フランス代表FWキリアン・エムバペら多くのサッカー選手を輩出してきたパリ。
元フランス代表MFティエムエ・バカヨコの出身地でもあるパリ14区で今年1月に痛ましい事件が起きた。
1月24日(金)にジュレ・ノエルスタジアムでの練習から帰宅中だった14歳のサッカー少年が刺殺されたのだ。
被害者の母親が、フランスで母の日にあたる5月25日に『Le Figaro』で今の思いを明かした。
「あの子は心優しい若者で、明るく、ハンサムで、たくましかった。愛されたし、愛情深い子でした。
毎週金曜日のように息子は私に電話することになっていました。午後8時少し前、電話をかけてきたのは息子ではなく、彼の親友でした。彼が地面に倒れていて、山刀で刺されたと知らせてくれたのです。
10分もかからずに駆けつけました。消防士、救急隊員、警察がそこにいました。子供の隣に横たわることができました。キスをして、話しかけて、安心させてあげて、お父さんが来ることを伝えました。彼は呼吸が苦しそうでした」
3人兄妹のひとりだった彼は、翌日に息を引き取った。
彼を襲ったのは、16歳と17歳の少年。2人は携帯電話を渡せと被害者に迫ったが、抵抗されたために刺したという。
亡くなった少年の母親は、凶行におよんだ2人が、2021年から暴力的事件を起こし続けてきたにもかかわらず、適正な措置が講じられていなかったと指摘している。
裁判所から2人でつるまないように接近禁止令が出されてたというが、事件当時は一緒にいた。
母親は「少年裁判所の裁判官は、2人の住所も確認せず、同じ住居に住んでいることも知らずに、2度も(2023年と2024年)接触禁止を命じたのでしょうか」と指摘。また、「フランスにいる何千人もの若者と同じように、練習帰りのサッカー選手のことを誰がバカにするのでしょうか?4ヶ月間、その答えを待っていましたがが、何も見えてきません」とも嘆いている。
地元住民は「14歳でサッカーから帰ってきたら、こんな風に死んでしまうなんて本当に悲しい」と悲嘆に暮れていたというが、地元議員は「14区の南部は環状道路に面している。住民の9割が公営住宅に住み、経済活動も社会活動もなく、夜に開いているレストランもない。放置された地域」と語っているという。