連日、超・大盛況の賑わいとなっている「EXPO 2025 大阪・関西万博」。その中でも<ハイジと共に、テクノロジーの頂へ>をコンセプトに掲げるスイスパビリオンでは、アーティストの江原彩子が、グローバル企業・ネスレの未来に向けた活動そのものをジェネレーティブアートで表現した映像作品『A Taste of Good for Tomorrow』が展示されている。
CROSS TALK江原彩⼦×畠⼭地平×安河内秀太
サステナビリティへの思いを音楽的に解釈して映像と共に表現
──今回、どういう経緯があって3人でライブを行うことになったんですか?江原彩⼦(以下、江原) まず、私が制作したネスレさんの映像作品があって、その映像を使用してライブパフォーマンスを行わないか、という話をいただいたことが前提にあります。(安河内)秀太には、これまでに色んなプロジェクトで音楽を作ってもらっている経緯もあって、クリエイティブの面で絶大な信頼があり、ライブに参加してもらうことになりました。(畠⼭)地平さんのことは、秀太からも話を聞いていて、何年も前から存じ上げていたので、せっかくなら今までご一緒したことのない方と一緒にパフォーマンスをしようと思ってお願いさせていただいたんです。
──江原さんと安河内さんの繋がりがあり、そこに畠山さんがジョインされた形だったんですね。では、安河内さんと畠山さんはどのような関係なのでしょうか?畠⼭地平(以下、畠山) 安河内くんと出会ったのはコロナ禍前くらいですね。江原 もともと秀太と地平さんはセッションしていたんですよね?畠⼭ そう。お互いにサッカー観戦が趣味で、2、3年前のUEFAチャンピオンズリーグの決勝を一緒に観ることになり。
安河内 VJ映像の最後は光がキラキラしている表現だったので、そのイメージに合わせて、地平さんと2人でサウンドを構築していったんです。僕らはフィールドレコーディングも好きなので、音楽制作という面において自然の力が必要なんです。なので、ネスレさんのサステナビリティや自然に対する取り組みに対して、純粋に共感できる部分がありました。今は当たり前に享受しているものですけど、それがずっと続くとは限らないわけなので、感謝して大事にしなくてはいけないと、今回のライブを通じて改めて思いました。江原 ライブではスイスパビリオンに展示している映像作品の延長線にある世界観を提示しているのですが、音楽に関しては私からは詳細なリクエストはすることなく、信用しているお2人にお任せしていた形です。
自然と向き合うことは表現するうえで必要不可欠
──ネスレが掲げるサステナビリティへの考え方が映像や音楽制作の念頭にあり、また、フィールドレコーディングのお話もありましたが、改めて、サステナビリティに対してどう思いますか?安河内 自然というのはとても完成されているもので、知れば知るほどに人間の力で太刀打ちできるようなものではないというか。圧倒される部分があるんですよね。そうやって長い年月をかけて完成されたものなので、ありがたみを持って大切にしなくてはいけないと強く感じます。私は湘南出身で、海で遊んだり、波打ち際の音を聞いて育ったんですけど、東京に来ると自然が少なく窮屈だなと感じることも多いので、やはり自分には自然が必要なんだと感じますね。地平さんも制作するにあたってそう思ったりすることはないですか?畠山 いや、本当に思うよ。最近は自然を体感した方が絶対にいいと思って、意識的に山登りしたり海に行ったりすることも多くて。よく江戸時代って完璧にリサイクルが成立していたって言われるじゃないですか。昔の日本は人と自然が理想的な形で回っていたのかもしれない。
──最後に今回の大阪・関西万博について、気に入っている場所など、おすすめのところを教えてください。安河内 各パビリオンはこれから回ろうと思っているんですけど、会場の雰囲気はやはりすごいですね。非日常が味わえて海外に来ているような感覚になります。散歩するだけでも楽しめると思いますよ。畠山 ちょうど台風が近づいていて、大きな雲に夕陽が重なって壮大な景色が見れたんですけど、素晴らしかったですね。景色を楽しみながら散策するのもおすすめです。僕が特に好きなのは大屋根リング。あのリングの上で景色を見ながら歩くのはすごくよかったです。江原 万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」ということですが、全世界の人たちが、同じテーマについて考えて未来のことを思う機会って、今後もそうそうないことだと思うんです。この万博自体がすごく貴重なものだと思いますし、そうしたサステナビリティに対する取り組みも押し付けがましい形ではなく、エンターテイメントとして子供でも楽しめるような展示になっているのがすごくいいですね。
Interview&Text:Ryo Tajima(DMRT)Photo:Peso
ARTIST INFORMATION
江原彩子
東京を拠点に活動するアーティスト。近年ではAIとジェネラティブアートを組み合わせた作品を中心に発表。作品制作を通して、世界中をキラキラしたものやワクワクする感情で溢れさせることを活動目的に、一つのソフトウェアや表現に限定せず、キラキラとした表現を追求するために様々な技術を研究し続けている。
畠⼭地平
1978年⽣まれ、神奈川県出⾝、東京在住の⾳楽家。2006年にKrankyより1stソロ・アルバム『Minima Moralia」を発表。以降、デジタル&アナログ機材を駆使したサウンドで構築するアンビエント・ドローン作品を世界中のレーベルからリリース。
安河内秀太
東京を拠点に活動するサウンドアーティスト。多彩な楽器や⾳響素材を組み合わせ、繊細で奥⾏きのあるアンビエントサウンドを創り出す。これまでヨーロッパや⽇本のレーベルからアルバムをリリースし、世界各地のアーティストとのコラボレーションやリミックス、コンピレーションへの参加も数多く⾏っている。
大阪・関西万博 スイスパビリオン
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