
[天皇杯ラウンド16、J1浦和レッズ 2-1 J2モンテディオ山形、8月6日、NDソフトスタジアム山形]
浦和は山形を下して、天皇杯初戦を突破して準々決勝へと駒を進めた。0-1の後半16分にMF金子拓郎が同点とし、同40分にはFW小森飛絢(ひいろ)が決勝弾を挙げた。
この日後半16分に途中出場を果たしたMF松尾佑介は、試合終了間際に吠えるほど悔しがる一幕があった。
松尾が叫んだワケ
試合最終盤の後半49分、松尾は悔しそうに叫んでいた。
悔しそうに叫んだ松尾(右はじ)このシーンの前に、ペナルティエリア前での直接フリーキックを獲得した浦和イレブンは、プレースキッカーを決めるためにじゃんけん大会を開催していた。
「誰が蹴ってもいいと指示があった。(じゃんけん大会は)決勝まで勝ち残りましたけど、最後の最後で敗北を喫しました」とミックスゾーンの柵に寄りかけ、うつぶせるようにして悔しさを吐露した。

松尾が最後に出した一手は『パー』であったが、MF金子拓郎に軍配が上がった。ただ金子のシュートは相手GKにセーブされ、スコアは2-1のまま試合が終わった。
これまで大学時代も含めてフリーキックを蹴ることがほぼなかった松尾。それでも「(自分は)蹴れると思いますけどね。マジで蹴りたかったー(苦笑)」と自信をのぞかせた。
浦和の背番号24は現在、プレースケールの拡張を模索している。
プレースケールを広げようとするスピードスター
松尾といえば爆発的な加速力を生かしたスプリントからのカットインやラインブレイクが持ち味だ。ただこれまで試行錯誤を重ねながらプレースケールの拡張に取り組み続けてきた。

『キック』の部分ではペナルティキッカーを任されてからPKの研究を重ねてきた。
「(PKは)研究しましたね。自分の蹴った後の動画を見返して、自分の形を見つけることができました」
仙台大の後輩は「大学時代の松くんは、(PKを)適当に蹴っている印象しかなかった」というほどだったが、今年6月のFIFAクラブワールドカップのアルゼンチン1部リーベル・プレート戦でプロ初となるPK成功を果たした。

まだフリーキックは本格的な研究に着手していないが、ゴールを決めるビジョンは見えているようだ。それだけにじゃんけん大会の敗北は、叫ぶほど悔しかった。
今後プレースキックを蹴るチャンスを与えられたらと聞くと、「基本的にキッカーは決まっているので、キッカーがいなければ蹴りたいと思いますね」と貪欲だった。
これまで自身のスケールを広げるために、さまざな研さんを積んできた。その意志はキックに対しても変わらない。
「PKキッカーもそうですし、(フリーキックを)蹴るか蹴らないかで、自分の数字にもつながってくる。チャンスがあればやりたい感じです」と、さらなる進化を遂げようとしていた。
次戦は9日午後6時にアウェイでJ1第25節横浜FC戦を迎える。プロデビューを果たした古巣との対決で、新しい松尾佑介を披露することを期待したい。
(取材・文・撮影 高橋アオ)