アドバイザー:山縣良和(ここのがっこう)キャスティング:Oi-chan写真・構成:LILY SHU音楽:蓮沼執太音源協力:アオイヤマダエンジニア:葛西敏彦(studio ATLIO)撮影:渡辺俊介/近江浩之ドキュメンタリー監督:河合宏樹Instagram|Twitter|Facebook|YouTube|note|HPTHEATRE for ALL
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