ウインターカップ開幕!篠山×橋本×湊谷——2006表彰台&88年生まれ同級生が語る高校バスケ「あの冬」と今年の注目ポイント

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『SoftBank ウインターカップ2025令和7年度 第78回全国高等学校バスケットボール選手権大会』が開催中だ。高校バスケ冬の祭典として、日本バスケットボール界で最も注目を集めるこの大会は、数多くのBリーガーが歩んできた大舞台でもある。


今回、2006年大会で優勝した湊谷安玲久司朱(当時:洛南高校/元・横浜ビー・コルセアーズ/現・88 Basketballを運営する株式会社はちはち代表)、準優勝の篠山竜青(当時:北陸高校/現・川崎ブレイブサンダース)、3位の橋本竜馬(当時:福岡大学附属大濠高校/現・ベルテックス静岡)が集結した。
3人は同級生であり、これまでの経験を次世代へとつなぐ活動として「88 Basketball」を立ち上げたメンバーでもある。当時の思い出を振り返りながら、今冬に寄せる期待について話を聞いた。



「洛南最後のウインターカップで優勝したことが一番の思い出」(湊谷)



――ウインターカップの思い出で、一番印象に残っていることは何でしょうか。



湊谷:僕は洛南で、優勝したことが一番の思い出ですね。高校バスケ最後のウインターカップで勝ちました。今でもYouTubeを見ていると、たまにそのときの映像が出てきて、そこで思い出します。



橋本:僕は大濠の3年間で、ウインターカップに出られたのが1回だけだったんです。1年生と2年生のときは、福岡県大会の決勝で福岡第一に負けてしまって。3年生で初めて出場できたことが、すごく思い出深いですね。



ウインターカップ開幕!篠山×橋本×湊谷——2006表彰台&88年生まれ同級生が語る高校バスケ「あの冬」と今年の注目ポイント
画像: 高校選抜バスケ男子決勝 洛南―北陸 4年ぶり2度目の優勝を決め喜ぶ、主将・竹本(4)と湊谷(5)ら洛南の選手=東京体育館(2006年) 写真提供:共同通信社

高校選抜バスケ男子決勝 洛南―北陸 4年ぶり2度目の優勝を決め喜ぶ、主将・竹本(4)と湊谷(5)ら洛南の選手=東京体育館(2006年)

写真提供:共同通信社

――3年生のときに出た大会で印象に残っていることはありますか。



橋本:アレク(※)が本当にすごかったんですよ。大濠は夏のインターハイで洛南に負けて、ウインターカップでも勝てずに準決勝で敗退(80-90)。

東京体育館という大きな会場で負けたという記憶が残っています。
※湊谷の愛称。名前の「安玲久司朱(あれくしす)」に由来



篠山:僕も思い出といえば、やっぱりアレクさんにボコボコにやられたことですね……。高3のときは、何とか決勝戦までたどり着いたんですけど。



湊谷:2人とも、オレに気をつかってない(笑)?



橋本:いや、マジで無双だったんで。持てる力の8割ぐらいで、ボコボコにされたイメージだね。



篠山:いま思い出しても、恥ずかしかったですね。決勝まで進んで、あれだけたくさんのお客さんの前で20点差以上をつけられて(82-104)。言い方があれですけど、もう一方的な展開でした(苦笑)。アレクさん1人に40点も取られたんですよ。



湊谷:でも、インターハイのときは逆に 、洛南は北陸に2、30点差で負けているんですよ。



篠山:いやいや(笑)! 接戦でしたよ、アレクさん。



湊谷:え、そうだっけ(笑)?



篠山:一桁差の試合でした。決勝だったので、よく覚えています。それと、僕はウインターカップ期間中に電車にバッシュを忘れて焦ったのが思い出ですね(笑)。試合帰りに総武線の車内に忘れちゃって、夜こっそり宿舎を抜け出して千葉駅まで取りに行ったことは今でも忘れません。



ウインターカップ開幕!篠山×橋本×湊谷——2006表彰台&88年生まれ同級生が語る高校バスケ「あの冬」と今年の注目ポイント
画像: 高校選抜バスケ男子決勝 洛南―北陸 第3クオーター、3点シュートを決める洛南・湊谷(5)=東京体育館(2006年) 写真提供:共同通信社

高校選抜バスケ男子決勝 洛南―北陸 第3クオーター、3点シュートを決める洛南・湊谷(5)=東京体育館(2006年)

