普段、テレビやネットで誰もが目にするCM。
そんなCMの制作には、実はいろいろな役割の人が関わっているんだとか。
そこでスタディサプリ進路では、『魔女の宅急便』『アルプスの少女ハイジ』『サザエさん』などの有名アニメをリメイクした、カップヌードルのCM『HUNGRY DAYS アオハルかよ。』を手掛けたスタッフの方々をリレーインタビュー!
第2回は『HUNGRY DAYS』制作現場の“CMプロデューサー”を務めている、早坂匡裕さんを直撃!
<<目次>>
CMプロデューサーってどんな仕事?
CM制作の流れ①「企画会議に参加」~「スタッフィングの提案」
CM制作の流れ②「演出コンテ作り」~「撮影現場」
CMプロデューサーという職業の魅力
映像・広告業界に入ったきっかけ
高校生の今からできること CMプロデューサーってどんな仕事?
大学卒業後、CMや映画・番組制作を行なう映像制作会社「東北新社」に入社し、現在はCMなどの映像コンテンツ全般の企画・制作を行なう「ギークピクチュアズ」で“CMプロデューサー”を務めている早坂さん。
一体、CMプロデューサーとはどんな仕事をする人なの?

予算やスケジュールはもちろん、企画から実際の映像を制作するにあたって、映像のクオリティを上げていくのもプロデューサーの役目ですね。
また、映像監督(ディレクター)やカメラマン、照明といった“制作スタッフ”と、クライアントや広告代理店の間に立って、お互いの意見をすり合わせるのも仕事のひとつです。
クライアントや代理店が考える『こういうCMにしたい』という希望と、制作チームが考える『メッセージが伝わる映像』は意見が割れることもあるので、それが成立するかジャッジしたり、調整したりするのもプロデューサーとしての重要な仕事です」
前回紹介したCMプランナーは企画を考える人で、CMプロデューサーは、その企画から最高の映像を作り上げられるよう、予算やスケジュールなどを取りまとめて現場を管理するのが仕事。
スムーズに制作が進行するように、“広告代理店と制作チームの橋渡し役”になるのがCMプロデューサーなんだ!
たいていの場合、プロデューサーの役割を補佐する『プロダクションマネージャー』という役職からスタートします。
プロダクションマネージャーは、細かい予算や制作スケジュールを組んだり、打ち合わせに参加して記録をつけたり、大勢の制作スタッフと実際にやり取りをして要望を聞いたり…。
各所との調整や進行をプロデューサーから任されています。
そうして現場での経験を積んで、数年後にプロデューサーになることができるんです。
僕の場合、プロダクションマネージャーからプロデューサーになるまで約7年かかりました」 CM制作の流れ①「企画会議に参加」~「スタッフィングの提案」
現場での経験が必要不可欠なCMプロデューサー。
では実際、CM制作が始まってからは具体的にどんなことをやっていくの?

また、プランナーからスタッフィング(スタッフを決める仕事)の相談を受けることもあります。
CMによっては、監督やカメラマン、照明などの主なスタッフだけでなく、ものすごく細かい作業を行なうプロも必要な場合があります。
たとえば飲料系のCMなら、グラスにキレイに水滴をつけて冷たくて美味しそうに見せる“シズル屋”を呼んだり、氷が溶けてコトンと動くようにヒモで引っ張る“仕掛け屋”がいたり…。
ひとつのCMに、何十人という大勢のスタッフが関わるんです」
※シズル…水滴だけでなく、肉汁を溢れさせたり、鍋から湯気を出したりと、料理をよりおいしそうに見せること
そんな細かなことを担当する専門の人がいるなんてびっくり…!
「どんなスタッフを起用するか、プランナーと相談して決めていく上で、企画に合ったプロを制作の経験や培ってきた情報からリストアップしたり、提案したりするのがプロデューサーの役割です」 CM制作の流れ②「演出コンテ作り」~「撮影現場」「監督(=演出家)が決まったら、監督は“演出コンテ”というものを作ります。
プランナーが企画時に作った、企画の軸やCMで伝えたい要素を盛り込んだ“企画コンテ”をもとに、実際に撮影するカット割りやカメラアングル、演技の内容などを細かく描いていきます。
実際に撮影や編集に入る前に、完成品をよりイメージしやすくするためですね。
たとえば今回の『HUNGRY DAYS』ハイジ篇の場合は、『ハイジとクララは同じ高校に通っている』『ハイジはみんなの人気者のクララにあこがれている』という設定が企画コンテに描かれていました。
演出コンテを作るときは、それをもとに『陸上部員の設定があるハイジと、読者モデルのクララのキャラクターをわかりやすく表現するために、ハイジはジャージ姿で過ごしている』『ふたりが親密な関係性ということを表現するために、放課後の教室にふたりだけでいるシーンから始まる』など、監督が構成を考えていきます。
プロデューサーは完成した演出コンテを見て、『この演出でクライアントが伝えたいメッセージは伝わるか』を判断するわけです。

©ZUIYO

たとえばアニメ制作の場合だと、実写では作れない登場人物のデフォルメや、存在しない光の演出などを描く表現の自由度があるので『一部の動きをオーバーにしてみよう』というアイデアが出たり、実写のCMの場合には『条件的に実物のセットを作る撮影は難しいけど、CGを使えば成立するかも』という提案が出たり…。
求められているクオリティの映像を作るために、もう一度演出コンテを練り直したり、クライアントにスケジュ―ルの交渉をしたりすることもありますね」

