イギリスメディア『ロイター通信』は3日、同国政府が、2022年のチェルシー(プレミアリーグ)売却によって得た凍結資産について元オーナーであるロシア人実業家ロマン・アブラモヴィッチ氏と合意に至らなかった場合、同氏を提訴する構えだと報じた。

アブラモヴィッチ氏は2003年にチェルシーを買収し、多くのビッグネームを獲得してクラブの一時代を築いた。

だが、2022年にロシアによるウクライナ侵攻を受けて、イギリス政府はロシアの新興財閥への制裁を強化。その一環としてアブラモヴィッチ氏にも制裁が科された。

その後、ロシア人富豪が所有するチェルシーの売却が急がれ、売却益25億ユーロ(約4872億円)は凍結され、現在もこの資金はイギリスの銀行口座でそのままの状態となっている。

この状況に同国政府は「ロシアによる違法な全面侵攻を受けて、チェルシーの売却益がウクライナ人道支援に充てられるよう、政府は強い決意を持っています。アブラモヴィッチ氏とこの点で合意に至っていないことに、深く失望しています」と声明を発表。さらに、「交渉の余地はまだ残されているが、必要であれば法的手段に訴える用意がある」と述べた。

売却益が凍結されたままになっている現状については、アブラモヴィッチ氏は当初からウクライナ戦争のすべての犠牲者へ資金寄付を行う意向を示している一方で、イギリス政府はウクライナの人道支援に充てることを希望しており、意見が食い違っているためだという。

なお、この巨額の売却益はイギリス財務省の制裁執行機関『金融制裁執行局(OFIS)』からの許可が下りない限り、移動や使用はできない。

法廷で用途について争うことになれば、この問題ははさらに長期化しそうだ。

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