
[総理大臣杯決勝戦 関西学院大(関西1部)0-1東洋大(関東1部)、13日、宮城・キューアンドエースタジアムみやぎ]
2年前に同杯準優勝だった関西学院大は9大会ぶり2度目の日本一を目指すも、準Vに終わった。
メンバーは深く落胆していたが、冬の全日本大学選手権(インカレ)での奪還に照準を切り替えていた。
2年前の雪辱を果たせず
こうも日本一の道のりは険しいか。
前半は激しいプレッシャーに主眼を置いて鋭いカウンターで昨季インカレ王者を追い詰めた関西学院大。今年こそは夏の覇者になるという気迫をピッチ上で見せるも、ゴール前での決定力を欠いた。
ボールを保持する東洋大は次第に反撃の手が増していき、後半38分に東洋大MF鍋島暖歩(はるむ、4年、V・ファーレン長崎U-18)に決勝点を許して万事休す。
あと一歩のところで西の名門は力尽きてしまった。試合終了の笛が会場に鳴り響くと崩れるように青いイレブンはピッチに倒れ込んだ。
2年前の決勝にも先発したDF古田東也(3年、長崎U-18)は「2年前に準優勝したんですけど、この大会のためにみんな準備してきました。同じ方向をみんなが向いてこれて優勝できなかった。とても残念に思います」と深く落胆していた。
この日はセンターバックとして先発出場し、相手の楔のパスを何度もシャットアウトする活躍を披露。守れば身体能力を生かした球際の守備と対人の強さで相手アタッカーを抑え込み、攻めれば精度の高いロングフィードを展開して存在感を見せた。

それでも高校時代に在籍していたアカデミーの先輩に決勝点を許してしまった。
「暖歩くんと初めて対戦しましたけど、めちゃくちゃ成長していて、自分はまだまだだなと思いました。
ただこのままでは終われない。西の名門として過去に夏優勝1度、冬優勝1度と大学サッカー界でその名を轟かせてきた。インカレで10大会ぶりの日本一奪還を目指す。
「インカレで東洋とできるかは分からないですけど、日本一というのは変わらないと思う。全国の舞台で自分がどう(実力を)発揮するかによって、チームのパフォーマンス自体が変わってきます。自分がもっと練習から質を高く全国レベルで発信していけたら、もっと優勝に近づくかなと思います」と意気込んでいた。
2年前はベンチから眺めた決勝戦
この日東洋大を最も苦しめた選手は守護神だった。GK宮本流維(4年、名古屋グランパスU-18)は優れた反応を駆使して何度もビッグセーブを披露。まさに赤い壁としてチームを窮地(きゅうち)から救い続けた。

そんな宮本だが、2年前はベンチから決勝戦を眺めていた。あのときの歯がゆさをバネにここまでたどり着いたからこそ、この日優勝杯を掲げたかった。
「総理大臣杯の負けだけじゃなく、今年を除いた3年間本当に苦しい思いをしてきて、やっと自分がチームを勝たせるチャンスがあって。その悔しさをバネにしてやってきたんですけど、結果として最後に負けてしまった。自分の取り組みにまだまだ甘さや弱さがあったかなと思います」と唇を噛んだ。
2023年大会に続いて準Vに終わったが、既に次を見据えてイレブン各々は自分たちにベクトルを向けている。今季スローガンに『凡事徹底』を掲げるチームは、日々の練習から勝てなかった要因や課題を見つめ直す。
「まず決勝に勝てなかったことは何か要因があるわけで、自分たちの練習の中でしか見つけることができないです。詰められることができるのは練習だと思います。あとは、今年は『凡事徹底』を掲げていて、ピッチ以外の部分で荷物を並べること、あいさつと、本当に当たり前のことを当たり前にやります。幹部の人たちが中心に当たり前のことを投げかけているので、人として当たり前のところから立ち返って、一つ、一つ積み上げていければいいかなと思います」
2015年に夏冬全国制覇を達成した名門はタイトルに飢えている。10年前に果たした日本一を何としてでも冬で成し遂げたい。
「まずはリーグ戦があるので、リーグ戦に重きを置いて、そこで関西の大学としてまた日本一を取れるだけの土台が作れればいいと思います」と意気込んだ。
もうシルバーメダルはいらない。
(取材・文 宇田春一)