名門スポルティングの元スカウトも熱い視線、2025年JPFAトライアウトに表れたポジティブな変化「チャンスを広げてあげなきゃいけない」

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日本プロサッカー選手会(JPFA)が主催する『JPFAトライアウト』が12月17日と18日に大阪府内で開催された。



今季契約満了を言い渡されたJリーガーたちが二日間で計60名集まって、ピッチ上でスカウトにアピールした。



2002年から開催され(Jリーグ合同トライアウトも含む)、今年で24年目を迎えた中、2025年のトライアウトではポジティブな変化があった。



(取材・文・写真:浅野凜太郎)



海外のクラブからのスカウトが増加



Jリーグの各クラブを契約満了になった選手が参加するトライアウト。



選手たちは来季の契約を勝ち取るために背水の陣で臨むが、Jリーグクラブへの加入は狭き門となっており、JFL(日本フットボールリーグ)や地域リーグに進む選手をはじめ、引退を選ぶ者も少なくない。



そんな中、今年のトライアウトでは変化があった。



名門スポルティングの元スカウトも熱い視線、2025年JPFAトライアウトに表れたポジティブな変化「チャンスを広げてあげなきゃいけない」
画像: 選手たちは急造チームの中でスカウトにアピールした(写真:浅野凜太郎)

選手たちは急造チームの中でスカウトにアピールした(写真:浅野凜太郎)



例年まではトライアウトを視察に来るスカウトのほとんどが日本のクラブからだったが、今年はタイや韓国、ポルトガルをはじめとする海外クラブからのスカウトが複数名訪れていた。



JPFAの関係者は「いままでは海外のスカウトの方はほぼゼロでした」と、新たな試みについて語った。



「きょうもそうでしたが、Jリーグ以外のカテゴリーでスカウトをやられている方が多くて来ていて、進路先もJリーグ以外に決まる選手が多い。その中で選手たちには、アジアも含めた行き先、チャンスを広げてあげなきゃいけないと思いました。



いままで海外の方はトライアウトのことを知らなかったと思いますし、そもそも来ていいかどうかも知らなかった。でも今回のように案内を出してみたことで、アジアやヨーロッパの方も、『Jリーグの選手を獲得してみよう』と思うじゃないですか」



名門スポルティングの元スカウトも熱い視線、2025年JPFAトライアウトに表れたポジティブな変化「チャンスを広げてあげなきゃいけない」
画像: トライアウトを見守るスカウトやクラブ関係者(写真:浅野凜太郎)

トライアウトを見守るスカウトやクラブ関係者(写真:浅野凜太郎)



JPFAとJリーグ、各クラブが連携して、海外のクラブやスカウトに対して英文でトライアウトの開催を知らせた。



当日の会場には、昨年に元日本代表の中村憲剛氏が『S級コーチ養成講習会』のプログラムに含まれる海外研修として訪れたカナダのパシフィックFCや、韓国の城南FCのスカウトの姿も。昨年まではほとんど見られなかった海外クラブのスカウトが、JPFAトライアウトに熱い視線を送った。



17日と18日の両日で視察にやって来ていた、ポルトガル1部の名門であるスポルティングCPで18年間スカウトを務めていたアキール・モマデ氏は、日本人選手の持つポテンシャルを高く評価した。



名門スポルティングの元スカウトも熱い視線、2025年JPFAトライアウトに表れたポジティブな変化「チャンスを広げてあげなきゃいけない」
画像: スポルティングでスカウトを務めたモマデ氏(写真:浅野凜太郎)

スポルティングでスカウトを務めたモマデ氏(写真:浅野凜太郎)



「今回は知人をサポートするために来たのですが、レベルが高くて良かったです。日本の市場はすごくいい状況で、若い選手を探しています。



私たちが求めるのは、正確にボールを扱える技術やクレバーさ、あとはプレーの強度が高い選手です。世界的にフットボールのインテンシティは高くなっているので、そこは強く求めていきたいところですね。



日本はウィンガーやミッドフィルダーにとてもいい選手が多い。日本代表の守田英正(スポルティング所属)も代表的な例です。とても頭が良くて、技術も優れていて、アカデミーからも尊敬されています」



来季のシーズン移行によってスカウト増加か



実際に、今回のトライアウトに参加した選手からは海外移籍を望む声も多く聞かれた。



J1柏レイソルを契約満了となり、18日の部に参加した21歳のFWオウイエ・ウイリアムもその一人だ。



「こんなところでは終われない。どのチームに行っても一年で絶対に活躍して、海外に行くという自分の夢があります」



また、J3奈良クラブを契約満了になった33歳のDF都並優太も「未知なチャレンジとしていい機会なので、(海外にも)行ってみたい」と、選手側も今回の取り組みに対してポジティブな意見だった。



名門スポルティングの元スカウトも熱い視線、2025年JPFAトライアウトに表れたポジティブな変化「チャンスを広げてあげなきゃいけない」
画像: 紅白戦に出場したオウイエ・ウイリアム(中央左、写真:浅野凜太郎)

紅白戦に出場したオウイエ・ウイリアム(中央左、写真:浅野凜太郎)



来年2月から開幕する明治安田Jリーグ百年構想リーグを経て、同年8月からは欧州と同じく秋春制の2026-2027シーズンとなるJリーグ。



雪国地域の負担など、いくつかの課題も残されているが、欧州の移籍市場が開くタイミングでJリーグもシーズンオフを迎えるため、海外移籍を望む選手にとっては追い風になるだろう。



JPFAの関係者は、Jリーグがシーズンを移行する今回のタイミングで海外からのスカウトを増やせた意義を説明した。



「やっぱり海外のクラブとしては、シーズン中に選手を獲得するのは難しいみたいです。興味はあったとしても、予算をかけて日本まで来て、『誰もいい選手がいませんでした』は許されない。



でも、シーズンがオフになって編成に力を注げるタイミングになれば、日本の若い選手に声をかけて、練習生として二週間くらい参加してもらうこともできる。それはシーズン中だと、なかなかできないことだったと思います。だから、シーズンが移行して日本とヨーロッパのオフが一緒になったタイミングで、『ぜひトライアウトに来たい』という方も多かったので、今後さらに海外のクラブのスカウトは増えてくると思います」



名門スポルティングの元スカウトも熱い視線、2025年JPFAトライアウトに表れたポジティブな変化「チャンスを広げてあげなきゃいけない」
画像: トライアウトの説明を聞く選手たち(写真:浅野凜太郎)

トライアウトの説明を聞く選手たち(写真:浅野凜太郎)



JPFAトライアウトに新たな価値が生まれ始めた。



これまでは、現役続行を目指す選手たちの最後の砦としての役割が大きく、選手たちの多くは同トライアウトに対してネガティブなイメージを抱いていた。



逆輸入でJリーガーになった日本代表選手たち



しかし今後は海外クラブへのアピールの場としても機能することで、より選手たちの未来を広げるポジティブな場になるかもしれない。

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