トップバッターは、今年4月にサード・アルバム『祝祭』をリリースしたカネコアヤノ。

Photo by Megumi Suzuki
続いては、メインステージの脇に設置されたサブステージにて東郷清丸。2枚組全60曲というとんでもないボリュームで、タイトルが『2兆円』というどこまでも冗談のようなファースト・アルバムをリリースし、巷では話題を集めている異端のシンガー・ソングライターだ。トレードマークでもある赤いトレーナーを着用し、スタインバーグのヘッドレス・ギターを抱えて登場した東郷。会場に向かって「今日、僕のこと初めて見る人?」と尋ねると、ほとんどの人が手を上げるアウェーの状態である。しかし、マルチ・エフェクターを駆使しながらギターをつま弾き、メロウでソウルフルな歌声を聴かせると、フロアの空気がガラッと変わった。プログレッシヴだがとびきりポップな「サマタイム」や、『みんなのうた』でも流れそうなほどシンプかつで美しい「よこがおのうた」。気づけばオーディエンスは彼を満面の笑みで見守り、無茶振りのようなシンガロングにも気軽に応じている。

Photo by Megumi Suzuki
ニコの「These Days」をBGMに登場したのは、京都を拠点に活動する4人組Homecomings。今年10月にリリースされた『WHALE LIVING』では、これまでとは打って変わって全て日本語詞に挑戦するなど新境地を見せて話題になっている。まずは映画『リズと青い鳥』のエンディングテーマに起用された「Songbirds」から。キラキラとしたアルペジオに導かれ、女性3人の美しいコーラスが会場中に響き渡った瞬間、胸が熱くなる。ファルセットを駆使した畳野彩加の、透き通るような声がティーンエイジ・ファンクラブを彷彿とさせる美メロを歌い上げ、会場は平和な空気に包まれた。その後も「Hull Down」や「Somoke」など、新作からの楽曲を中心に披露。そして最後は、『SALE OF BROKEN DREAMS』から躍動感たっぷりの「HURTS」でディストーション・ギターをかき鳴らしステージを後にした。

Photo by Megumi Suzuki
メインステージ、サブステージと交互にライブは進行。続いても京都在住のバレーボウイズ。総勢7人が所狭しとサブステージに並んでの演奏だ。

Photo by Megumi Suzuki
まるで新宿のアングラ劇を見ているようなバレーボウイズが終わり、メインステージではMONO NO AWAREがおもむろにリハーサル(音出し)を開始。まだ本番も始まってないのに、オーディエンスに(フェス名にちなんで)「スクランブル!」と大声で叫ばせるなど、早くも会場を一つに束ねていく。そしてそのまま1曲目の「機関銃を撃たせないで」。ソリッドで奇天烈なロックンロールがフロアを揺らしていく。かと思えばファンクチューン「窓」では、押し寄せるようなウォール・オブ・サウンドが聴き手を圧倒。「そういう日もある」や「イワンコッチャナイ」など、思わず声に出して言いたくなる、不思議な言語センスが炸裂していた。

Photo by Megumi Suzuki
「リハーサルからオーディエンスを魅了する」という意味では、続く中村佳穂もその1人。ピアノを弾きながらモニターチェクをしているかと思いきや、即興と思しき歌詞を突然紡ぎだし、食い入るように見守るオーディエンスに向けて、まるで挨拶のように歌いかけていく。今や引っ張りだこのギタリスト、西田修大(吉田ヨウヘイgroup)ら4人のサポート・メンバーを率いてのパフォーマンスは「圧巻」の一言。ハスキーでソウルフル、そして何故か耳にすると泣きたくなるような不思議な歌声が、心の一番深いところへストンと落ちていく。

Photo by Megumi Suzuki
しゃがれた歌声の常田大希(Gt, Vo)と、甘くメロウな歌声の井口理(Vo, Key)というコントラストが特徴の4人組バンド、King Gnuはとにかく音がデカイ。着ていたシャツがビリビリと振動するほどの爆音に、慌ててイヤープラグを耳に突っ込んだ。研ぎ澄まされたシンプルなフレーズが、それゆえに太く豊かに鳴り響くツェッペリンばりのロックンロール・ナンバー「Tokyo Rendez Vous」や、井口のファルセット・ヴォイスがたまらなく官能的な、アンノウン・モータル・オーケストラ系のサイケ・チューン「NIGHT POOL」など、昨年リリースされたフル・アルバム『Tokyo Rendez-Vous』からの楽曲を中心に、テンションの高いパフォーマンスを見せつけた。

Photo by Megumi Suzuki
いよいよ「Scramble Fes 2018」もラストスパート。サブステージには「キイチビール&ザ・ホーリーテッツ」が登場し、高揚感たっぷりのギター&オルガン・ロック「パウエル」からスタート。ところが、キイチビール(ヴォーカル&ベース)の声が、体調不良からか完全に潰れてしまって、普段の甘いハイトーンは見る影もなく殆ど声が出ない状態。それでも他のメンバーのサポートや、ファンの声援に支えられながら名曲「東京タワー」など9曲を完奏。筆者にとってはこれが彼らの初ライブだったので、少々残念ではあったが次に期待したい。

Photo by Megumi Suzuki
そして大トリを飾ったのは、今年10月にシングル「Summer of Love」をリリースしたYogee New Waves。まずはその表題曲から幕を開ける。

Photo by Megumi Suzuki
日本の音楽シーンの次世代を担う、フレッシュなアクトが勢揃いした「Scramble Fes」。彼らが来年以降、どんな活躍をしてくれるのかが今から楽しみだ。