
[J2第6節 いわきFC0-1 FC今治、3月23日、福島・ハワイアンズスタジアムいわき]
いわきは0-1で今治に敗れ、3分3敗でJ3自動降格圏内の19位となった。
前半42分に得点機会阻止によりGK早坂勇希が退場し、交代で投入された大卒ルーキーGK松本崚汰(りょうた、東京国際大出身)がプロデビューを果たした。
それでもこの敗戦を糧に次節こそ、今季初の白星を勝ち取ると誓った。
逆境のプロデビュー戦で大健闘
プロデビューは逆境からのスタートだった。
カウンターから抜け出した今治FWウェズレイ・タンキを早坂が交錯する形で倒してしまい、先立圭吾主審から得点機会阻止によるレッドカードを提示された。
レッドカードを提示する先立主審(右はじ)一人少ない危機的状況の中で、MF大西悠介に代わって松本を投入。大卒ルーキーと思えない堂々としたプレーで数多くのピンチからチームを救った。
期待のルーキーは「いきなりの(プロ)デビューになりましたけど、キーパーというポジションは何があるか分からないということを頭に置きながら毎試合準備していました。(試合には)いい入りができたので、いい緊張感を持ってリラックスできました」と、大卒新人らしからぬ強心臓ぶりを見せつけた。
前半は強い向かい風に苦しむいわきイレブンだったが、ゴールマウスを守る背番号21は強風を切り裂くような飛距離のあるロングフィードを披露。

「自分の中でロングキックは飛距離が出せるところも武器なので、そういうところは狙っていました。前半の入りのゴールキック2本が結構うまくいけたので良かったと思います」と手応えを口にした。
敗戦をバネに今季初白星をファンに届ける
後半18分には相手枠内シュートを右手1本でスーパーセーブを見せるなど、プロデビュー戦とは思えないパフォーマンスでゴールを死守。184センチの身長を目一杯使ったハイボール処理で数的不利のチームを救い続けた。

ただ今治の猛攻は時間の経過とともに鋭さを増していき、後半37分にセットプレーの流れから相手のミドルシュートを弾き出すも、クリアボールからクロス性のシュートを処理し切れずに痛恨の失点を喫した。

体を張って奮闘し続けた松本は「(シュートの)軌道が変わったというか、ちょっと伸びてきて。そこに上手く対応しきれなかったという部分があります」と肩を落とした。
試合終盤の被弾に一人少ない赤きイレブンは反撃の余力がなく、この失点が決勝点となってしまった。試合後にたった一つのミスで勝点を逃す悔しさから涙を流した守護神は、田村雄三監督から叱咤激励を受けたという。
逆境の中でのプロデビュー戦となったが、それでも観客3818人の大歓声の中でプレーできた経験は大きな財産だ。
「たくさんのファンの方がいる中での試合は初めてでした。すごく力強い声援も自分のパワーにできました。これだけの環境でやれていることをしっかり感謝して、ファン・サポーターの皆さんに勝利を届けたいですね。
自分たちも勝点3をほしいと思っていますし、ファン・サポーターの皆さんもほしいと思っている。いい準備をして、必ず勝てるように次の試合に向けて準備していきたいです」と前を見据えた。
チームはJリーグYBCルヴァンカップ1stラウンド1回戦RB大宮アルディージャ戦を26日午後7時にアウェイで戦い、30日午後2時に水戸ホーリーホックと敵地で対戦する過密日程の真っただ中だ。
アウェイ連戦を総力戦で乗り切らなければいけない中、30日のリーグ戦は早坂が出場停止のため、松本の出場が見込まれる。

ほろ苦いプロデビュー戦となってしまったが、次の出場試合で挽回しなければならない。プロ初敗戦の屈辱をバネにして、パワフルなプレーで今季初の勝ち星を松本が手中に収めてみせる。
(取材・文 高橋アオ)