
[総理大臣杯1回戦、阪南大(関西1部)1-2日本体育大(関東1部)、3日、宮城・七ヶ浜サッカースタジアム]
1回戦が行われ、前大会王者の阪南大は日本体育大に惜敗して初戦敗退となった。
でベガルタ仙台ユースOBのMF工藤紫苑(4年)、FW中田有祐(3年、J2仙台2027年加入内定)は地元宮城で開催された試合に出場して奮闘するも、勝利に届かなかった。
兄とは異なる堅実かつ泥臭いプレースタイル
ピッチ上で勇敢に戦うも、王者は大会を去った。
中盤で先発した工藤は守れば素早い球際への寄せでピンチの芽を摘み、攻めれば素早いパスから攻撃の糸口を作る働きを見せた。
前半16分にMF山田晃市(3年、四国学院大香川西高)が先制するも、同35分に追いつかれ、後半20分に逆転を許した。前大会覇者はパワープレーを駆使して追いかけるも、日本体育大の堅守を最後まで破れなかった。
ボールを刈り取りにかかる工藤工藤は「ディフェンディングチャンピオンという立ち位置でこの大会に臨んで、自分たちはやれるという自信を持ちながら、チャレンジャーの心というか1戦、1戦を戦っていくとチーム共通で認識していました。悔しいの一言ですけど、ここからリーグ戦、インカレもあるので、そこにつなげていくのがいまは一番大事かなと思います」と落胆していた。
兄の蒼生は仙台の下部組織から阪南大へ進学し、2023年から仙台でプレーしている。兄と同じ道を歩み、華麗なパスを操る司令塔の兄と同じポジションを務める弟・紫苑だが、守備力と前線への攻撃参加を得意とするボックストゥボックス型であり、堅実かつ泥臭いプレーを持ち味にしている。
この日も攻守で存在感を見せた工藤は「攻撃の面でも、守備の面でも100点とはいきませんが、もっと潰せる場面、チャンスでシュートを打てる場面、チャンスを作れる場面はあったと思います。そういった面をもっと磨き上げていかなきゃいけないと思っています」
卒業後の進路は現在未定であり、プロ志望の工藤は残りの在学期間中にさらなる成長を遂げてJリーグ入りの切符をつかむ構えだ。
「自分の長所はボールを奪って、そこから攻撃の起点になれるプレーに自信を持ってできていると個人的に思っています。あとはアシスト、得点と目に見える結果を、出していかないといけないですね。残りの大学サッカーはもう半年もないですし、少ないですけど、練習からリーグ戦も含めて、一歩ずつ、結果を出せるような選手になっていけたらと思います」と意気込んだ。
仙台内定FW中田は先輩たちのために
後半11分から投入された身長189センチの長身ストライカー中田は、ゴール前でのポストプレーで起点を作ろうと奔走した。
セットプレーでは体格を生かした空中戦で違いを生み出そうとするも、ほしいポイントにボールは来なかった。

「自分が出ていない前半からほとんど相手に怖さを出させないままいい状態でいっていた。勝てそうな試合だっただけに、本当に悔しい気持ちですね」と唇を噛んだ。
今年3月17日にアカデミー時代に所属していた仙台への2027年加入内定と特別指定選手承認が発表され、6月15日に開催されたJ2第19節モンテディオ山形とのみちのくダービーでプロデビューを果たした。
既にリーグ戦5試合に出場しており、徐々に出場時間を伸ばしている。この日試合があった七ヶ浜町は2022年から仙台のホームタウンに追加され、仙台サポーターも中田のプレーを一目見ようと会場に訪れていた。
「宮城開催ということで、たくさんの仙台サポーターの方々が気にかけてくれているので、本当に感謝の気持ちでいっぱいです」と感謝しつつも、「仙台の活動に参加させてもらっているので、まずは違いを見せなきゃいけないという思いで臨みました。その上でチームを勝たせなきゃいけないというのは、絶対条件だっただけに、何も仕事ができず、ふがいないという気持ちです」と肩を落とした。
プロ内定者として違いを生みだせなかった悔しさは、今後のリーグ戦や全日本大学選手権(インカレ)にぶつける。
そして、まだ進路が決まっていない先輩選手たちのためにも身を粉にしてチームのために奮闘する覚悟だ。

「自分はもう進路が決まっていますけど、うちにはたくさんいい選手がいっぱいいて、みんな自分と同じようにプロ入りを目指して頑張っています。
きょうは負けちゃいましたけど、去年優勝までして勝ち続けないと、チャンスは広がってこないと思う。本当にきょうは悔しいです。まだインカレもありますし、リーグ戦も残っていますので、(進路未定の先輩たちの)アピールの場を増やすために、一つ、一つ、頑張っていきたいと思います」と言葉に力を込めた。
地元で悔しい結果に終わってしまった仙台アカデミーOBたちは、既に前を向いている。遠い大阪の地で競技に励む青年たちは、夢を実現させるためにさらなる成長をとげて冬のインカレで雪辱を果たす。
(取材・文・撮影 宇田春一)