今年3月20日、ドイツの世界的強豪バイエルン・ミュンヘンは、中国人選手のクオ・チャシェンが亡くなったことを悼む声明を出した。

18歳だった彼は2023年にバイエルンのワールドチームに選ばれたことがあり、中国のユース代表選手でもあった。

中国の北京国安ユースに所属していたクオは、今年2月のスペイン遠征中に負傷。試合中に相手の膝が顔面を直撃すると意識を失った。

マドリッドの病院で脳死と判定されるも、家族は中国の病院での治療を希望。その後、母国へ移送されて治療を受けていたが、回復が望めないとして、19歳の誕生日前日に延命処置を打ち切る決断が下された。

『hntv』などによれば、兄弟は「バイタルサインを維持できない、家族に判断を委ねたい(と告げられた)」「救護の際にできた体に残る痣を見るのが耐えられない」と語っていたという。

クオは幼いころから文武両道で、両親は生活は苦しかったものの、息子への投資を惜しまなかったそう。

父親は息子の夢を叶えるために年間5万~6万元(101~122万円)ほどのサッカークラブ授業料も負担してきたという。その後、クオは北京国安ユースチームに加入し、バイエルンからも高い評価を得るまでに成長。だが、スペイン遠征で悲劇に見舞われた。

また、治療費をめぐって家族と北京サッカー協会と北京国安との問題も起きる事態になったようだ。

北京サッカー協会は当初、治療について「全責任を負う」と約束していたが、その後、態度が一変。現地での治療費と中国への移送費のみを負担し、中国帰国後の治療費は双方が負担し、賠償については後日協議すると立場を変えたという。

クオの兄弟によれば、北京サッカー協会は選手たちについて通常の旅行保険だけ加入しており、スポーツ傷害保険には加入させていなかったそう。

サッカーはリスクの高いスポーツであり、個人がその結果に耐えなければならないと考える人もいるため、これも家族を凍りつかせたとも。

クオは186cmの体躯を持ち、バイエルンのスカウト陣でさえ、「フィジカルと戦術感覚の両方を備えており、未来は無限」と評していたほどの選手たったそう。「親善試合でその夢が永遠に閉ざされるとは誰が想像しただろうか」とも伝えられている。

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