
昨季までJ3だったY.S.C.C.横浜(以降YS横浜)が危機的状況にある。
現在JFL(日本フットボールリーグ)全16チーム中16位と地域リーグへの自動降格圏に位置している。
Jリーグクラブ経験したチームが地域リーグへ降格すれば、史上初の出来事となる。
いまYS横浜に何が起きているのかを解説する。
昨季在籍20選手が退団と苦境からのスタート
昨季J3で19位となったYS横浜は、JFLで2位に入った高知ユナイテッドとのJ3・JFL入れ替え戦に回り、2戦合計1-3で敗れた。実質的な降格であるJリーグ退会ならびにJFL入会が決まった。
これまで計11シーズンにわたってJ3に在籍していたチームは、11季ぶりにアマチュアリーグでのプレーを強いられる。
Jリーグとは違って放映権収入などがないJFLでは、大きな減収が見込まれる。そのためか、オフシーズンに20選手が退団する苦境に陥ってしまった。
1月8日時点で補強ゼロという状況だったが、突貫作業のように大補強を敢行。リーグ開幕までに22選手を補強した。
中にはJ1通算208試合に出場したMF高橋峻希(7月31日に契約満了)も加入するなど経験のある選手も名を連ねた。
V・ファーレン長崎でプレーした高橋。今季はYSCC横浜へ入団するも、7月末に退団そして指揮官には約10年にわたって名将ミハイロ・ペトロヴィッチ氏をコーチとして支え続けた長嶺寛明監督が就任。パスを丁寧につなぐポゼッションフットボールを志向するチームが誕生し、新シーズンに臨んだ。
昨季までJ3にいたプロクラブだったが、群雄割拠のJFLでは苦しむのではないのかという予想が大半だった。
そして、ふたを開けば悪夢のようなシーズンが待っていた。
指揮官の契約解除と泥沼の5連敗
第6節FCTIAMO枚方戦までは順調なスタートを切っていた。第6節まで3勝1分2敗と勝ち越しており、アマチュアチームの名門Honda FCとは開幕戦でスコアレスドローと悪くない序盤戦だった。
ところが第7節から10試合勝利なしと、長いトンネルに突入してしまった。パスは回るがゴールまで届かない、ボール保持率が高くても相手の鋭いカウンターを受けてしまうといった具合で、袋小路に迷い込んでしまった。

7月10日に長嶺監督との契約を解除し、同月17日に尾松剛新監督が就任した。
新体制初戦の第17節マルヤス岡崎戦で2-1で勝利するも、第18節から泥沼の5連敗を喫した。
戦術のコンセプトが分かりづらいサッカーを終始しており、直近5試合で2得点11失点と攻守において機能不全に陥っている。
現在地域リーグ自動降格圏である最下位に位置するチームは、このまま終わってしまうのかと多くのサポーターから不安視されている状況だ。
泥沼から抜け出せられるか
何が原因で泥沼に陥ってしまったのだろうか。最大の責任はフロント、強化部にあると思われる。
まず昨季JFLへ降格したという事実もあるが、今年1月8日時点で既存20選手の退団と補強がゼロだったことを考えても後手後手の対応になってしまった。
元Jリーガーを多く集めたとしても、監督が志向するサッカーと選手のタイプが異なれば戦術は成り立たない。

さらにいえば、長嶺監督を解任後に尾松監督が就任するも、5連敗と状況が悪化している。結果論からいえば、指揮官の選定の甘さもあったと思える。
降格が決まってからの後手後手の対応を見るに、今季を勝ち抜くための戦略に甘さがあったとしか思えない。ただJFLは終盤戦に入りつつあるため、戦略の甘さを見直す、検証するといった時間はもう残されていない。
現有戦力で白星を一つでも多く勝ち取って残留に向けて動き出さなければいけないが、果たしてYS横浜は長いトンネルを脱することができるだろうか。