Jリーグの秋春制移行、JFLのプロ予備軍化…改革の中で「地域リーグが描く戦略」とは?関西のトップに聞いてみた
Jリーグの秋春制移行、JFLのプロ予備軍化…改革の中で「地域リーグが描く戦略」とは?関西のトップに聞いてみた

8月29日、大阪駅付近にあるサッカーショップKAMO梅田店が入ったビルの7階にある「ナポリピッツァ&テラス エスタディオ」において、関西サッカーリーグのカップ戦にあたる「KSLアストエンジカップ」の組み合わせ抽選会が行われた。

関西サッカーリーグは、J1から数えて5部にあたる地域リーグの一つ。

日本を9つに分けて行われているコンペティションで、昨年は奈良県の飛鳥FCがここからJFLへと昇格している。

「KSLアストエンジカップ」はそのリーグ戦が終了したあとに開催されるカップ戦で、特色は「Jクラブのユース」と「街クラブのユース」が招待されて決勝トーナメントに参加すること。単なる社会人だけの大会ではなく、カテゴリが違うチームが戦う興味深いものとなっている。

まずは関西サッカーリーグ1部と2部に所属する全16チームを4チームごとの4グループに分けてリーグ戦を行い、各グループの1位&2位のうち成績上位2チームの計6チームが決勝トーナメントに進む。そしてJクラブユースと街クラブが加わり、全8チームでのノックアウトステージが行われる。

12月末まで開催される「KSLアストエンジカップ」の意義

なお、抽選の結果はこのようになった。

Jリーグの秋春制移行、JFLのプロ予備軍化…改革の中で「地域...の画像はこちら >>

グループA

神戸FC1970(1部)

FC BASARA HYOGO(1部)

Cento Cuore HARIMA(1部)

関大FC2008(2部)

グループB

Route11(2部)

FC.AWJ(1部)

ACミドルレンジ(2部)

AS.ラランジャ京都(1部)

グループC

アルテリーヴォ和歌山(1部)

OKFC(2部)

阪南大クラブ(2部)

VELAGO生駒(1部)

グループD

守山侍2000(1部)

京都紫光クラブ(2部)

St.Andrew's FC(2部)

おこしやす京都AC(2部)

このグループステージは10月18~19日、10月25~26日、11月29~30日の3日程によって行われ、各チームがそれぞれ3試合を戦う。

勝ち上がった6チームは以下のトーナメント表に従ってノックアウトステージに進み、12月7日にベスト8、12月14日に準決勝、12月20日に3位決定戦と決勝が行われる予定だ。

Jリーグの秋春制移行、JFLのプロ予備軍化…改革の中で「地域リーグが描く戦略」とは?関西のトップに聞いてみた
Jリーグの秋春制移行、JFLのプロ予備軍化…改革の中で「地域リーグが描く戦略」とは?関西のトップに聞いてみた

変革が求められる地域リーグ

Jリーグの規模は拡大しつづけており、昨季は初めてJ3から退会するチーム(いわてグルージャ盛岡、Y.S.C.C.)が生まれ、JFLとの間の壁も低くなった。来季はシーズンも春秋制から秋春制へと移行することが決まっており、アマチュアリーグもそれに合わせた変化が必要な時代がやってきた。

関西も例外ではなく、日本のトップであるJリーグが変革を迎えているなか、学生サッカーとの兼ね合いも考えながらの難しい立ち回りが求められている。その中で2023年から冠スポンサーをつけて新しい形で行われてきたKSLアストエンジカップも、ますます多くのパートナーによる協力を受けて開催されるようになった。

いま、地域リーグにはどのようなことが求められているのか。抽選会のあと、関西サッカーリーグの運営委員長を務めている八木勉氏にお話を伺ってみた。

いま「変革が求められる」地域リーグ

――お疲れ様でした。抽選会の感想をお聞かせください。

「このようにパートナーさんもたくさん来てくださって盛大に抽選会を開くことができるというのは、本当に嬉しいことですね。繋がりが広がっているなという気持ちでいっぱいです」

――新たにパートナーとして発表された方々にもお会いしましたが、皆さん八木さんの熱意についてお話をされていましたね。

「嬉しさと同時に使命感もありますね。責任をひしひしと感じているところです。スポンサーではなく、パートナーですから。ともにいいものを作り上げていきたいですし、メリットも出していかなければいけないですからね。そのような意識を持っています」

――JFLが「Jクラブ予備軍」のリーグに変わって必要な資金も増加する中、地域リーグとしてはどのように変化していきたいと感じていますか?

