
[J2第20節、RB大宮アルディージャ0-0サガン鳥栖、21日、埼玉・NACK5スタジアム大宮]
3位の大宮はホームに鳥栖を迎えてスコアレスドローとなり、リーグ戦4試合連続の引き分け決着となった。
この日、センターバックとしてフル出場したU-20日本代表DF市原吏音(りおん)は、ディフェンスリーダーとして後方からチームを統率し、体を張った守備で奮闘。
リーグ戦4試合ぶりの無失点に顔を上げる
大宮の若きディフェンスリーダーは、きょうの完封を自信に変え、今後の優勝争いに向けて巻き返しを誓った。
11シーズンぶりのJ1復帰を目指してJ2優勝争いを繰り広げる大宮だが、天皇杯1回戦で敗退して以降はリーグ戦3試合連続ドローと足踏みしている。さらにこの3試合で6失点を喫しており、“得点は取れるが失点してしまう”課題に悩まされている。
試合は前半から両チーム合わせて3枚のイエローカードが提示される荒れた展開となった。
激しい身体のぶつかり合いが続く中、大宮の背番号4は的確な守備対応を見せて、何度も五分五分のボールをマイボールにした。
光る守備を見せた市原だが、「前回の試合で(足を)つってしまって、それが治っていなかった」と、この試合を満身創痍で挑んだと明かした。
続けて同選手は「きょうもつってしまったので、そういうリカバリーはもっと、もっと上に行くために必要になると思う」と、今後優勝を争っていく上で、コンディション管理も重要になっていくと語った。
拮抗した展開が続いた後半36分に、コロンビア人FWファビアン・ゴンザレスがPKを獲得して大宮にビッグチャンス到来。しかし、FW豊川雄太が蹴ったPKは相手GKに止められ、絶好の得点機会を逃した。
ビッグチャンスを逃した大宮は直後、今度はハプニングに見舞われた。後半40分の大宮のコーナーキックの混戦で、主将のブラジル人DFガブリエウが相手選手を引っ張って倒したとして、きょう2枚目の警告を受けて退場処分となった。
それでも市原を中心としたディフェンス陣が、身体を投げ出して必死に鳥栖の攻撃を跳ね返し、なんとか勝点1を積み上げた。
市原の武器はポジティブ思考
4試合連続のドローに肩を落とす選手もいる中、大宮の若きディフェンスリーダーは、どこか自信にあふれた表情でミックスゾーンに現れた。
市原は「無失点で抑えたところはプラスでしかないですし、最後は10人になってしまうアクシデントもありました。PK失敗もありましたが、後ろは崩れずに(失点を)ゼロで抑えたことはプラス材料です。暑くて湿度も高く、集中力を欠いてしまうところもあったんですけど、結果的にはみんなで声をかけて(失点を)ゼロで抑えられて良かったと思います」と手応えを口にした。
チームが低調なときでも、自分を見失わずポジティブに思考できる点は、市原の武器だ。
「きょうもみんな落ち込んでいましたけど、僕自身は別にそんなに(落ち込んでいない)。特にきょうは無失点で終われたし、これを続けていけば必ず勝てると思います。
ちょっともったいないと思いましたけど、リーグ戦は勝点を積み上げることが大事です。そういう意味では勝点ゼロよりも勝点1がいいです。強いて言うなら勝ちたいですが、こういうときもあります」と、すでに気持ちを切り替えた様子だった。
J2第13節カターレ富山戦にて、チームメイトを鼓舞する市原大宮は次節、今月28日午後7時からアウェイで大分トリニータと対戦する。
大分戦では、市原とともに守備の要として君臨してきたガブリエウは出場停止で欠場となる。
「ガブ(ガブリエウのニックネーム)に頼っているところもありますし、キャプテンとしてチームをこれまで引っ張ってきてくれている。(ガブリエウが)いないときにできないようではリーグ戦を戦えないと思います。僕が抜けたときもみんな変わらず戦ってくれていましたし、(ガブリエウ不在は)痛いですが、それでも勝ちに行きたい。
あのとき(前回の対戦)の自分たちとはぜんぜん違うので、アウェイに関わらず襲いかかります。向こう(大分)も、きょう退場者が出ていたと思うので、状況は一緒です。やることは変わらずに、後ろはゼロで、あとは前の選手が点を取ってくれることを待って勝ちたいです!」とこぶしを握り締めた。
取材では終始笑顔を絶やさなかった大宮の若き大黒柱は、J2優勝、そして11シーズンぶりのJ1復帰へ明るく闘志を燃やしている。
(取材・文・写真 縄手猟)