
[J2第13節モンテディオ山形0-1北海道コンサドーレ札幌、5月3日、NDソフトスタジアム山形]
山形は0-1で札幌に惜敗し、4試合白星なしとトンネルから脱出できなかった。前半は縦への早いサッカーで相手を押し込む場面もあったが、フィニッシュに精彩を欠いた。
この日先発出場したMF土居聖真(しょうま)主将は相手ブロックを切り裂くパスとすり抜けるようなドリブルで攻撃のアクセントとなったが、古巣J1鹿島アントラーズで先輩の岩政大樹監督との対決はほろ苦いものとなった。
目を引く優雅さと技術を見せたが
土居主将のプレーは目を引く優雅さと優れた技術が光った。
相手を手玉に取るように背番号88はパスを前線へ通し、闘牛士のように相手のプレスをいなすドリブルで昨季J1にいた札幌を翻ろうした。鋭く切れ味があるパスは、相手が身を投げ出しても届かず、前線にボールを供給し続けた。
「前半は主導権を握って、ピンチらしいピンチも1本ぐらいだったかなと思います。ここ数試合、きょうだけじゃなくて、いいサッカーをしています。チャンスをたくさん作っているところで終わってしまっているのが、現状の順位なのかな」と肩を落とした。
相手のプレスを無効化し、道を切り開くような鋭いパスを見せた土居(右はじ)前半は理想的な展開で相手を圧倒する局面もあった。ただ最後までチームの歯車は噛み合わず、ほしかったゴールはあと一歩のところで入らない。これで2試合連続の無得点試合となった。
キャプテンは「大事なときに決め切る力が誰がというより、チーム全体で(決定力不足)というところがいまの僕らに足りない部分かなと思います」と課題を絞り出しすように発した。
今季の山形は開幕3連敗とスタートダッシュに失敗。それでも第4、5節を連勝して息を吹き返したかのように見えたが、その勢いは続かなかった。イレブンは優れた実力者がそろっており、相手を圧倒する場面も見せているが、勝ち切れない状況が続いている。
2試合無得点とゴール欠乏症にかかっているチームに対して土居主将は「僕の個人的な意見ですけど、ボールを持った人よりもいい状態の人がいる場合もあって、 そこでもっといい選択ができるんじゃないかという。前節ベンチから見ていても、やっているときも、得点ができる可能性が高い選手を選べていたら。それが例えばその人はシュートを撃つことが悪いことではないんですけど、他にいい状態の人がいるんじゃないか、 逆にそこは撃って良かったんじゃないか。そのゴール前での判断は、もうちょっと冷静になれば改善して良くなるんじゃないかと僕は個人として思っています」と冷静にチームの懸念を洗い出した。
昨季は4位でJ1昇格プレーオフに進出するなど勝ち切る強さを見せただけに、キャプテンは巻き返しに向けて静かに闘志を燃やしている。
常勝軍団を支え合った先輩との対決
この日札幌を指揮した岩政監督は鹿島で共に戦った先輩であり、常勝軍団を長きに渡って支え合った仲だ。岩政監督が鹿島で指揮を執った際に、土居主将はトップチームのキャプテンを務めていた。
指揮官は「彼が選手時代から僕は先輩と後輩(の関係)です。その後、コーチ、監督としてもキャプテンを(土居に)任せました。

試合後に岩政監督と会話した土居主将は「(岩政監督が)『山形の現状はどう?元気か?』と話をしまして、お互い苦しい順位にいるので『お互い苦しいよね』という話をしました」と、先輩は後輩を最後まで優しく気遣っていたという。
選手、コーチ、監督として長い付き合いがある偉大な先輩に対して「(岩政監督が)現役時代も一緒にやらせてもらって、コーチ、監督としても指導していただいて、たくさん思い出があります。僕のサッカー経験を育ててくれた方なので、 きょうもプレーで見せれられたら良かったですけど。結果というところでは負けてしまいましたけど、アウェイに行ったときは頑張っている姿を見せて楽しみにできればと思います」と恩返しを誓った。
日本屈指の名門で主将を務めた男は、故郷のチームでキャプテンマークを巻いている。常勝軍団で育った土居主将は先輩たちから多くを学んできた。今度は背番号88が山形のイレブンに自身の経験を還元する。

「僕が見てきたキャプテンの先輩方は、言葉で縛りつけるようなキャプテンは1人もいなかったです。背中で、プレーで、ピッチで見せるというところが、ここぞというときに頼りになるというところを、(歴代の)キャプテンのみなさんがそうだった。自分も普段べらべらおしゃべりするよりも、みんなが苦しんでるとき、困ってるときに、ピッチ内外で僕の経験を伝えられればと思っています」とプレー、振る舞い、結果で仲間たちに伝える構えだ。
次節は6日午後2時にホームで大分トリニータと対戦する。
(取材・文 高橋アオ)