
[J2第2節、ジェフユナイテッド千葉 2-0 カターレ富山、2月22日、千葉・フクダ電子アリーナ]
千葉がJ2復帰の富山を2-0で下し、10季ぶりの開幕連勝スタートを切った。
DF鳥海晃司と主将DF鈴木大輔がセンターバックで先発出場した。
帰ってきた鳥海が見たフクアリ
フクアリに帰ってきた男たちが躍動した。
今季よりJ1セレッソ大阪から千葉へ完全移籍で復帰した鳥海は「フクアリでゴールを決められて本当に良かった」とサポーターの目の前で右手を力強く突き上げた。
後半5分に右コーナーキックを獲得した千葉は素早いリスタートからMF日高大(まさる)が左足ダイレクトでクロスを上げた。ボールは放物線を描きながら大外で待っていた背番号24の目の前へ落ちていき、最後は体勢を崩しながらもヘディングで押し込んだ。
ヘディングシュートを叩きこんだ鳥海フクアリでは5シーズンぶりとなる得点を決めた生え抜きは「これこそ僕があのころに見ていた景色です。『帰ってきたんだな』と実感できました」と黄色く染まったゴール裏を見つめた。
9日に行われた『ちばぎんカップ(0●3)』では、J1柏レイソルにボールを持たれ続けて圧倒された。J2開幕戦への危機感を口にする選手もいた中、鳥海は「それほど悲観していなかった」といたって冷静だった。
「だって僕たちはそこ(J1)に行くチームなので。比較してもしょうがないと思っていました」

その言葉通り、開幕戦では見事に修正してみせた。
2試合連続の無失点について背番号24は「大輔さんはもちろん、前線の選手たちがあれだけ上下に走って守備をしてくれたことがクリーンシートにつながっている」とイレブン全員でつかんだ結果だと強調した。
10季ぶりの開幕連勝を挙げたものの、鳥海に安堵(あんど)の表情はなかった。

「慢心はないですし、みんなも次を見据えている。きょうみたいな勝ちをコツコツと積み重ねて昇格するものだと思っているので、地に足をつけた状態で戦っていきます」
この日、ピッチに帰ってきた主将の鈴木も同じ意見だった。
サポーターの想いを知った負傷期間
昨年6月に左アキレス腱断裂の大ケガを負い、悲願の実戦復帰となった鈴木。8カ月にも及ぶリハビリ生活を乗り越えた主将の存在は千葉のディフェンスラインに安定をもたらした。
受傷前と見間違えるような力強いヘディングやリーダーシップでチームをけん引。攻撃ではロングパスでリズムを生み出し、2-0の勝利に大きく貢献した。

帰ってきたキャプテンは「この結果は本当に大きい」としつつも、すぐさま「まだ慢心するには値しないと思います。
1月に行われたトレーニングキャンプでは練習メニューをすべて消化できなかったというが、ホーム開幕戦に照準を合わせてきた。鈴木はこれまでの長いリハビリ生活を思い出し、「正直、アップのときから震えちゃいましたね」と支えてくれた仲間たちとサポーターへの感謝を口にした。

「ケガしている間、ずっとサポーターの目線で試合を観られました。自分はアウェイにも帯同していて、移動で隣の席にサポーターがいたり、同じホテルに泊まったり、同じ風呂に入っていたんです。
そういうときに、『(復帰を)待っています』と直接声を掛けてもらっていました。お金を払ってアウェイまで来てくれる人の気持ちとか、サポーターがどれだけ熱い気持ちで応援しているのか近くで見てきて分かったので、すごく勇気をもらえた。だからこそ、『そこ(ピッチ)に絶対戻るんだ』と思ってやってきましたし、みんなからの『復帰を待っているよ』という声でリハビリを頑張れました」

ケガをしていた鈴木にとって、アウェイへの帯同は自費だった。それでも「リハビリのモチベーションになるから」とチームを影で支え続けた主将は、17季ぶりのJ1復帰へ燃えている。
10シーズンぶりの開幕連勝を果たした千葉は昨季の最終節で敗れたモンテディオ山形と来月1日午後2時からホームで次節対戦する。勝利すればクラブ史上初の開幕3連勝となる一戦だ。
「 積み上がっているものがあると、自分たちは信じている。

フクアリで堂々のカムバックを果たした鳥海と鈴木。帰ってきた男たちが、千葉を本来いるべきJ1の舞台へと戻してみせる。
(取材・文 浅野凜太郎、写真 Ryo)