2025年12月21日、香港メディア・香港01は、中国が米国債の保有額を2008年以来の低水準にまで減らしたことに関するコラム記事を掲載した。記事は、米財務省が発表した最新データによると、中国の米国債保有額は9月から118億ドル(約1兆9000億円)減少し、6887億ドル(約108兆円)となったことを紹介。ここ数年は持ち分を減らし続けており、1兆3000億ドル(約204兆円)を超えていた13年のピークから半分近くにまで保有額が低下したと伝えた。また、その手法は「感情的な投げ売り」ではなく、満期を迎えた債券を更新しない「戦略的撤退」であるとも指摘した。そして、持ち分を減らし続けている背景について、18年の貿易摩擦発生以降、米国による関税措置や金融制裁、国際銀行間通信協会(SWIFT)からの排除示唆といった「金融の武器化」が進んだことを受け、中国がドル資産への依存をシステム的に引き下げてきたことがあると解説した。さらに、米国債に質的な変化が生じていることも要因の一つとして言及。米連邦債務が38兆4000億ドル(約6030兆円)を突破して対国内総生産(GDP)比で125%に達していること、30年までに米国の財政状況がイタリアやギリシャといった財政脆弱(ぜいじゃく)国よりも悪化すると国際通貨基金(IMF)が予測していることを挙げ、かつての安全資産が「リスクの罠」と化している現状を伝えた。記事はまた、中国がすでに米国債を減らし続けられる「底力」を手に入れたことも指摘。今年1~9月だけで7200億ドル(約113兆円)を超える貿易黒字を記録し、貿易の安全保障を目的としたドル資産を蓄積する必要性が薄れていること、人民元の国際化が進みCIPS(クロスボーダー支払いシステム)の対象が189カ国・地域に拡大したことが、ドル依存脱却を可能にしていると紹介した。記事は最後に、米国債をめぐって英国がここ4年で保有額を倍増させる一方、筆頭保有国の日本は円安対策で売却を余儀なくされるなど、同盟国が米国債に翻弄(ほんろう)されている実態を中国との比較として紹介。片や中国は、米国債市場に影響力を及ぼしうる規模を維持しつつ、いつでも清算可能な形へ移行することで「持久戦」の体制を整えつつあると論じた。(編集・翻訳/川尻)