
[J2第18節、ジェフユナイテッド千葉 0-0 レノファ山口FC、5月31日、千葉・フクダ電子アリーナ]
今季より完全移籍で加入したDF河野貴志は攻守で存在感を発揮した。千葉で初めてのリーグ戦先発フル出場を飾った背番号28は、攻めればロングボールで陣地を押し上げ、守れば球際で激しいタックルを披露。
首位千葉は得点を奪えず18位の山口に引き分けたが、河野を筆頭にディフェンス陣が堅守で2試合ぶりのクリーンシートを達成した。
今季リーグ戦初先発で存在感を発揮した背番号28
今シーズンのリーグ戦で3失点以上を喫していない強固な守備陣に割って入るパフォーマンスだ。
この日、DF鈴木大輔主将とセンターバックでコンビを組んだ河野は「いつ出番が来ても、いいように準備してきた」と、自身の価値を証明するプレーを披露した。
身長186センチの恵まれた体格を生かし、空中戦では相手を寄せ付けなかった。攻撃では、得意のロングフィードでチャンスを演出。前半2分にFW田中和樹へ供給した対角のロングパスは磨き続けてきた武器だ。
2月9日に行われたちばぎんカップ(0●3)に出場した河野「和樹はいつも『貴志くん(からのパスを)待っている』と言っていて、意思疎通ができている。僕があそこにパスを出せると、和樹も分かっているので、そこは見ないでも通じるものがある」とアタックの要である背番号7との相性は良好だと強調した。
ここまでのリーグ戦では16試合先発出場中の鈴木キャプテンと、全試合にスタメン入りしていたDF鳥海晃司らの牙城を崩せず、プレータイムは19分に留まっていた。

今シーズン初のスタメンフル出場を果たしたリーグ杯1回戦のJ2カターレ富山戦では2-4の敗北を味わい、一時は自信を失った。
それでも、2年間の在籍でリーグ戦77試合に出場したJ2ブラウブリッツ秋田での経験を誇りに、序列を上げる努力を重ねてきた。偉大な先輩センターバックコンビの背中に追いつき、追い越そうと、日ごろのトレーニングから小林慶行(よしゆき)監督にアピールし続けた。
ジェフは勝たなといけないクラブ
河野は「僕も大輔さんに頼りっぱなしではいけないので、自分からもしっかりと発信していこうと思っていました」とチームメイトに指示を出し続け、守備を統率。
この試合では堂々とプレーした河野はリーグ杯後に知り合いから「お前らしくないし、お前らしさを原点に戻って出した方がいい」と叱咤激励を受けていた。自身の強みを見失いかけていた男は自分と向き合って努力を重ねたことで、アピールが実って試合前日にスタメン入りを告げられた。
指揮官は「今回、鳥海のアクシデントで(河野に)チャンスが回ってきたわけですが、これだけ鳥海、鈴木大輔という二人でやってきた中で、ポッと(試合に)使われても、あれだけのパフォーマンスをやれたというところはすごく良かった。
貴志に関しては90分を通して、フィジカルコンディション的にも準備してきた選手だと証明できましたし、(身体の)強さは彼の一番のストロングだと思います。それ以外にも攻撃の部分で長いボールでチャンスを作っている場面もあった」と、見事にフィットした28歳のディフェンダーを称賛した。

背番号28の活躍もあり、相手に自由を与えなかった千葉。前後半を通じて山口を圧倒し、計18本ものシュートを放ったが、ゴールネットは揺らせなかった。試合はそのまま0-0で終了し、リーグ戦3試合連続未勝利となった。
クリーンシートに貢献した河野だったが、自らのパフォーマンスについては「50点」と評価。小林監督からは、パスミスからカウンターを受ける場面を指摘されており、課題も見つかった。
「もっとやれると思うので、自分に期待を込めて50点です。
次戦は6月11日の午後7時からホームでJ2ロアッソ熊本と天皇杯2回戦を戦う。
試合後、河野は「満足したら終わり」と気を引き締めた。「勝ちたいという気持ちがもっと強くなれば絶対に勝てる」と、背番号28が鈴木と鳥海のコンビに割って入り、チームを再び連勝街道へと導く。
(取材・文 浅野凜太郎)