15万人からグランプリに輝くも、わずか2年でオファーがゼロになり、22歳で事務所を追われた女優・中山来未が、フリーになって気付かされたこと

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昨年秋に行われた第38回東京国際映画祭で上映されて話題を呼んだ映画『藍反射』(らんはんしゃ)が、3月6日よりヒューマントラストシネマ渋谷にて公開され、連日満席を記録している。20代未婚女性が突然排卵障害と診断され、身体の悩みを誰にも相談できないまま周囲との関係に悩み、自分を見つめ直していく姿を描いた本作。

主人公・深山はるか(道田里羽)の後輩、長沢葉奈役で出演する中山来未(なかやま くるみ)は、2015年に放送されたオーディションリアリティ番組『ザ・ラストヒロイン~ワルキューレの審判~』(東海テレビ制作)で、15万人の中からラストヒロイン(最終合格者)に輝いたことで脚光を集めた。30歳の節目を迎え、「役者としての目標の一つだった」と話す東京国際映画祭の舞台を踏んだ彼女の今に迫った。



――今年30歳の節目を迎えた中山来未さんのキャリアについてお聞きしていきたいと思いますが、幼少期はどのようなお子さんだったのですか?



北海道札幌市で生まれ育った私の幼少期は、とにかく活発で、あまり落ち着きがない子供でした。小学生の時に、家のポストにダンススクールのチラシが入っていたのを見つけてHIOPHOPダンスに打ち込むようになりましたが、勉強はあまり得意ではなかったように思います。勉強はやれば多分できるのに、やらずにきてしまったタイプです(苦笑)。



――なぜ芸能界を目指そうと思われたのですか?



14歳から始めたダンスに加えて歌にも興味を持つようになり、「西野カナさんのようなアーティストになりたい」との思いから、札幌にある養成所(アクターズスタジオ北海道本部校)に入ることにしたんです。



通い始めるようになってからは、学校を終えるとダンスや歌のレッスンに通いつつ、札幌の商業施設や養成所のスタジオで、毎月2回行われる養成所の主催ライブに参加して、歌の表現に磨きをかけていきました。



――レッスンに励みつつ、高校を卒業した後は看護学科のある大学に進まれました。



姉が看護師だったことや、両親に日頃から「何か資格を取ったら?」と言われていたことが一番の理由なんですが……。姉が通う学校の学園祭に遊びに行った時に、人形の赤ちゃんをお風呂に入れる体験をさせてもらったことがあって。その時に人形の赤ちゃんに対して温かい気持ちが込み上げてきて、それが忘れられなかったことも、進路選びの決め手になりました。



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――大学は一般受験で入学されたんですか?



そうです。

私は文系科目を選択し、得意な英語と生物、国語で受験に臨みました。センター試験や、色々な学校を受けたんですけど、なかなか思うような結果が残せず。最後に受けて合格した大学の看護学科に進むことに決めました。学校の勉強は楽しくて、友達も素敵な子がたくさんいて、単位も取っていたんですけど、19歳でラストヒロインに選んでいただいてから上京したので本州の看護大学に編入先がなく、泣く泣く退学しました。



――『ラストヒロイン』のオーディションを受けようと思った理由は?



私が通っていた養成所で、初期の頃から私のことを気にかけてくださっていたSony Musicのスタッフさんが勧めてくださったのがきっかけです。



――北海道を離れることに関して、不安はありませんでしたか?



不安よりも東京に行けるきっかけができた!と思いました。私の養成所は、過去に西島隆弘(AAA)さん、三浦春馬さん、三浦透子さんなどを輩出していて。当時の私は、ライバルが上京することにとても敏感で、「自分も東京でチャンスを掴みたい」、「先輩方のように活躍したい」という思いを強く持っていました。なので、(番組の収録が行われる)東京に行けることがわかった時は本当に嬉しかったです。



――『ラストヒロイン』は、オーディションの最終選考に残った20名に厳しいレッスンを課し、不適格と診断されたら退学を言い渡される流れで番組は進行して行きました。精神的に辛かったことはありましたか?



ご存じの通り、ズバズバと辛口で指摘を受けるのが番組の醍醐味でもあったのですが、収録を終えて自宅でオンエアを父とみていた時にさすがに父も先生たちの辛口審査に緊張して固まってしまっていました。収録とオンエアが並行していたのでプレッシャーがすごかったです。

その一方でオーディションに受かり、東京で活躍している自分の姿をイメージしながら、過ごすことを心がけていました。



テレビの「ネタバレ」を防ぐ必要があったので、家族や友人に苦しい胸の内を打ち明けるようなこともなかなかできませんでしたし、悩む暇もなく課題が次々とやってきて、それに向き合うしかない日々を過ごしていました。



楽屋はいつも静かでどことなくピリピリとした空気が漂っていて、あまり誰かと話すような雰囲気ではなかったですが、そんな状況の中でも、私は「絶対にオーディション番組で生き残り続けるんだ」という思いで、苦しい日々を乗り切りました。



――厳しい試練を乗り越えた中山さんは、見事にグランプリを獲得されました。



15万人くらいの方から書類が送られてきたそうなので、まずは「私でいいのかな?」という戸惑いや、「自分はこれからどうなっていくんだろうか?」という不安の方が大きかったように思います。



――オーディションを勝ち抜く秘訣はありますか?



