
[天皇杯1回戦、RB大宮アルディージャ0-1筑波大、25日、埼玉・NACK5スタジアム大宮]
1回戦が全国各地で行われ、J2のRB大宮アルディージャは茨城県代表の筑波大に0-1で敗れ、今大会から姿を消した。
この日、3バックの右で先発出場し、前半途中から右サイドバックにポジションを移したDF福井啓太は、昨年まで4年間プレーした筑波大との試合を振り返った。
母校との対戦に『絶対に何が何でもやってやるぞ』
福井の今季初先発となった公式戦の相手は、奇しくも母校・筑波大だった。
大宮の背番号44は試合前に「ほかの選手と比べて、より一層気持ちが入ったシチュエーションだったので、『絶対に何が何でもやってやるぞ』という気持ちで試合に臨みました」と、母校との対戦に闘志を燃やしていた。
だが、大宮は前半開始早々から、筑波大の勢いに押し込まれる展開が続いた。中盤からなかなか前進できず、同大の素早いプレスからボールを失い、ピンチを招く場面もあった。
前半途中、大宮の長澤徹監督が動いた。福井を右サイドバックにスライドさせて、3バックから4バックにシステムを変更。サイドに厚みを与えて、相手のプレッシャーをかいくぐろうと試みた。
久しぶりの公式戦出場という状況下で、普段とは違うポジションでのプレーは簡単ではない。それでも、出場機会に飢える背番号44は「どのような戦術のチェンジであっても、自分は対応する心構えでいたので、右サイドバックになったとしても、ベースのところは変わらないと思う」と冷静にチームの要求に応えた。

大卒ルーキーは相手ウィングとのデュエルで奮闘したが、前半40分に痛恨の失点を許してしまった。
終盤の猛攻も実らず、大宮は0-1で敗戦。筑波大にジャイアントキリングを許し、まさかの1回戦敗退という結果に。NACK5スタジアムに大宮サポーターのブーイングが鳴り響いた。
“福井コール”に複雑な感情「結果を背中で示す」
この日フル出場を果たした福井は、試合後のミックスゾーンで悔しさをにじませた。前回大会では、筑波大の主将としてチームを統率し、Jクラブ相手にジャイアントキリングを達成して3回戦まで勝ち進んだ。
きょうは逆の立場となって天皇杯に臨み、難しさを感じた。
「去年まで一緒にやっていた選手たちを相手にすると嫌だなと。きょうは相手になって(それを)感じて、それでもやらなくちゃいけないところもあって、本当に勝ちたかったという思いが強かったです。やりづらさはもちろんありましたけど、それは言い訳に過ぎません。プロとしての意地を見せられなかったことが一番悔しいです」と唇を噛んだ。

大宮はこれでルヴァンカップ、天皇杯で敗退となり、ポジション確保のために実戦でアピールをしたい福井にとって苦しい状況となった。
大宮の若きDFは「ルヴァン(カップ)も終わって、天皇杯も終わってしまったので、残り22試合にすべてをかけるしかない。現状、自分はリーグ戦で1試合も出られていないので、自分自身に鞭を打って、スタメン組に食ってかかっていけるように、一日、一日の練習や練習試合、すべてをかけてやっていきたいと思います」とカップ戦敗退を悔やみつつも、できる範囲で全力を尽くしてポジション奪取を狙うと誓った。

この試合後、天皇杯敗退に肩を落とす福井に、母校の応援団は『福井コール』を送って激励した。
それを耳にした同選手は「あれは響きましたね。
母校の期待を背に、大宮のルーキーが自らの真価を証明しようと闘志を燃やしている。
(取材・文・写真 縄手猟)