
Qoly専属評論家の元Jリーガー高木義成さんがサッカー界の疑問や問題などに独自の視点で切り込む『高木義成の高木式GK視点コラム』。
連載第1弾は移籍市場が開いた際に新聞社などが掲載する移籍ニュースについて当事者となるJリーガーは何を思うのかについて、高木さんが切り込んだ。
X(旧Twitter)などで移籍情報を垂れ流す移籍の噂アカウントなどにも言及した。
新聞で知ったライバルの移籍
まずは自分が移籍したかったときは、キーパーの移籍の噂が気になっていたよ。例えばエージェント経由だったら信ぴょう性がある。新聞やネット記事はそんなに信用していないけど、ちょっとドキドキした感じがあったよね。
ヴェルディ時代はJ2に降格して、J1へ戻したときに土肥洋一さんを取ると新聞で知った瞬間は「は?」って思ったよ。「舐めているの?」ってね(笑)。
東京Vに加入した土肥洋一氏FC東京の土肥洋一さんの獲得と新聞に出て、これほど屈辱的なものはないなと。同じ東京だし、向こうは元代表で、満身創痍(まんしんそうい)に見えたからね。挙句の果てにキャンプ前に(当時監督の)柱谷哲二さんにサウナで「お前は今年使わない」と言われ、「あんたかよ(土肥さんを)取ったの!?」と思ったよ(苦笑)。
でも土肥さんはすごい選手だったから一緒にやれたことはいい経験になったね。
名古屋移籍時に当事者となった移籍ニュース
俺は名古屋へ移籍したときにそれ(移籍ニュース掲載)をやられているからね。ヴェルディをクビになって、グランパスが天皇杯の最後まで残っていたんだよね。だからヴェルディをクビになってから(加入の)発表ができなかったんですよ。
『高木義成ヴェルディ退団』となってから3カ月くらい音沙汰がなくて、名古屋は決まっていたのにね。
これから行くチームの選手だって「いま出すのかよ」みたいになっちゃう。そのときはキーパーに広野耕一くんがいて、彼と入れ替わりと聞いていた。広野くんが人格者だと聞いていたし、彼はちゃんとした花道を行かないといけないと思っていた。
それなのに俺の記事が出ちゃったから、「なんで広野くんをクビにして、高木を取るんだよ」という感じになったね。
新聞記者にやり返したら嫌味や皮肉を記事に書かれる
誰も俺が名古屋から出て行かないと思っていた。居心地のいいクラブだからね。
当時某スポーツ新聞の記者がやたらと名古屋を煽る記事を書いていたわけですよ。俺とその記者は同級生だったんだよね。

クラブにも時間をずらしてくれと伝えて、まず俺は自分のSNSで出すと言ってね。そしたらその記者は自分の正義で「義成の(移籍)記事は絶対こう書かなきゃいけない」みたいなものを自分で思っていたらしくて、SNSで先に出しちゃったから俺への嫌味や皮肉を全部込めた俺専門の記事を出したんだよ。マジですごかったよ。
楢崎正剛の壁を超えられなかったとか嫌味のオンパレード。そこで俺もSNSで「こういった奴に書かれたくないから自分の口で書いて良かった」と書きました(笑)。
選手個人でのメディアコントロールは不可能
選手個人でメディアをコントロールできるわけがないから、結局選手が黙って、強化部が黙っていてもチーム関係者は沢山いる。ホペイロ、トレーナー、もしかしたらインターンで来た子がたまたま聞いて話しちゃっているかもしれない。選手同士でポロっと言っちゃっている場合もあるから誰も信用できないよね。
(移籍ニュースによって)心証が悪くなっちゃう人もいるだろうし。それが飛ばし記事をやっている人が儲けていると思うとちょっとね。昔と違うでしょ?いまの方が多分書けば書くだけお金が入る仕組みになっている。新聞の時代じゃないだろうからさ。
噂カウントがはびこるXは便所の落書き
匿名のSNS、特にX。(移籍の噂で)一喜一憂する暇があるんだったら、自分が応援する選手がどこへ行ってもいつでも応援できるようにしといてほしい。裏にはお金稼ぎが絡んでいるとみんな分かったほうがいいよね。

みんなが押しているワンクリックがいくらになっているのかを理解したほうがいい。(ゴシップメディアが書く)アクセスが多い記事や(噂アカウントの)投稿が増えれば増えるだけ、フェイクニュースを書く奴が出てくる。サッカー界のメディアの衰退につながっていると理解したほうがいいよね。いまは違うよね。手ごろに簡単に手に入る情報ほど信ぴょう性がないと思うし、Xなんて便所の落書きだよね。
(高木義成)
東京ヴェルディ1969、名古屋グランパスエイト、FC岐阜に所属、18シーズンでJリーグ通算238試合に出場した守護神。2017年に現役を引退した。 Web Football Magazine Qolyの専属評論家、オフィシャルコラムニストとしてサッカー界の疑問や問題などに切り込むQolyオリジナルコンテンツ『高木義成の高木式GK視点コラム』を連載。