
[J1第33節、愛媛FC1-2 いわきFC、10月18日、福島・ハワイアンズスタジアムいわき]
20チーム中最下位の愛媛はいわきに1点差で力負けし、きょうの大分トリニータvsベガルタ仙台戦の結果次第でJ3降格が決まる危機的状況に陥った。
今夏にJ2モンテディオ山形から完全移籍で4季ぶりに復帰したFW藤本佳希(よしき)は途中出場するも、流れを変えられなかった。
それでも経験豊富なストライカーに、諦める気配は一切なかった。
痛めても諦めない姿勢示す
愛媛は被シュート24本を浴びせられ、ギリギリのところで耐え続けたが、前半33分に先制点を許した。
それでも後半4分にMF曽根田穣(ゆたか)が頭で同点にして意地を見せるも、同32分にセットプレーから痛恨の決勝点を許して敗戦を喫した。
この日後半17分に途中投入された藤本は前線で鋭い動き出しを見せるなど存在感を見せたが、ネットを揺らせなかった。
この日途中出場した愛媛FW藤本(中央)「絶対に勝ちが必要だった。すごく悔しいです」と、言葉を絞り出した。
具体的な負傷部位は明かさなかったが、体を痛めながらの途中出場だった。万全の状態であれば、いわきにとって大きな脅威になったかもしれない。痛みにより数日間練習から抜けていたストライカーは負傷を言い訳にしない。
「チームとして準備したものをやろうとしました。自分たちの時間帯もあったので、勝機はあったと思います。ただ90分を通して、相手のほうが点を取った。
今夏山形から愛媛に完全移籍での復帰は、覚悟のいる決断だった。3年半過ごしたチームには深い愛情があり、二人の子供に山形のクラブカラーである青と白にまつわる漢字を名付けるほどだった。
ただ山形での出場はリーグ戦19試合中9試合先発出場と苦しんだ藤本は、出場機会を求めてJ2残留争いをする古巣帰還を決断した。
今季の愛媛は3勝11分19敗でリーグ最多59失点(18日午後8時点)と非常に苦しいシーズンを過ごしていたため、この移籍には大きな覚悟が必要だった。それでも古巣を救うため、プレーする喜びを選んだ藤本は、万全の状態でなくても死力を尽くして戦っている。
J2残留の可能性はわずかだが、可能性がある限り男は熱く戦い続ける。
「残りの試合で1つでも勝つところを(ファンに)見せたいと思っているので、そういう姿を見せたいと思います」と闘志を燃やした。
次節は26日午後4時にホームでジュビロ磐田と対戦する。残り5試合、奇跡の残留をつかみ取れるか。大きな決断をした藤本の生き様を見届けたい。
(取材・文 宇田春一)