人間は極限の緊張状態を味わうと、自分自身のことを、俯瞰したスローモーションVTRのような目線で見ることができるようになるので、まずはこの“ゾーン”に到達することが大切だと思います。あと私は緊張してしまうと挙動不審になってしまうのでオーディション前は瞑想して集中することも大切にしています。オーディションは原則1回きりの勝負なので、『ラストヒロイン』で培った経験は今でも役に立っているように思います。



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画像1: 筆者撮影

筆者撮影



――『ラストヒロイン』の称号を手にした中山さんは、昼ドラマ『癒し屋キリコの約束』(2015年8月)で女優デビューを果たします。いつ頃から演技に興味をお持ちになられたのでしょうか?



『ラストヒロイン』への参加が、演技に興味を持ち、女優としてやって行きたいという思いが芽生えるきっかけになりました。



ただ、『癒し屋キリコの約束』に出演させていただいた頃は、まだまだ芝居について何も理解できていなかったこともあり、何度撮影に臨んでもなかなかOKが出なかったんです。



星田監督から「どういう気持ちで演じているの?」と問い詰められたこともあって、その度に気持ちが落ち込んでいたんですけど、一度ものすごく役を追求して気持ちを入れて臨んだシーンで、初めて1回でOKをもらうことができて、その時に初めて「芝居をする」ことが理解できたように思えたんです。

当時の嬉しかった感覚がずっと忘れられなくて、今も女優を続けているのかなと思っています。



――『ラストヒロイン』以降はどのような活動をされていたんですか?



実は、『ラストヒロイン』と、その流れで出演させていただいた『癒し屋キリコの約束』以降は、ほとんどめぼしい活動ができていなくて。「私はこのままきっと忘れられていくんだな…」などと、不安や焦りを感じずにはいられませんでした。



なかなか結果が残せぬまま、1年半ほどの時が流れた22歳の時、事務所に呼び出されて…。



スタッフさんに「これからどうしたい?」と尋ねられたんですよ。



私は「お芝居をやって、映画に出たいです」と答えると、今度は「映画って、どうやって作られると思う?」と投げかけられて。なかなか思うように答えられなかった私を見兼ねると、



「じゃあ、1週間あげるから、半年後に映画に出る方法を考えてきてほしい」と言われて、その日はお開きになりました。



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画像2: 筆者撮影

筆者撮影



――その1週間はどう過ごされたのですか?



自分なりに色々考えたんですけど、思うような答えは見つからなくて。1週間後に事務所に向かうと、そのスタッフさんは私にこう問いかけてきたんです。



「映画のキャスティングって、いつ頃に決まるか知っている?大体公開の1年くらい前には決まっているよね?中山さんは『半年後に映画に出たい』と話していたけど、どこでチャンスを掴むつもりなの?無理じゃない?」と投げかけられると、その流れで契約終了を言い渡されて。その帰り際に、事務所があった市ヶ谷の交差点で、人目を憚らずに大泣きして、初めての挫折を味わいました。



――その後はどのように女優としての活路を見出していくのでしょうか?



一度気持ちを落ち着けた後、今後のキャリアについてじっくり考えてみることにしたんです。



「芝居をやるためには、多くの人に知られている必要があるな」と思い、ミクチャでファンの皆さんと交流を深めたり、小劇場の舞台で演技を磨いたりして、とにかく積極的な発信を心がけてみたんです。その中で、当時の事務所の社長さんが『あいのり』のオーディションに声をかけてくれて、ひとまず挑戦してみることにしたんです。



――どのような雰囲気だったのですか?



『あいのり』のオーディションは、これまでに経験したことがない雰囲気で、参加者の皆さんが「とにかく結婚したいです!」と熱い思いを語ったり、気持ちが強すぎるあまり涙を流す場面も珍しくありませんでした。



そんな方々が揃う中、私は「有名になってお芝居をするために参加させていただきました」と正直に思いを伝えると、「中山さんのそのキャラクターは面白いから」と言って、今度は『恋んトス』に呼んでくださって、番組に出演させていただくことが決まりました。(くるみん名義)



一人になってみて、「何かを始めるには、自分自身の気持ちや行動が大切なんだ」と気付かされて。これまでは、マネージャーさんが仕事を見つけてきてくれるんだと、どこか勘違いしてしまっていたところがあったのかなと。市ヶ谷で流した22歳の涙を乗り越えての今があると思っています。



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写真:TIFF



映画『藍反射』
出演:道田里羽 滝澤エリカ / 井上拓哉 平川はる香 中山来未 定本楓馬 野上天翔 幹てつや(かりすま~ず) 中原シホ 逢坂由委子 大貝瑠美華 大木 空(アバンティーズ) 美桜子 牧海斗 大塚菜々穂 村上りおん 土屋直子 小沼朝生 坂田遥香 大川 大 橋本紗也加 関口 蒼 小沢まゆ 二田絢乃 村田啓治 小島彩乃 岡本詩織 原恭士郎 藤 主税 千綿勇平 蔦 陽子 AOI(G.U.M) 田村魁成 しゅんしゅんクリニックP 岡本宗史 元木大介 大高洋夫 熊谷真実



監督・脚本・編集: 野本梢 企画・プロデュース: 千種ゆり子
エグゼクティブプロデューサー :
稲村久美子



映画『藍反射』上映スケジュール



東京:キネカ大森 2026年3月13日(金)~26日(木)
大阪:テアトル梅田 2026年4月3日(金)~9日(木)
青森:シネマディクト 2026年4月11日(土)~17日(金)
山形:鶴岡まちなかキネマ 2026年4月11日(土)~24日(金)



シネマスコーレ(名古屋)、元町映画館(神戸)も上映が決定、他全国順次公開。



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