
J3福島ユナイテッドFCは24日、福島県福島市内でホーム・ヴァンラーレ八戸戦(27日午後1時、とうほう・みんなのスタジアム)に向けた練習を公開した。
前節アウェイFC大阪戦(22日)で1-7と大量失点で敗北を喫した福島だが、守護神たちはクリーンシート達成のために燃えている。
チームが誇る2枚看板GKの上田智輝、吉丸絢梓(けんしん)がGKチーム一丸となって10試合ぶりの完封勝利を誓った。
失点が多い守備を一丸で改善に励む
この日行われたGKトレーニングでは上田、吉丸、安西駿、田中雄大と計4人の守護神たちが八戸戦に向けてトレーニングに励んだ。時折笑顔も見られるほど和やかな雰囲気でアップが行われ、シュートストップ練習では真剣な表情でボールを弾いた。
鋭いシュートを食い止める上田前節FC大阪戦で7失点と大敗を喫した。
この試合に先発した上田は「7失点は受け止めなければいけないと思っています。ずっと失点が続いているので、どこかで断ち切らなければいけないと思っています。次の八戸戦まで時間はないですけど、コミュニケーションの部分などで、なんとか改善できるところがあります。自分らの意識で改善できる部分があると思う。 選手同士で話す時間もすごく大事だと思うので、できることをしっかりやって向かっていきたいです」と改善策を口にした。
福島は17節を消化してクリーンシートがわずか3試合と、守備面で大きな課題を抱えている。次節ホームで開催される東北対決では、何としてでも失点を回避して3試合ぶりの白星をつかみたい。
吉丸は「失点が多いことはGK4人が重く受け止めている。ただキーパーが防げる失点だったかといわれると、難しいシチュエーションが多いので、チーム全体で変えていかないといけない」と上田を擁護しつつ、チーム一丸となって課題に向き合う姿勢を示した。

これまで吉丸がリーグ戦9試合、上田が同8試合ゴールマウスを守った。二人は切磋琢磨し合うライバル関係であるが、一丸となって守備の問題と向き合っている。
「練習でやったことしか試合ではできないと思います。練習のシュート、クロスに対してどれだけ意識を持って迎えるか。練習の中でのゲームでも失点しないなど、そういう甘くなったところに対して、強く言うなど意識として変えていかないといけない。 そこで緩さが出てしまったら、試合でも出てしまうと思う。キーパー陣で僕と絢梓が一番上の立場の年齢にいるので、そこは僕と絢梓がしっかり発信していかないといけないと思います」と上田。
チームを守る2枚看板の守護神は、リーダーシップを発揮してこの難局を乗り越える構えだ。
零封で勝つ準備はできている
リーグ開幕守護神を務めた吉丸は、4月23日に開催されたアスルクラロ沼津戦から先発出場機会を失っている。それでも黙々とメニューを消化しながら、ぎらつくような視線でボールをキャッチしていた。

「出ているときも、出ていないときもやることは、変わらないと思っている。試合に出るとなったときの準備を出ていないときはするし、試合に出ているときは出る準備をするという面では変わらない。 自分のパフォーマンスを出せればいいと思っているので、そこの準備はできていると思います」と意欲を見せた。
正守護神争いに沸々と闘志を燃やす吉丸だが、練習中のメリハリを意識している。
「キーパー全体の雰囲気は失点をしているけど、雰囲気を悪くしないで、いつも通り練習でプレーして試合に出る選手を送り出すことができれば、出る選手も気持ち良くプレーできるのかなと思っています」と調和を重んじている。
失点はGKだけの課題ではなく、チーム全体の課題だ。失点をすれば矢面に立たされやすいポジションなだけに難しさはあるが、吉丸はこの問題を冷静に捉えている。
「いいシュートが入れば失点してしまう。どうしてもキーパーというポジションはリアクションになる。前を動かしたりというプレーはもうちょっと必要になってくるのかなと思っています」とフィールドプレイヤーに指示を出して、GKだけでは食い止められない失点を減らす構えだ。

リーグ戦9試合連続失点と悪い流れを断ち切れないでいる状況だが、背番号22はポジティブな面持ちで試合を見据えている。
「ここまで失点が続いているので、ゼロで勝てれば一番いいと思う。うちの選手だったら点を取れるので、ゼロに抑えれば勝つ確率はかなり高くなると思う。ゼロにこだわるところで頑張っていきたい」と意気込んだ。
高校時代から続く良きライバル
吉丸からポジションを奪い取った上田は、吉丸がナイスセーブを見せれば、背番号1も負けじと難しいボールを処理した。

「絢梓が頑張れば、僕も頑張ろうと思います。また僕が頑張れば絢梓も頑張ろう思っていると思う。僕と絢梓が頑張れば、下の世代の雄大や駿にいい刺激になっていると思う。絢梓のプレーを見ると勉強になりますし、そういうところを盗んでとか、全員が成長していければもっといいチームになってくると思う。1年間通して、ライバル、仲間として助け合っていきたい」と口にした。
二人は高校時代、関西の名門Jクラブアカデミーでしのぎを削った仲だ。吉丸はヴィッセル神戸アカデミーで守護神を務め、上田は京都サンガアカデミーでゴールマウスを守った。高校時代から続く同い年のライバルは、プロの舞台で共闘する関係となった。
「こうやって同じチームでできることは縁だと思います。いいライバルで、いい仲間だと思っています」と白い歯をこぼした。
次節の八戸戦に向けて上田も吉丸と同じで悪い流れを断ち切ろうと奮起している。

「やることは変わらないと思います。 そこでブレたら福島のサッカーではないと思う。次はホームでできますし、お客さんに勝っている姿、もう一度自分たちができることを見せたいです。どれだけ後ろが耐えられるかだと思う。前線は必ず点を取ってくれているので、粘り強さを見せてやっていきたいと思います」と闘志を燃やした。
どんな逆境であろうとも、福島のGKチームは前を向ている。東北対決で10試合ぶりの完封勝利を達成し、チームを勢いづかせてみせる。
(取材・文・撮影 高橋アオ)