
[J2第24節、ジェフユナイテッド千葉 2-2 いわきFC、8月2日、千葉・フクダ電子アリーナ]
2位千葉は14位いわきに引き分け、今季3度目のリーグ戦2連勝とはならなかった。
先月17日にJ2モンテディオ山形から完全移籍で加入したMFイサカ・ゼインは、この日が千葉でのデビュー戦となった。
立ち上がりから持ち前の推進力を生かした突破でチャンスを作り続けたイサカは、後半24分に加入後初アシストを記録。サポーターの目の前で存在感を見せた。
味方になったジェフキラー
きのうの敵は、きょうの友。千葉にとってこの上ない脅威だったイサカが味方として躍動した。
古巣の山形では今季リーグ戦23試合に出場。対千葉戦では通算7試合2得点4アシストを記録するジェフキラーとして、第3節の対戦時にもゴールを奪っていた。
イサカは同節以来のフクアリについて「敵としてやるのは嫌なスタジアムだった。でもいまはそれが後押しになっていると強く感じます。サポーターと一体で戦える感覚は、このスタジアムならではだと思います」と胸を高鳴らせた。
クロスボールを上げるイサカ右サイドで先発出場した背番号42はいきなりチャンスを演出した。
前半10分に右サイドでボールを受けると、相手ディフェンダー二人の間を力強く突破し、ピンポイントクロスを供給。大外で合わせたMF椿直起のボレーシュートは枠を捉えられなかったが、新顔の好プレーにスタジアムが沸いた。
さらに同39分には、右サイドバックのMF髙橋壱晟(いっせい)が自陣ハーフウェーライン前から出したスルーパスに反応。

「中断期間の時間があったので、(仲間と)コミュニケーションは取れていましたし、もともと(千葉の選手が)どういうプレーをするのかは分かっているつもりでした。壱晟は自分に合わせてくれているので、シンプルに考えて動いていました」と、加入間もなくてもチームメイトとの連係は好調だ。
負傷で長期離脱中のFW田中和樹らを下の名前で、両翼を形成する椿にはニックネームであるバッキーと呼ぶなど、中断期間中に仲を深め、息の合ったプレーにつなげた。
イサカらサイドアタッカーを筆頭にして、クロスボールからチャンスを作り続けたが、前半43分に失点。ワンツーからボックス内へ侵入したいわきMF柴田壮介に左足を振り抜かれた。
前半は0-1で終了し、イレブンは1得点ビハインドで後半を迎えた。
新たな槍がデビュー戦で初アシスト
後半はホームチームのペースで試合が進んだ。
千葉の小林慶行(よしゆき)監督は対人に強いFW呉屋大翔(ひろと)とMFエドゥアルドを投入。イレブンはルーズボールを収め、試合の主導権を握った。
同点弾は後半24分に生まれた。
ピッチ中央で相手をはがした髙橋が再びイサカへパスを供給。

「壱晟が個で(相手を)はがしてくれて、いい形でボールを受けられました。マイナスの位置は前半から空いている感覚がありましたし、大翔くんからも『あそこに入れてほしい』と言われていた。
とにかく速いボールを入れようと思い、それがバッキー(椿)まで流れて、最後はゴールに沈めてくれたので、本当にクロスを上げる価値があると思いました」と加入後初アシストを記録した。
勢いに乗った千葉は同30分に、途中出場のMF日高大(まさる)がボックス前から直接フリーキックを叩き込み逆転。そのまま逃げ切りたかったが、8分後にはセットプレーからいわきDF深港壮一郎(ふかみなと・そういちろう)にヘディング弾を決められた。

試合はそのまま2-2で終了。イサカは最後までハードワークし続け、千葉の新たな槍として存在感を放ったが、「悔しさが残ります」と唇を噛んだ。
「ホームで最高の後押しがあったからこそ、勝ち切りたかった。逆転はできたので、もう1、2得点取るような攻撃を突き詰めていきたい」と次節こそ勝利したい。
千葉は今月9日の午後7時からNACK5スタジアム大宮で4位のRB大宮アルディージャと対戦。
イサカは離脱中の田中らに代わり、自分がチームを率先していくと誓った。

「和樹や他の選手がここまでやってきた想いを背負わなければいけないですし、自分はそれを求められて(千葉に)移籍してきた部分もある。優勝や昇格が狙えるチームなので、それを達成するためには必ず自分の力が必要になると思っています」と、イレブンは17季ぶりのJ1復帰に向かって再発進する。
(取材・文 浅野凜太郎、写真 縄手猟)