
今月27日にJ2ジェフユナイテッド千葉に新たなストライカーが加わった。J1横浜FCから期限付き移籍で加入したFW森海渡はサポーターから熱視線を集めている。
身長185センチの千葉県松戸市出身の点取り屋は、2023年シーズンにJ2徳島ヴォルティスでリーグ戦37試合13得点3アシストと結果を残した。
横浜FCで燻っていた未完の大器はどのような選手なのかを解説し、夏季の補強動向についても考察する。
(文・構成 高橋アオ)
大学時代は小森よりも評価が高かったストライカー
森を語る上で圧倒的な身体能力の高さは外せないポイントだ。ボックス内の空中戦の強さ、相手の裏を取る鋭いラインブレイク、そして球威のあるミドルシュートとあらゆるレンジから得点を狙える攻撃力が魅力だ。
千葉の宿敵である柏レイソルアカデミー出身で、下部組織卒団後は筑波大へ進学。U-17日本代表にも選出された大型ストライカーの大学時代は、千葉でJ2得点王にも輝いたFW小森飛絢(ひいろ、J1浦和レッズ)よりも評価が高かった。
ある関東の大学サッカー関係者は「森くんは大学時代はナンバーワンストライカーと言ってもいいぐらいの活躍を見せていました。2021年度は関東大学1部で得点ランキングトップ(チーム成績が上位の選手が得点王となった)でしたし、当時は同学年の小森くんより評価が高かったと思います」と振り返った。
2021年シーズンは関東大学1部で22試合14得点と圧倒的な成績を出した。同年12月に卒業を待たずして大学3年ながら古巣の柏とプロ契約を結んだ。
筑波大時代は大学トップクラスのストライカーと評価された森(中央、黄)ワンタッチストライカーとしての実力は申し分なく、優れた身体能力を生かしたボックス内の決定力は並外れている。そしてボックス外ではすさまじい球威のミドルシュートもあるため、千葉にフィットすれば手の付けられない存在になるだろう。
ただし、複数の懸念点も存在する。
大ケガの影響がどこまで響くか
徳島での活躍もあり、柏でも期待されていたストライカーは、2024年シーズンに横浜FCへと完全移籍した。ただ移籍直後に思わぬ悲劇に襲われた。
同年3月に前十字じん帯を損傷し、この年のシーズンはリーグ戦3試合ゼロ得点に終わってしまった。
今季はリーグ戦2試合ゼロ得点と苦しい状況が続いており、身体能力の高さを売りとする森にとって、前十字じん帯損傷がどこまで大きな悪影響があるのか未知数な部分がある。
過去に前十字じん帯を損傷した選手が「元の動き、プレーができない」と嘆くシーンを多く見てきた筆者は、フィジカルを生かしたプレーで活躍してきた森の復調は簡単ではないと考えている。
またこの懸念点以外にも負傷前から課題とされてきたポストプレーの部分は改善の余地があると見ている。

ボールを収めながら背後からゴールへ向かっていく選手へラストパスを供給するプレーや、相手のマークやプレッシャーを物ともしないボールキープなどは、小森と比較すると見劣りする部分が多い。
ただ非常にクレバーな選手であるため、自身の弱点は理解しているだろう。期限付き移籍で加入した森にとって、この挑戦はプロキャリアにおいて正念場であるため、弱点の克服が求められる。
複数の懸念点は存在するものの、実力の高さと実績は揺るぎないものがある。
柏が大学卒業を待たずしてプロ契約を急いだ逸材は新天地で復活をかけて戦うだろう。千葉サポーターの期待に応えられる実力を発揮してほしい。
次項で千葉の夏季補強を考察する。
推定1億5千万超えのビッグディール小森資金をどう生かすか
今年1月にベルギー1部シント=トロイデンに期限付き移籍していた小森が千葉に復帰するも、今月5日にJ1浦和レッズへと完全移籍した。

この移籍で発生した移籍金は、関係者によれば1億5000万円超えのビッグディールが成立したという。この金額はベルギー『Voetbal』でも完全移籍の際に必要なコストに約90万ユーロ(約1億5100万)であると1月時点で報じていたため、信ぴょう性は高いと見られている。
千葉の歴代移籍金でも上位に入る『小森資金』は17季ぶりのJ1復帰の鍵になるだろう。
あるプロサッカー関係者は「小森選手の違約金以外にもスポンサーも動いていると聞いているので、この夏は大きく動くんじゃないかとJ2クラブは警戒している。6月上旬の特別移籍期間では動かなかったから、夏は派手に動くと予想しています」と話した。
具体的には中盤で球際のデュエルに打ち勝てる守備的ミッドフィールダーやサイドアタッカーやサイドバックの補強が予想されるが、どのような補強をするのかはベールに包まれている状況だ。
夏の補強第1号となった森は完全移籍ではなく、期限付き移籍であるため補強資金はまだまだ余裕があると見られているため、さらなる追加補強や戦力整備が進むだろうと複数関係者は考察していた。
今季の千葉はFWカルリーニョス・ジュニオ、GKホセ・スアレスをフリーで獲得するなど、コストを抑えた大型補強にも成功している。
今後A契約枠の兼ね合いもあり、補強する上での放出も想定されるため、人員整理を含めて動向を細かくチェックしたい。
夏の補強第1号となった森がどのような活躍を見せ、千葉はさらなる補強を進めるのかに熱視線が集まっている。