7人組グループ・Travis Japanの吉澤閑也がNBA docomoに初出演し、オールスターサタデーナイトを見届けた。華やかなダンク、極限のメンタルが試されるスリーポイントコンテスト。
八村塁、河村勇輝という挑戦者への期待、そして「縦ではなく横に広げたい」という覚悟。エンタメの最前線に立つ一人の表現者が見つめた、バスケットボールの現在地とは――。
NBAオールスターで再確認した「挑戦」と「広げる力」
NBAオールスターサタデーの華やかな夜。ダンクコンテストやスリーポイントコンテストが次々と歓声を呼ぶ中で、吉澤は改めてバスケットボールの魅力を噛みしめていた。NBA docomoへの初出演。それは本人にとって“夢のような出来事”だったという。
「めちゃくちゃびっくりしました。NBAの番組に呼んでいただけることが、自分の中で夢であり目標だったので、本当にうれしかったです」
大人になるにつれ、競技としてのバスケから少しずつ距離ができていく。だからこそ、再びこの世界に触れられること自体が喜びだった。そしてもうひとつ、彼の中には明確な思いがあった。
バスケを、もっと多くの人に広めたい――。
それは単なるファン目線ではない。
ルーキーの度胸に重ねた“自分の立場”
オールスターサタデーで吉澤が特に注目したのは、スリーポイントコンテストだった。ルーキーのコン・カニップル(シャーロット・ホーネッツ)がトップバッターにも関わらず高得点を叩き出し、会場の空気を一気に変えた瞬間があった。
2026年2月14日(米カリフォルニア州イングルウッド/インテュイット・ドーム)、NBAオールスター3ポイントコンテストで“マネーボール”を手にするシャーロット・ホーネッツのコン・クヌープル。(Photo by Jesse D. Garrabrant/NBAE via Getty Images)
「しょっぱなで決められるメンタルがすごい。頑張れ、頑張れって思いながら見ていました」
度胸やメンタルを自分自身に重ねながら見ていたという。そして、その姿勢は自分にも良い影響を与えていたと明かす。
「いい影響ですね。(下から)どんどんプレッシャーを与えてほしい」
下から突き上げられる存在は、時にプレッシャーになる。しかし同時に、自分を高める原動力にもなる。Travis Japanとして活動する中で感じてきた競争や刺激が、NBAの舞台と自然に重なったのだろう。
スポーツとエンタメ。
「まだ足りない」――日本バスケ人気への本音
日本のバスケットボールは近年、大きく存在感を増している。Bリーグの成長、代表チームへの注目、そしてNBAに挑戦する日本人選手の登場。確かに追い風は吹いている。
それでも吉澤は率直に言う。
「まだ足りないですね」
それは否定ではなく、愛情からくる言葉だった。選手たちは十分に努力している。だからこそ必要なのは、応援する側、そして伝える側の力だという。
「もっとテレビで扱ってもらい、野球やサッカーに並ぶくらいガンっていけたらいい」
その中で彼が語った言葉が印象的だった。
「もっと縦じゃなくて、横に広げていけたらいい」
吉澤が言う“横に広げる”とは、既存ファンをさらに深く掘り下げることではない。これまでバスケに触れてこなかった層へ届けることだ。コア層を熱くするより、まずはリーチするパイそのものを大きくする。そのために自分が発信し、テレビという場所を通じて入口を増やしていきたい。
プレーヤーではなく、伝える立場としてバスケの裾野を広げる。そこに、自分の役割を見出している。
吉澤は日本時間3月1日のロサンゼルス・レイカーズ対ゴールデンステート・ウォリアーズを配信するNBA docomoにゲスト出演する予定だ。再びNBAを伝える側として関わる姿は、“横に広げる”という思いがすでに動き出していることを示している。
NBAの本当の面白さは「人」が見えること
吉澤が感じるNBAの魅力は、派手なプレーだけではない。
「NBAはとにかく全員がうまい」
子どもの頃は簡単そうに見えた。しかし、見方が変わるとそのすごさが分かってくる。技術、判断力、メンタル。そのすべてが超一流で成り立っている世界。そして彼はこう続ける。
「一人ひとりの技とか性格とか、コアな部分を知れば知るほど楽しくなってくる」
プレーの選択、試合中の表情、立ち振る舞い。そこから選手の性格や人間性まで見えてくる。それがNBAの奥深さだという。
原点は田臥勇太――身長がくれた希望
吉澤がバスケを始めたきっかけは、小学生の頃に見た田臥勇太だった。兄の影響で試合を見始め、自然と夢中になった。
「僕も身長がすごく大きいわけじゃなかったので、速さやチームを動かす力がすごいなと思っていました」
大柄な選手ばかりの中で戦う姿は、強烈な憧れだった。動画やニュースを何度も見ながら、同じようにプレーする自分を想像していたという。日本人でも戦える。その希望を最初に感じさせてくれた存在だった。
河村勇輝に見た“来る選手”の気配
吉澤は2021年、横浜ビー・コルセアーズ対宇都宮ブレックス戦の中継にゲスト出演した際、河村勇輝のプレーを目にしている。その時点で「来るだろうな」と感じていたという。理由は、派手さではなかった。
2022年10月当時 攻め込む横浜BC・河村 全日本バスケ男子3次R 川崎―横浜BC 第1クオーター、攻め込む横浜BC・河村(右)=都城市体育文化センター =共同通信
「ボールを拾いに行く姿勢ですね。当たり前だけど、それをちゃんとできるのがすごい」
細部を疎かにしない。バスケに対する熱量とストイックさが、プレーの端々に出ていた。
「うまさももちろんだけど、あの熱いところが大事だと思いました」
スター性とは、スキルだけではない。姿勢そのものが周囲に伝わる力なのだ。
八村塁と河村勇輝に託す“夢の続き”
そして吉澤が強く期待を寄せるのが、八村塁と河村勇輝だ。
「日本人でもできるんだよっていう自信を与えてほしい」
海外へ出て挑戦する姿は、Bリーグの日本人選手はもちろん、いま部活に打ち込んでいる子どもたちにとって大きな道しるべになる。
「僕らでいうと、僕たちの先輩みたいな存在になってほしい」
そう語る吉澤の言葉には、Travis Japanとして海外で活動してきた自身の歩みも重なる。夢を追う人が増えるきっかけになってほしい――そんな願いが込められている。もちろん「おこがましい」と笑いながらも、海外で挑戦を続ける姿勢に共通点を感じているのだろう。
「NBAオールスターが行われるようなアリーナで、いつかパフォーマンスができたら嬉しい」
スポーツとエンタメが同じ場所で交わる未来を、彼は自然に思い描いていた。
バスケを広げるのは、プレーする人だけじゃない
吉澤が語った言葉を振り返ると、そこにはひとつの軸がある。それは“伝える側の力”だ。選手が戦い、ファンが熱狂し、そして発信する人が新しい入口を作る。その循環が生まれた時、スポーツはさらに大きな文化になる。
オールスターの煌びやかな舞台で彼が感じたのは、スターの華やかさだけではない。
バスケの魅力とは何か。
豪快なダンクや、超人的なシュートだけでなく、プレーの中に人間そのものが見えてくること――。
その視点を持つ吉澤が、これから“広げる側”としてどんな言葉を届けていくのか。それこそが、日本バスケの未来を少しずつ変えていくのかもしれない。
取材・文=一野 洋

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