写真提供:共同通信社

「北陸高校時代は3年間バスケ漬け」(篠山)「大濠でもっとやっておけば」(橋本)



――高校3年間を振り返ると、皆さんにとってどんな時間でしたか。



湊谷:ほぼバスケットしかしていなかったですね。あとは遊びをちょっとだけ。でも、本当に洛南の3年間は、バスケットを自由にやらせてもらって楽しかった記憶しかないです。



篠山:僕も本当に3年間バスケ漬けでした。練習は週7で、休みはインターハイとウインターカップ後に3日間くらいあった帰省のときだけ。上下関係など大変な思い出もありましたけど、振り返ると「楽しかった」という気持ちが一番残っています。



橋本:僕は2人と逆ですね。高校生のとき思っていたのは、大濠は他校と比べると、そこまで練習がきつくなかったんです。

チームとして量をこなす、という感じではなくて。もちろん真剣にはやっていましたけどね。だからこそ、大事な試合で甘さが出て負けたんだと思いますし、2人は高校バスケ界でもスター選手でした。2人ともU18 日本代表で、ウインターカップではベスト5に選ばれていましたから。それに比べると、僕は選手として劣っていると感じていました。練習から力を出し切れてなかった。「もっとやっておけばよかった」という後悔が残る3年間でした。その思いから、大学進学ではバスケと向き合うために、少人数で厳しい練習と言われていた(当時の)青山学院大学を選びました。いまも現役としてプレーしていますが、高校時代の後悔を回収するために続けているとも言えますね。



「チームプレーが求められる分、怪物が出づらいというか」「昔の方が尖りがあったのかなと」



――お三方は1988年生まれの同級生で、これまでの経験を次世代につなぐ活動として、昨年「88 Basketball」を設立されました。その活動の一環として、福岡大学附属大濠高校の協力を得て、今年6月には「88 Special Camp × 福大大濠トロージャンズ」も開催しています。キャンプの対象は中学生でしたが、大濠高校の選手たちと接する機会もありました。いまの高校生たちと自分たちの時代を比べて、違いを感じましたか。



橋本:おそらく(片峯)聡太さん(福岡大学附属大濠高校バスケットボール部コーチ)も、僕と同じ気持ちで高校生たちを指導しているんじゃないかと思います。聡太さんは僕の1つ上の代でキャプテンを務めて、高3のインターハイで準優勝までされています。でも、その年のウインターカップには出られなかった。だからこそ当時の経験を生かして指導していきたいという思いもあると思います。大濠には能力の高い選手たちが多いので、彼らの将来も考えながら、向き合って指導をされていると思います。



湊谷:いまの高校生は、目指す目標自体が僕らの時代と変わったと思います。僕らのころは日本代表が最高到達点でしたけど、いまはNBAを目標にしている子も多い。あとは、YouTubeやSNSを通じて、バスケットボールを知ったり学んだりする手段が数多くあるじゃないですか。高校生たちを見ていると、ちょっとうらやましいなと思います。



篠山:本当にレベルは上がっていると思います。僕の時代と比べると、大人っぽいというか、いろいろな戦術やシステムがあって、オフェンスのセットプレーもたくさん使っている印象です。個々のスキルも高いですよね。



――いまの方が、うらやましいですか?



篠山:いや、メリットとデメリットがあると思っています。戦術やシステムが整理されると、チームとして戦うことがより求められる。その分、怪物が出づらいというか、アレクさんのように40点を取る選手がチームを引っ張って勝ち上がる光景は、よくも悪くも昔より少なくなる気がしますね。



湊谷:昔の方が、もっとシンプルだったよね。洛南で言えば、パス&ラン。パスして走る、が基本にあって、それで戦うだけ。いい意味で、細かな戦術やシステムをつくり込みすぎていなかった。だから僕の洛南の印象は「好きにやらせてもらった」なんです。



橋本:僕らの時代のコーチを見ても、それぞれのバスケットボールのスタイルに尖りがあったと思います。だから選手も、それに応じて尖りがあったのかなと。いまはコーチ自身も学ぶ機会も多く、戦術やシステムをしっかり構築できる。その結果として、竜青が言ったような「怪物が出づらい」印象があるのかも。

