
[J2第3節、ジェフユナイテッド千葉 3-2モンテディオ山形、3月1日、千葉・フクダ電子アリーナ]
千葉が山形を3-2で下し、クラブ史上初の開幕3連勝を飾った。
ボランチで先発出場した副主将MF田口泰士(たいし)は長短を組み合わせたパスで攻撃をけん引すると、0-1で迎えた前半23分にアシストを記録。
難敵相手に渾身のアシスト
2018年以来勝てていなかった難敵・山形との一戦は、クラブ史上初の開幕戦3連勝を懸けた戦いだった。
昨季のJ2最終節では、J1昇格プレーオフ(PO)進出まであと一歩のところで山形に0-4で大敗。その試合をスタンドから観ていた田口は「本当に大一番だと思っていた」と強い気持ちで、この日のピッチに立った。
「クラブとして、この一戦に懸ける想いは強いものがありました。サポーターの方々にも、山形戦ではしばらく笑顔を届けられていなかった。その想いを選手たちはみんな持っていました」
今季もチームをけん引するMF田口泰士背番号4はボランチで先発出場。2020年シーズンから千葉へ加入し、ファンと同僚から一目置かれるサッカーセンスとパスセンスで攻撃をけん引してきた33歳のプレーがこの日も光った。
1点ビハインドで迎えた前半23分に、FW林誠道(まさみち)からの落としをボックス前中央で受けると、相手を引き付けてから横山に渾身のラストパスを出した。これを背番号10が倒れ込みながら右足でニアサイドへ突き刺し、同点に追いついた。
「ワンタッチでミチ(林)にパスを当てて(ボックス前へ)入っていって、そのままパスを出すところはイメージ通りでした。あとはヨコ(横山)がやってくれただけですね(笑)」と今季初アシストを振り返った。
その後、両チームは互いに1得点ずつを追加。一進一退の攻防が続き、どちらに勝ち越し弾が生まれてもおかしくない状況だったが、勝利の女神はホームチームに微笑んだ。
昨季辛酸を舐めたベテランたちが奮戦
千葉は後半9分に右サイドでフリーキックのチャンスを獲得した。プレースキッカーのMF日高大(まさる)から供給されたボールはゴール前に飛び込んでいた田口の頭上を通り過ぎたが、相手ゴールキーパーがキャッチミス。これをDF鈴木大輔主将が頭で押し込んで勝ち越しに成功した。
鈴木は「泰士がニアで潰れてくれた」とチーム全員で奪った決勝点だったと強調。クラブ在籍5年目となった35歳のキャプテンは、苦楽をともにしてきた田口と交わした試合前のやり取りを明かした。

「きょうみたいな大一番で『自分たちの価値を発揮しようぜ』と二人で言っていた。ここで背中で見せられなかったら、自分たちはチームにいる価値がないというか。『こういうときこそ俺らでしょ!』という気持ちを持って入りました」
田口は後半28分にベンチへ下がるも、タッチライン際で仲間を鼓舞。終始立ち上がりながら、手に汗を握った。
千葉は終盤に山形の猛攻を受けるも、イレブン全員で決死のクリアを続け、試合は3-2で終了。
試合終了のホイッスルが鳴り響くと、田口はゴール裏に向かって両手を高く突き上げて感情を爆発させた。「きょうも最高な応援をしてくれたみなさんに勝点3をプレゼントできた。自然と『やったぞ』という感じで出ちゃいましたね」と声を枯らして応援し続けたサポーターへの感謝を口にし、真っ先にキャプテンの元へ向かって、昨季辛酸を舐めたベテランが互いの健闘を称え合った。

千葉は次節、今月9日午後1時5分より大和ハウスプレミストドームでJ2北海道コンサドーレ札幌と対戦し、開幕4連勝を目指す。
まだまだ衰え知らずのプレーメーカーは「三つ勝っただけ」と、すぐさま気を引き締めた。
「常に危機感は持っています。みんなも間違いないなくその気持ちでシーズンに入ったと思う。ただ、メンバーに入っていない選手も含めたチーム全員で最高の練習ができている。“高め合い”みたいな部分がチームとして良い方向に出ていると思うので、この3連勝にびっくりはしていないです。勝つための準備をみんなでしていきます」
千葉をよく知る男たちに慢心はない。田口は17季ぶりのJ1復帰に向けて、これからも背中でチームを引っ張る。
(取材・文 浅野凜太郎)