
[天皇杯2回戦、J2ジェフユナイテッド千葉 1-1(PK4-5)J2ロアッソ熊本、6月11日、千葉・フクダ電子アリーナ]
1-1で延長戦を終えた千葉は、PK戦で熊本に4-5で天皇杯敗退が決まった。
今季よりJ1京都サンガF.C.から育成型期限付き移籍で加入したDF植田悠太(ゆた)は後半44分にピッチへ投入され、ジェフでのデビュー戦を飾った。
今季公式戦初出場の20歳が躍動
今季初出場のチャンスが突然やってきた。
FW呉屋大翔(ひろと)の先制点でリードした千葉イレブンは、集中した守りで熊本のアタックを防ぎ続け、3回戦進出の切符をつかみかけていた。しかし後半40分に右コーナーキックの流れから、最後はオウンゴールで同点に追い付かれた。
さらに同44分には、ここまでリーグ戦14試合3アシストを記録していた左サイドバックのMF日高大(まさる)が負傷。ベンチでは直前までFW石川大地の投入が準備されていたが、アクシデントによって急きょサイドバックの植田がピッチに立った。
果敢なドリブル突破を見せた植田試合前には「もうここ(天皇杯の熊本戦)で結果を残さないと、今年はチャンスがないかもしれないという気持ちです」と、この試合にかける想いを明かしていた。
1-1で迎えた難しい場面での出場だったが、20歳は見事に対応してみせた。
「『きょうは俺の日だな』と思っていました。すごくワクワクした状態でピッチに立つことができましたし、何か勝敗に関わるプレーができると感じていました」と自信がプレーに表れていた。
延長戦突入後も背番号26は攻守で躍動。攻めれば左足のキックとドリブル突破でチャンスメイクし、守れば気迫あふれるプレーで小林慶行(よしゆき)監督にアピールし続けた。

指揮官から「行ってこい」と肩を叩かれ、勝利のために身を粉にし続けた植田は「最近調子が良くて、身体も動いていました。
延長戦後半にはボックス内へ飛び込み、ヘディングシュートを放つなど今季初出場ながら存在感を見せた。
ただ、チームはPK戦の末に同杯2回戦敗退。ほろ苦いデビュー戦となった20歳は、試合後に目を赤くした。
昨季大宮でJ3優勝の植田が強調する控え組の重要性
植田は今季より育成型期限付き移籍で千葉に加入するも、ここまで公式戦の出場はゼロ。個人として苦しい時期が続いたものの、背番号26はトレーニングからひたむきに努力を続けてきた。
「常にチャンスをうかがいながら、練習に取り組んでいました。そして自分の調子が良くなってきたときに、ちょうど天皇杯があったので、『絶好のチャンスだな』という感覚でした」とチームを勝利に導きたかった。

勝点37でJ2首位に位置している千葉だが、今月15日午後7時からアウェイの鳴門・大塚スポーツパークポカリスエットスタジアムで行われるJ2徳島ヴォルティスとの第19節で勝利できなければ、勝点35で並ぶ2位のRB大宮アルディージャと3位水戸ホーリーホックに1位を奪われる可能性がある。
チームは公式戦4試合未勝利でトンネルに入っている。昨季はJ3優勝を果たした大宮の一員として戦った植田が、この危機的状況について語った。
「去年、大宮にいたときも悪い流れのときがありました。
僕は(千葉が)勝っていたときにずっと試合を見ている側でしたが、そのときはチームの勢いもあったし、相手に先制点を取られても、すぐに得点を取り返せるイメージができた。でも最近はそういうイメージができないというか、不安な感じですね」

じりじりと首位浮上を狙っている大宮の長澤徹監督とは京都、大宮で共闘。20歳の左サイドバックは敵将から、勝者のメンタリティを学び、チームが不調から立ち直っていく姿を何度も見てきた。
植田は千葉が首位を堅持するためには、自分たちのような控え選手の台頭が必要だと、これまでの経験を踏まえて言い切った。
「僕が言うのもなんですけど、どこかで連勝して流れを持ってこないときついと思います。そのためには途中から(試合に)入る選手が流れを変えていく必要があるし、大宮でも途中から(試合に)出た選手の活躍で勢いが戻ることがありました」と、ライバルクラブでの経験を千葉に還元する。
試合後の涙は決意に変わっていた。

植田は「リーグ戦でいえば前期が終わるタイミングでの出場になりましたが、まだ後期がある。自分はリーグ戦に出ていなくて、(相手から)マークもされていない。ここから活躍して新しい波を作りたいですし、チームで優勝と昇格をしたいです」と、リーグ戦折り返しに向けて意気込んだ。
(取材・文・写真 浅野凜太郎)