©ZUIYO

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演出コンテができあがり、ようやく実際の制作がスタート!
製作中も、プロデューサーは各分野の専門スタッフやクライアントとの意見交換を何度も積み重ねるのだとか。
撮影当日は、『もっと商品のロゴを見せてほしい』『もっとオーバーに楽しそうな演技をしてほしい』といったクライアントからの要望があれば取り入れ方を考えたり、天候に左右される屋外での撮影なら、予定していたスケジュールで撮り終えられるよう、撮影カットを最小限まで抑えられないか監督に提案したり…。
スタッフとさまざまな相談しつつ、最終判断を迫られることが多いですね。

ただ、スケジュールも予算も限りがあるので、その中でよりいいものを作るために『いかにベストな判断と調整を行なえるか』がプロデューサーの腕の見せどころですね」

また、今回の『HUNGRY DAYS』の場合は、アニメならではの苦労もあったとか。
でも、アニメの場合は、必要なカットだけを描いて進めていくので、修正をする場合は新たに描き直してもらわなければいけないんですよね。
僕自身、アニメCMを作るのが初めてだったので、そういう“文化の違い”にはかなり苦労しましたね…。
でも、アニメ制作会社の方々が協力的に寄り添ってくれて、助かりました」 CMプロデューサーという職業の魅力
“実現可能な範囲”を見極めながら大勢のスタッフの意見を聞きつつ、みんなが満足できるCMを作っていくなんて、CMプロデューサーの仕事ってかなり大変…! この仕事を続けていきたいと思う魅力や楽しさってどんなこと?

『ギャグ系が得意な監督と、ファッション系が得意なカメラマンを組み合わせたら面白そうだな』などの想像をしながら人選をして、実際に斬新な映像が生まれるとすごくワクワクします。
僕がつないだ縁で、スタッフ同士の輪が広がっていくのも楽しいですね」
また、「クライアントとスタッフの意見をうまく調整できたときも嬉しい」と、早坂さん。
「商品の発売日が決まっている中で、クライアントが求める映像を作るのが僕たちの仕事です。
どんな発注があったとしても『作れません』とは言いたくないので、『スタッフをあと◯人増やせば、このスケジュールで完成させられるのですが予算の追加はできますか?』『その内容を加えるにはあと◯日必要ですが、納品日を1日ズラせないでしょうか?』などと現実的な範囲を見極めながら交渉をしていきます。
これまでの経験を活かしつつ、“クライアントからの発注を実現できて、なおかつ制作スタッフへの負担をできるだけ抑える効率的な方法”を提案できたときは、いつもホッとしています」 映像・広告業界に入ったきっかけ
ところで、早坂さんはどうしてこの業界で働くことを選んだの?

当時はバンドブームで、家でずっと『スペースシャワーTV』で流れているバンドのミュージックビデオを観ていました。
当時からMVのメイキング映像を見て『これはどうやって撮ってるのかな』ということは気にしていましたね。
大学に入ってからは、高校時代の先輩に誘われて『SKA SKA CLUB』というバンドに加入したんです。
このバンドが意外と人気があって、ありがたいことにレコード会社主導でCDやミュージックビデオを作らせていただいたり、『サマーソニック』のようなフェスにも出させていただいたりしていました」

自分たちのミュージックビデオがあったり、サマーソニックにも出たりしていたなんてすごい! 早坂さんは、もともと映像を作る人ではなく“出る人”だったんだ!
でも、出演する側からどうして“作る人”に?
でも、ミュージックビデオの撮影現場には、撮影中ずっと照明にこだわっている照明さんなど、映像や音響のスペシャリストがたくさんいて。
『こんな面白い人たちと一緒になってモノ作りができたら楽しそうだな』と思ったのがきっかけで、映像業界に入ることを決めました。
当時お世話になっていたスタッフの方や、あこがれていた方に現場でお会いすることもあるのですが、同じ制作側の人間として再会できるのはすごく嬉しいですね」 高校生の今からできること
最後に、CMプロデューサーになるために高校生のうちからできることを聞いてみた。

「CMプロデューサーは、とにかくいろんな人の意見を聞いてまとめる仕事なので、高校生のうちから部活のキャプテンや学園祭の実行委員など、人をまとめる役を経験しておくといいかもしれません。
そこで、『Aくんの意見はこれでBくんの意見はこれなんだよね。
あとは、映像業界に興味があるのなら、今のうちからたくさんの映画やCMなどの映像作品を見ておくのがオススメです。
ただ観るだけではなくて、監督やカメラマンなどの名前を見て『誰が作ったか』を意識すると、『この監督はアクションの迫力がすごいな』『この人の作品はカラフルな映像が多いな』と、特徴がわかってくるので面白いですよ。
この知識は、将来スタッフィングの提案をするときに役立つと思います」
なるほど! つい出演者にばかり注目してしまいがちだけど、制作スタッフに注目すると勉強にもなるし、新たな視点で映像が楽しめそう!
また、映画やドラマのエキストラに参加して実際の撮影現場を見てみると、将来働く自分がイメージできるとのこと。
僕はひとつのことを追求するスペシャリストではないけれど、幅広い知識を活かして彼らと一緒にモノ作りをするのが仕事です。
いろんな考え方の人に興味があって、モノ作りが好きな人はCMプロデューサー向きだと思うので、ぜひ目指してみてください!」
クライアントや広告代理店と制作スタッフの間に立って、ひとつのCMを完成まで作り上げるCMプロデューサーという仕事。
周りの人をまとめることが得意な人は、将来の職業の選択肢のひとつにしてみては?
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投稿CM制作現場のまとめ役!「CMプロデューサー」の仕事にせまる!は【スタディサプリ進路】高校生に関するニュースを配信の最初に登場しました。