でも、この先、個に特化した指導をする方が現れて、そこから化け物のような選手が生まれたらおもしろいですよね。高校で同級生の金丸(晃輔/現・佐賀バルーナーズ)は明治大学に行きましたが、当時のコーチたちは、JBL(Bリーグ以前のトップリーグ)で活躍してほしいという思いで彼を育てていたのかなと感じていました。いろいろなコーチや選手、バスケットボールのスタイルがあると、日本のバスケはもっとおもしろくなると思います。



ウインターカップ開幕!篠山×橋本×湊谷——2006表彰台&88年生まれ同級生が語る高校バスケ「あの冬」と今年の注目ポイント
画像: 88 Basketballの会議にて(左から篠山、橋本、湊谷) ©88 Basketball

88 Basketballの会議にて(左から篠山、橋本、湊谷)

©88 Basketball

「今大会の注目校は......」「高校生のみんなには、悔いなく最高に楽しんでほしい」



――今年のウインターカップで注目している学校はありますか。



橋本:もちろん、母校の大濠です。



湊谷:洛南と言いたいけど、今年は残念ながら出場できないので、88 Basketballで関わった大濠の優勝を願っています。



篠山:北陸ですね。夏のインターハイで久しぶりにベスト4まで進んだので、冬も楽しみです。確か大濠の山に入ったんじゃないかな(勝ち上がれば準々決勝で対戦の可能性あり)。注目カードです。



――もし今後、ウインターカップをさらに深掘りして語るとしたら、どんなテーマで語りたいですか?



橋本:ウインターカップ中に、アレクが何枚ファンレターをもらったか聞いてみたいな。



湊谷:もらってないよ(笑)。



橋本:結構多いと思うんだけどな。人気すごかったでしょ!



湊谷:でも、ウインターカップを含めて高校時代に試合した3人で、いま「88 Basketball」として会社をやっていることが、一番感慨深いよ。



橋本:同級生、1988年生まれでウインターカップに出場した選手たちとも話しをしたいですね。



篠山:やりたいですね! ウインターカップで優勝、準優勝、3位のチームの人たちと、いま一緒に会社をやっているのは本当におもしろい。いろいろな角度から当時のことを振り返りたいです。



橋本:いま思ったんですけど、あの年はインターハイで北陸が優勝して、国体で僕ら(福岡県)が優勝して、ウインターカップではアレクが優勝しているんだよね。



篠山:確かに。なかなかないよね。



湊谷:長くバスケをやっていると、巡り合わせがありますね。ウインターカップは、いろいろな思いが詰まった高校最後の大会。勝ち負けはもちろんありますけど、高校生のみんなには、悔いなく、最高に楽しんでほしいですね。



【プロフィール】



篠山 竜青(しのやま りゅうせい)
1988年7月20日生まれ、神奈川県出身。北陸高校の3年時にインターハイで優勝し、ウインターカップで準優勝と大会ベスト5に選出。日本大学では3年時にインカレ優勝を経験し、4年時には主将を務めた。大学卒業後は東芝ブレイブサンダース(現・川崎ブレイブサンダース)に加入して以降、ブレイブサンダース一筋でプレー。Bリーグを代表する選手として競技の普及に尽力するほか、日本代表としても2019年にFIBAバスケットボールワールドカップに主将として出場した。



橋本 竜馬(はしもと りょうま)
1988年5月11日生まれ、福岡県出身。高校の3年時にウインターカップで3位に。青山学院大学では4年時に主将を務め、湊谷とともに関東選手権、関東リーグ、インカレの大学3冠を達成した。大学卒業後はアイシンシーホース(現・シーホース三河)に加入。2016年のリオデジャネイロ五輪世界最終予選に日本代表として出場した。琉球ゴールデンキングス、レバンガ北海道、アルバルク東京、越谷アルファーズを経て、現在はベルテックス静岡に所属している。



湊谷 安玲久司朱(みなとや あれくしす)
1988年8月31日生まれ、青森県出身。洛南高校3年時にウインターカップで優勝し、決勝では個人最多得点となる40得点を記録。青山学院大学では橋本とともに4年時に大学3冠を達成した。卒業後は三菱電機ダイヤモンドドルフィンズ(現・名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)、茨城ロボッツ、横浜ビー・コルセアーズでプレーし、2019年に現役を引退。3x3でも日本一を経験している。ケガの経験をきっかけにサプリメントを手がける株式会社Alexisを設立。88 Basketballを運営する株式会社はちはち代表。



執筆:Qoly Bリーグ・バスケットボール取材班

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