なでしこジャパン初の外国人監督となるニルス・ニールセン体制。
今年からスタートし、最初の活動でシービリーブスカップ初優勝という快挙を達成したものの、その後は東アジアE-1選手権も含め1勝4分4敗の成績に終わっている。
勝利したのはE-1のチャイニーズ・タイペイ戦(4-0)のみ。ただし、モチベーションや完成度の高いチームとの対戦も多いほか、「第2フェーズ」に入ったとされるイタリアとノルウェーとの10月シリーズを見ても、決定機をしっかり作れている点はプラスだ。
来年3月に開催されるAFC女子アジアカップ、そして2027年の女子ワールドカップに向けて、チームとして積み上げを行っている最中であることは間違いない。
そんな現在のなでしこジャパンにおいて、進化のカギを握る5名の選手をピックアップした。
高橋はな
2000年2月19日生まれ(25歳)
三菱重工浦和レッズレディース所属
まずは、先日2024年度のアジア女子年間最優秀選手賞を受賞した高橋はな。ニールセン体制が始まって以降で最も成長した選手の一人だ。
以前は高いアスリート能力を持つが故の本能的なプレーが目立ち、それが長所である一方短所でもあった高橋。しかし、チームメイトが次々と海外へ羽ばたいていく中で、国内のWEリーグで着実に成長し、1学年上で浦和の元同僚、南萌華(ブライトン)との立場をひっくり返した。
10月シリーズではDFで唯一人2試合にフル出場。CBとして的確なビルドアップで相手を動かすだけでなく、鋭いロングパスで局面を変え、さらに右SBとしても良い攻撃参加を見せた。
クラブでFWとしても活躍するなど、フットボーラーとしての才能はもともと破格。海外組が大半を占めるようになってきたからこそ、高橋の代表でのパフォーマンスはWEリーグでプレーする選手たちに勇気を与えるはずだ。
遠藤純
2000年5月24日生まれ(25歳)
エンジェル・シティ所属
遠藤純は、2024年2月に左膝前十字靭帯を損傷。今回、同じく膝の大怪我から復帰した清水梨紗とともに、ニールセン体制初招集を受けたものの、試合出場はノルウェー戦後半途中からの25分のみに終わった。
ただ、その中で、「遠藤だからこそできるプレー」をきっちり披露した。日本の左サイドは遠藤の離脱以降、北川ひかるが長くスタメンを務めてきたが、個としては現状、2022年から海外(アメリカ)でプレーする遠藤に軍配が上がる。
左足の正確なクロスに加え推進力があり、クロスを見せながら縦にも中にも行けるのが遠藤の強み。左利き独特のプレー角度を体現できる、相手にとって厄介この上ない存在だ。
10月シリーズは怪我で不参加だった北川、そして今回大きな成長を感じさせたエンジェル・シティのチームメイト守屋都弥を含め、左サイドバックのポジション争いは激しいものになっていきそうだ。
宮澤ひなた
1999年11月28日生まれ(25歳)
なでしこジャパンの10月シリーズにおけるベストプレーヤーとして、おそらく多くの人が中盤の黒子役を担った宮澤ひなたの名前を挙げるに違いない。
2023年の女子ワールドカップで大会得点王に輝いた快速アタッカーは、大会後に移籍したマンチェスター・ユナイテッドでボランチへ驚きのコンバート。今回のイタリア戦とノルウェー戦ではともに先発し、キャプテン長谷川唯のパートナーを務めた。
結果、イタリア戦で長谷川の同点弾をアシストし、ノルウェー戦も藤野あおばの「幻のゴール」は宮澤のスルーパスから生まれている。また、長野風花が入った際はより攻撃な役割を任され、エリア内でのシュートがクロスバーを叩くシーンもあった。
なでしこのボランチはこれまで典型的なMFと言えるタイプが多かっただけに、足が速いうえにゴールへの道筋が見える宮澤は明らかに異質。「普通のボランチにはなりたくない」と常々語る25歳は、まさに今後の進化を左右する存在だ。
清家貴子
1996年8月8日生まれ(29歳)
ブライトン所属
イタリア戦の前半アディショナルタイムとノルウェー戦の開始早々の2分、決定機にいずれもループシュートを選択し、ゴールを生み出すことができなかった清家貴子。
得点に至らなかったことを「決定力不足」と言うのは簡単だが、そもそも両試合において、DFラインの裏で得た最大の決定機に彼女が絡んでいた事実を見逃すことはできない。
高橋はなの前年、2023年度のアジア年間女子最優秀選手賞を受賞した清家は現在、イングランド1部のブライトンに所属。世界最高峰の舞台でアタッカーとして成長を続けている。
10月シリーズでは2試合ともに先発。右サイドだけでなくFWでも起用されるなど、ニールセン監督の信頼は厚い。清家のスピードをどのように生かし、チーム戦術に組み込むか。54歳の指揮官の腕の見せ所でもある。
松窪真心
2004年7月28日生まれ(21歳)
ノースカロライナ・カレッジ所属
昨年のU-20女子ワールドカップで日本を準優勝に導いた松窪真心。JFAアカデミー福島出身の21歳は、高校卒業後マイナビ仙台レディースで1シーズンプレーし、アメリカ最高峰のNWSLへと活躍の舞台を移している。
そして今季、身長155cmの小柄なFWは、レギュラーシーズン終了時点でなんと得点ランキング単独3位の11ゴールを記録。9位に終わったチームの中で獅子奮迅の活躍を見せた。
なでしこジャパンの10月シリーズでは、イタリア戦の前半のみ出場。
今年A代表デビューを飾ったばかりだが、すでにFWでは田中美南に次ぐ2番手の位置づけ。試合を重ねるごとに周りとの関係性も向上しているだけに、なでしこジャパンでの初ゴールが待ち遠しい。

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