韓国の元サッカー監督の恐怖体験が同国で話題になっている。
2002年の日韓ワールドカップで韓国代表のアシスタントコーチを務め、2017年から2023年までベトナム代表の監督を務めたパク・ハンソ氏。
テレビ番組『Take Off Your Shoes』に出演した同氏は、ベトナム代表監督を務めていた時期に、誘拐されそうになった体験談を語った。
「ベトナム独立記念日に3泊4日の休暇を取って妻とカンボジア旅行に行ったんだ。ベトナムの空港に戻ったのは夜11時ごろだった。タクシーが見当たらず辺りを見回っていたら、若い男性が手を振って近づいてきた」と当時の状況を振り返った。
同氏は続けて「タクシーに乗った途端、まず音楽が妙だった。運転手がしきりに私の財布を見ていて、韓国ウォンとベトナムドンを交換しようと言い出した。おかしいと思ったよ」と、ただならぬ雰囲気を感じたという。
さらに「自宅までの道は知っていたが、突然運転手が右折して山道に入って行った。『なぜそっちに行くのか』と尋ねると、『オフィスへ行く』と言われた。『止まれ』と言っても、舗装されていない道を走り続けた」と恐怖の時間を回想した。
その後同氏は、空地のような場所に連れて行かれ、そこには10人ほどの男性がお茶を飲みながら待っていたという。
パク氏は「その中に自分を知っている人がいるかもしれない」と思い、車から降りた。
「誰かが『ミスター・パク?パク・ハンソ?』と話しかけてきた。すべては聞き取れなかったが、誰かが『早く行かせろ』と言ったみたいで、その後リーダー格の人物が来て、私と妻を車に乗せて帰らせた」と語った。
韓国の名将は「今では笑い話にできるが、当時は本当にありえないと思った」と胸をなでおろした。
最近、東南アジアで韓国人観光客を狙った犯罪が相次いでいることもあり、パク氏のこの体験談は注目を浴びている。
韓国メディア『朝鮮日報』は11日、韓国外交部の情報を引用してカンボジアにおける韓国人の拉致被害報告件数が急増している状況について伝えた。
同メディアによると、2022年から2023年までは年間10件から20件ほどだったが、昨年は220件、今年は1月から8月までの間に330件もの被害報告がされている。
今年8月には「カンボジア博覧会に行く」と言った韓国人大学生がカンボジアで暴行を受けて死亡した事件が発生。さらに先月、カンボジアの首都プノンペンで50代の韓国人男性が路上で誘拐されて拷問を受けたという事件も起きた。
こうした状況を受け、韓国外交部は10日にプノンペンに対する渡航レベルを「特別旅行注意報」に引き上げて「緊急の用事がない限りは渡航の中止、または延期してください。滞在中の方は十分に身の安全に注意してください」と勧告している。