7月26日(金)、27日(土)、28日(日)に新潟県湯沢町・苗場スキー場で開催される<FUJI ROCK FESTIVAL’24>(以下、フジロック’24)。
フジロックが苗場で開催されるようになってから25年目となる今年は、SZA、クラフトワーク、ノエル・ギャラガーをヘッドライナーに迎え、渋さ知らずオーケストラやくるり、東京スカパラダイスオーケストラなどフジロックに欠かせない面々から、CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUINやケニア・グレースといった新進気鋭のアーティストまで、幅広くもフジロックらしいラインナップとなっている。
地域活性化への貢献はもちろんのこと、「世界一クリーンな音楽フェス」を掲げてゴミのリサイクルや清掃活動などを徹底し、美しい自然環境を保護しながら徐々にステージやキッズエリア、フードコートなどを充実してきたフジロックは、今や世界を代表する野外音楽フェスの一つである。本稿では、そんなフジロックの私的ベストアクトを5組チョイスしてみた。
映像と演奏が完璧にシンクロした、まるでアミューズメントパークのようなステージCornelius2002/WHITE STAGE
僕が初めてフジロックを体験したのは2002年だった。3日目は朝からほとんどホワイトステージにへばりつき、菊地成孔率いるDC/PRG(デートコース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデン)から始まり四人囃子やスーパーカーなど、今となっては「超」が付くレジェンドのパフォーマンスを炎天下の中で堪能しまくっていた。ゴメスの演奏が終わる頃にはあたりもすっかり暗くなり、いよいよCorneliusの登場だ。緻密なコラージュポップ『FANTASMA』から一転、ソリッドでミニマルな4thアルバム『Point』によって当時新境地を切り拓いたばかりの彼を一目見ようと、多くのオーディエンスが駆けつけていた。巨大スクリーンに映し出されるシュールで遊び心たっぷりの映像と、小山田圭吾率いるバンドメンバーたちの演奏が完璧にシンクロしたパフォーマンスに終始夢見心地。終演後、驚きと喜びで目をキラキラさせた人たちが「まるでディズニーランドにいるみたいだったよ」と口々に語り合っていたのが印象的だった。
白昼のグリーンステージで繰り広げられる、静謐でミニマルなサウンドスケープVincent Gallo2003/GREEN STAGE
When Vincent Gallo自身が監督・主演・美術・音楽を担当した自伝的な映画『バッファロー'66』(1998年)で脚光を浴びた、俳優のヴィンセント・ギャロ。オウテカやボーズ・オブ・カナダ、エイフェックス・ツインらを擁する名門〈ワープ・レコーズ〉よりリリースされた、初のソロ作『When』を苗場で実現した初の来日公演である。実機のメロトロンやレスリースピーカーなど、アルバムでも使用されたビンテージ機材を山のようにステージに積み上げ、その静謐でミニマルなサウンドスケープをほぼ完璧に再現してみせた……のだが、白昼のグリーンステージで観るには少々ハードルが高かった模様。いつもより広く感じる会場の最前を陣取り、篩(ふるい)にかけられた強者たちと共に、超濃厚な「ギャロ・ワールド」を思う存分堪能したのだった。
単なる懐古的な再結成では決してない、3人の「気概」をひしひしと感じた一夜Yellow Magic Orchestra2011/GREEN STAGE
まさかフジロックでイエロー・マジック・オーケストラのライブを観る日が来るとは夢にも思わなかった。リーダーの細野晴臣が、今は亡き坂本龍一、高橋幸宏と共に「イエロー・マジック・オーケストラ」名義の活動を再び始めたのが2000年代後半。
10分を超えるフィードバックノイズが苗場に降り注いだ「伝説」のステージMy Bloody Valentine2008/GREEN STAGE

ロック史に残る不朽の名盤『Loveless』のリリースから17年の歳月を経てマイ・ブラッディ・ヴァレンタインが再始動、グリーンステージ初日のトリを飾った。実はその2ヶ月ほど前、ロンドンで開催された彼らライブへ弾丸で行き、一足先にあの怒涛のサウンドを浴びてきてはいたのだが、やはり苗場に降臨するとなると話は別。これまで何度も新作発表や再始動の噂が流れては消え、流れては消え……を繰り返してきた彼らだけに、本当に姿を現すのか固唾を呑んで見守るばかりだった(PAエリアにはボビー・ギレスピーの姿も)。そしてついに放たれたのは、まるでタイムカプセルを掘り起こしたような、90年代当時と全く変わらないサウンドスケープ。否、機材の進化によって当時よりも奥行きと広がりのあるシューゲイズギターが、まるで洪水のように会場を埋め尽くす。最後は“You Made Me Realise”の10分を超えるフィードバックノイズを解き放ち、彼らはフジロックの新たな伝説となった。
プログレッシブでありながら、その音一つ一つに強烈な必然性を感じたパフォーマンスCero2018/WHITE STAGE

前作『Obscure Ride』で大々的に導入したポリリズムを更に押し進め、アフロビートだけでなく南米音楽のエッセンスをも取り込んだ快作『POLY LIFE MULTI SOUL』をリリースしたばかりのCero。同年6月に開催されたツアーファイナルを目撃し、その強烈な余韻に囚われたままだった僕にとって、彼らのライブを観るのがこの年のフジロックの大きな目的の一つだった。グリーンステージのボブ・ディラン&ヒズ・バンドが終わるや否や、猛ダッシュでホワイトステージへ。総勢8名による演奏は、わずか1ヶ月半前のステージよりもさらに磨きがかかり、ドラムとベースが織りなす強烈なグルーヴに躍動感あふれるパーカッション、幾何学的な男女混成コーラスが有機的に混じり合う。“魚の骨 鳥の羽根”や“レテの子”、“Buzzle Bee Ride”などで繰り出される複雑怪奇なポリリズムや変拍子に身を委ねていると、頭で「理解する」間もなくひたすら「楽しい!」という感情で全身の細胞が沸き立つ。
Text by 黒田隆憲
FUJI ROCK FESTIVAL’24:UPDATED LINE UP!
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