「関西リーグも、上を目指しているチームがほとんどになりました。なので我々はその土壌をしっかりと固めてあげて、上に行きやすいようにしてあげたいですね。その準備期間を提供したいです。

我々はリーグの参加費を30年間据え置きにしているので財政は逼迫しているのですが(笑)。ただ分担金を上げるのではなく、リーグがスポンサーをとって、チームの負担を軽減していきたい。そしてその分を各クラブが集客に向けられるようにしていきたい。

それが我々の使命ですし、そのためにスポンサーを獲得して、政策をしっかりと打っていく。そしてチームは地域に目を向けて、ファンをいっぱい集めていく。そのようなリーグになれば、もっと盛り上がる大会になると思います」

Jシーズン移行の影響は?

――来年からJリーグやJFLが秋春制に移行します。言えないこともあるかもしれませんが、地域リーグとして現在どんな構想を持っていますか?

「ちょっと迷惑な話ではありますが(笑)、我々よりも上部のリーグが秋春制に変わるということで、地域リーグもそれに準じたやり方をしなければならない。JFLの動きをしっかり見極めて、落ちてきたチームをちゃんと受け入れることも我々の使命です。

そのような繋がりを意識しながら、我々のところに所属しているチームが年間通してサッカーを楽しめる環境を作っていきたいと思います」

――大学のBチームが入っているリーグでもありますし、学生との兼ね合いもありますしね。

「他にも府県リーグ(各都道府県ごとのコンペティション)もありますし、シーズンを移行するのはさらに難しいものになります。これまでは関西リーグと府県リーグの入替戦もやっていましたが、自動的に昇降格が行われるような仕組みも作らなければならないと思っています。

また他に考えているのは、秋春制になって今より地域リーグのカレンダーを広げられる可能性があることです。運営委員会でも話しているものなのですが、現在は1部と2部にそれぞれ8チームが参加しているところを、各10チームずつくらいの編成にして、リーグの試合数を増やしていきたいと。

さらに併せてこのカップ戦もやっていくような、より充実したやり方を検討したいと思っています」

――柔軟に動けることも地域リーグの良さですね。これからの関西リーグに期待したいと思います。

最後にサッカーファンへメッセージを。

「ファンの皆さん、ここはいろんな思いを持ったチームがいるリーグです。ぜひ試合会場へと足を運んでいただいて、一度ゲームを見てほしいです。

今まで見てくださっていた皆さんも、ぜひその頻度をもう少し高めていただいて(笑)。もっともっと見にいただけるように我々も努力していきますので、今後ともなにとぞよろしくお願いいたします」

――ありがとうございました!

JリーグとJFLの差が少なくなり、昇降格も行われるようになった日本サッカー。実際、JFLと地域リーグとの差もかなり縮まってきており、実力差もそれほど大きくはない。これは日本サッカーの裾野の拡大、草の根のレベル上昇が現れているものでもある。

その中で、「プレーヤーのための地域リーグ」に加えて「ビジネスとしての地域リーグ」「エンタメとしての地域リーグ」という性格も必要になっている。いま大きな変化を求められている関西リーグの未来に注目したい。

また、この次の記事ではリーグの新たなパートナーとなった株式会社ラピスネット、株式会社コトネットエンジニアリング、近畿電機株式会社に「なぜいま関西サッカーリーグと手を結んだのか」と聞いてみたインタビューをお届けする予定だ。

編集部おすすめ