
[J2第26節いわきFC 0-1 モンテディオ山形、8月16日、NDソフトスタジアム山形]
12位いわきは16位山形に惜敗し、今季2度目の連勝を逃した。
先月16日にJ3ザスパクサツ群馬から加入したMF山中惇希(あつき)が左ウィングバックで先発し、推進力のあるスプリントやクロスで存在感を見せた。
いわきの新たな翼が存在感
群馬から加入したいわきの新たな翼が存在感を見せた。
攻めれば持ち前の運動量と推進力を生かしたスプリントでサイドから鋭いクロスを放ち、守れば粘り強い対人能力で相手の攻撃を遅らせた。
左サイドを駆け抜けた“いわきの新たな翼”山中ただ山形が形成したブロックに手を焼き、ペナルティエリアには思うように侵入できなかった。
山中は「なかなかチャンスシーンが作れなかった。僕らが前半のうちにワイドからいい攻撃を組み立てたり、一つ怖いプレーができれば、チャンスシーンも増やせて、相手に脅威になったかなと思いますけど。そこがなかなか出せなかったので、課題点というか、悔しいところですね」と肩を落とした。
狙いとしては相手右サイドバックと右センターバックの中間のスペースを突く攻撃を求められていたが、コンパクトな守備陣形に苦戦を強いられた。山中は相手サイドバックをつり出すためにデコイランを入れながらスペースを作ろうと奮闘するも、山形の堅いディフェンスラインをなかなかこじ開けられなかった。
「僕がサイドバックを引き出して相手が食いついたところにギャップをつけられたらと思っていました。僕の受ける位置や、駆け引きの部分で、もう少し相手の脅威になれるところに立って受ける、仕掛けるところを、もう少しできたらと思う。そこがちょっと上手くいかなかったと思います」と反省を口にした。
群馬時代から素早いドリブルやラインブレイクからサイドを抉って、スピードが乗ったグラウンダークロスを供給するなどしてチャンスを創出してきた。

この試合では本来の良さを出せなかったが、自分の長所をピッチ上で出すために前を見据えている。
「相手を背中向きにさせるところまで持っていってから、クロスを上げた方がチャンスになります。もう一個得点になりやすい形まで持ってきたかったところがあります。(相手ペナルティエリアの)深いところまで行って、相手を背走させていたら、もう少しいい崩しができたんじゃないかと思う。映像も観ながら振り返りをしますけど、そういう部分はチームでも(ポジションが)近い選手同士で話して、次に向けて改善したいと思います」と山中。
敗戦後でも自分の成長を見据えながら課題と向き合う向上心が背番号27の武器だ。チームを勝利へと導くために、いわきの新たな翼は自身の長所をさらに研ぎ澄ませる。
チームに馴染みつつある新たな翼
科学に基づいた最先端トレーニングで選手を鍛えるいわきは、数あるプロクラブの中でも一線を画す存在だ。トレーニングメニューの適応やいわきの縦に早いフィジカルサッカーなどの適応には時間を要することが多々ある。ましてやシーズン途中加入であれば、チームにフィットするまで苦戦する選手は少なくなかった。
山中は加入してから早くチームに順応し、違和感なくプレーしているように見えた。
「チームの戦術も理解して、やり方も自分の中で落とし込んでいるつもりです。すごくやりやすさを感じていますし、ここでやりにくい部分も全然ない。
加入後3試合連続で先発出場とスタメンの座を確保し、前節ジュビロ磐田戦(3〇1)では初ゴールを決めるなど、チームにとって無くてはならない存在になりつつある。
田村雄三監督も山中に大きな期待を抱いている。

指揮官は「コンディションや、いわきのトレーニングに慣れるのに結構時間がかかりますけど、大分コンディションも整ってきた。きょうで3試合目になりますけど、(出場)時間を延ばしているところです。 試合を重ねるごとに良くなっているので、引き続き点に絡むようなプレーをしてほしい」とさらなる活躍を熱望していた。
指揮官の期待に応えるように、山中も同じ向きの矢印で自身の成長に目を向けている。
「フィジカル面の要素はもちろん、対人で当たり負けないところ、スピード感とキレの部分、左サイドの攻撃や仕掛けのところでの一瞬の速さ、クロスの球のスピードや質の部分は上げていきたいと思います。そこからさらに一個抉っていくプレーや、自分でゴールを取っていけるような選手になっていきたいです」と、いわきでの成長を誓った。

次節は23日午後6時にホームで大分トリニータを迎える。山中は「ホームに戻ってまた試合ができるので、大分を倒して上に上がっていけるようにやっていきたい」と意気込んだ。
いわきが手にした新たな翼は、早くもチームにとって必要不可欠な存在になりつつある。
(取材・文 高橋アオ)