
[天皇杯ラウンド準々決勝、J1FC東京 2-1J1浦和レッズ、8月27日、埼玉スタジアム2002]
FC東京は2-1で浦和を下して、天皇杯準決勝へと駒を進めた。
約1年3カ月(2024年6月30日J1第21節浦和対ジュビロ磐田)ぶりに埼玉スタジアムでプレーした元デンマーク代表DFアレクサンダー・ショルツは、センターバックでフル出場。
恵まれた体格を生かした堅実な守備で古巣の前に立ちふさがった。
準決勝進出も、冷静さを保つ
前半は浦和が試合を支配する展開となり、同42分には痛恨の先制点を献上。その後もFC東京は守勢に回る展開が続いた。
FC東京のディフェンスリーダーは「前半はあまりいいプレーができなかった。何度かエラーをしてしまい、そこをつかれて失点してしまった」と、前半を振り返った。
それでもエンドが変わった後半7分に、ブラジル人FWマルセロ・ヒアンの右足一閃で同点に追いつくと、ここからFC東京の追撃が始まった。
同点に追いついてペースを握ったFC東京は後半20分に、今夏J2のV・ファーレン長崎から期限付き移籍で加入したブラジル人MFマルコス・ギリェルメが右サイドを突破。中央へラストパスを送り、ボックス内でフリーのヒアンがダイレクトで右足を振り抜いた。
ストライカーのこの日2点目のゴールで、FC東京が逆転に成功した。

試合終盤、1点を追う浦和にパワープレーで押し込まれるも、ショルツを中心とした守備陣が身体を張って防ぎ続けた。
青赤のイレブンは足をつる選手が数人出ていたが、最後まで1点リードを守り切った。
FC東京の背番号24は「高い位置からマンマークで捕まえに行くところで、前半はサヴィオ選手にパスをつけられてしまうことが多かった。後半はそういうところもしっかりDFで潰しに行けるように変えて、より高い位置で奪えるようにしたことで試合の流れを持ってくることができた」と、後半に試合を巻き返せた要因を語った。
準決勝進出に歓喜するチームの中、ショルツは「一つ決勝に近づくことができた。それだけだと思います。ただ、この試合の勝利は、サポーターの方にとって素晴らしいものになったと思います。(浦和は)東京と場所が近く、ライバル関係もあり、また前回の負けがあった中で、お返しをサポーターに届けられたかなと思います」と冷静に答えた。
久々の埼スタは「ホームに感じた」
埼玉スタジアムでの天皇杯の試合は、2021年12月12日に行われた準決勝セレッソ大阪戦以来、約4年8カ月ぶりだ。
当時、ショルツは浦和の選手としてこの試合に出場して、勝利に貢献した。
同大会では浦和が見事に優勝を成し遂げ、翌シーズンのAFCチャンピオンズリーグ(ACL)制覇の布石となった。
ミックスゾーンに現れたデンマーク人DFに、4年間の思い出がつまった埼玉スタジアムで久々にプレーした感想を聞くと、それまで堅かった表情がフワッと笑顔になった。

「ここでたくさんの試合をしたので、自分だけかもしれませんが、どちらのサポーターにも応援してもらっているようで、ホームに感じていました(笑)」と、意外な感想が返ってきた。
これまでも、多くの選手が埼玉スタジアムでプレーしたが、熱狂的な浦和サポーターがつくり出す雰囲気に圧倒される選手も少なくない。
続けてショルツは「初めてだったら、もう少し特別な感情を持っていたかもしれませんが、すでに浦和と(対戦を)しているので、自分の中ではノーマルな試合だと思っていました」と、古巣との試合に平常心で臨めたと語った。
ショルツの冷静沈着な性格と、豊富な経験値をしみじみと感じる一幕だった。

今年6月にFC東京へ加入したショルツだが、自身が出場した試合はまだ一度しか完封できていない。
浦和時代は元U-21ノルウェー代表DFマリウス・ホイブラーテンとともに、Jリーグ屈指のセンターバックコンビを形成した。2023年には、二人そろってJ1年間ベストイレブンに選出された。
現在のFC東京は、様々な選手を試しながら最適な組み合わせを模索している最中だという。
「浦和ではマリウス選手とプレーすることができました。彼は素晴らしい選手だったと思います。ただ、浦和でプレーしていたときとは違って、いまFC東京ではセンターバックでともにプレーする相方に、いろいろなオプションがある状態です。みんな、それぞれいいクオリティを持っています」と、守備の安定化に自信を見せた。
リーグ戦15位のFC東京は、31日午後7時からアウェイの豊田スタジアムで16位名古屋グランパスと対戦する。
FC東京にとって、勝点差2ポイントに迫るライバルとの直接対決に負けるわけにはいかない。
青赤軍団のディフェンスリーダーは、この勝利を足掛かりに次戦こそ完封勝利を目指す。
(取材・文 繩手猟、写真 西元舞)