
[J2第11節、ジェフユナイテッド千葉3-1 ブラウブリッツ秋田、4月25日、千葉・フクダ電子アリーナ]
千葉は2023年9月9日以来勝てていなかった秋田を3-1で下し、17季ぶりのJ1復帰へ弾みをつける4連勝を飾った。
2トップの一角で先発出場したMF横山暁之(あきゆき)は攻守で奮闘したが、自身のパフォーマンスを「最低限」と評価。
悔しさをあらわにした背番号10の居残り練習
今季から背番号10を背負う男が葛藤していた。
「ずっとボランチで出場していた中で、タスクがいろいろとありました。だけどやっぱり自分の一番のストロングは狭いところでターンして、ゴールに向かってチャンスクリエイトをする部分なので、(自分のプレーが)物足りないなと思っていました」
J2開幕のいわきFC戦(2○0)で1得点1アシストを記録し、チームを勝利に導いた。その後も先発出場を続け、ここまで3得点2アシストの活躍でクラブ史上初の開幕6連勝などに貢献していたが、本職のトップ下から一列下がったボランチでのプレーは守備でのタスクが求められるため、なかなか思うように攻撃参加ができないもどかしさを感じていた。
ドリブルで攻め上がる横山「もちろんチームの勝利が大事ですけど、その上で自分は得点という形で貢献しなければいけない立場だと思います」と、エースナンバーを背負う責任がある。だからこそ前節は「言葉にできない」ほど悔しかった。
J2第10節で大分トリニータに1-0で辛勝した千葉だったが、この試合で横山は今季リーグ戦初の未出場だった。背番号10のポジションにはMFエドゥアルドが起用され、同選手が超絶ゴラッソでチームを救う姿をベンチから見届けていた。
試合後、歓喜を横目にして一人悔しさをあらわにしている横山が印象的だった。チームメイトと肩を組み、勝利のオブラディオブラダを歌う最中もその表情は晴れず。もちろんチームの勝利はうれしかったが、それ以上に自分の力不足を感じていた背番号10は人知れず、練習拠点のユナイテッドパークで居残り練習を行っていた。
「もちろんエドゥが得点したというのもありますし、やっぱり自分自身がもっとゴールに向かってチャレンジしていく回数を増やさないといけない」と納得がいくまでシュート練習を繰り返した。
最低限と評価した秋田戦のパフォーマンス
そして迎えた秋田戦。リーグ戦通算対戦成績1勝1分6敗で、これまでに4得点しか奪えていない堅守の相手に対して、横山は2トップの一角で先発した。
今季の千葉ではそのポジションをFW石川大地が務めていたものの、同選手はこの日欠場。ドリブルとパスで局面を打開でき、なおかつ身体を張って闘える横山が本職の位置に戻った。
「トップ下やインサイドハーフで出場するなら、いつも以上にトランジションや(ゴールにつながるプレーの)回数が増えるだろうと思っていた」と久しぶりに定位置で出場したが、秋田のハードワークが横山の自由を封じた。

序盤からロングボールを多用し、激しい球際と徹底されたハードワークで千葉に挑んだアウェイチーム。前半6分に奪ったエドゥアルドの先制弾後もそのスタイルは変わらず、セカンドボールの回収が勝負の明暗を分けた。
背番号10は守備で奮闘。自陣ボックス内まで戻り、気迫のディフェンスで五分五分のボールを奪い取ると、そのまま味方へパスを供給し、カウンターにつなげようとした。横山はなかなかゴール前でボールを受けられず、得意のドリブル突破の機会も限られたが、身を粉にした守備で勢いを与えた。
「秋田のやり方に対応していく中で、守備ではバトルの部分やセカンドボールの争いをチームの土台として当たり前のようにやらなきゃいけない」とチームの勝利を第一に考えたプレーだった。

球際の闘いで負けなかった千葉が流れを手繰り寄せた。
試合後、背番号10は「自分が得点を取れなかったという意味では、最低限だと思います」と自身のパフォーマンスを評価。後半47分に訪れたDF河野貴志からの縦パスを決め切れなかったシーンについては「特にあのような場面で確実にゴール、最悪でもシュートまで持っていかなければいけない」と反省点を口にした。
横山は29日の午後2時にえがお健康スタジアムで行われるロアッソ熊本との次節で、リーグ戦6試合ぶりの得点を目指す。自身の「存在意義」について自問自答し続ける背番号10が、火の国で笑ってみせる。
(取材・文 浅野凜太郎、写真 縄手猟)