従来の決済プラットフォーム各社が、風俗業から尻尾を巻いて逃げ出す中、ネットアダルトの出演者はデジタル通貨というハイテクの領域へ移行中だ。「インターネットの誕生だって、先陣を切っていたのは間違いなくアダルト産業です」と、アダルト産業に特化した決済トークンIntimateの情報主任は語る。


2年前、ギャビーはアダルト産業でキャリアを維持するのにひと苦労していた。彼女はチャットレディとして長時間ストリーミングライブし、オンライン上の客向けに動画コンテンツを提供していたが、この仕事はわりに合わなくなってきた。

大手クレジット会社や決済プラットフォームは、風俗業への決済手続きはお断り、というところがほとんど。ライブストリーミングのアダルトコンテンツも対象になっているため、ギャビーのようなチャットレディはストリーミング配信や客からの支払い受け取りに専用プラットフォームを利用しなくてはならない。残念なことに、こうしたサイトは競争が激しいため、中にはランキング方式を導入して、オンライン滞在時間をもとに女性たちの出番を調整するところが出てきた。

「オンライン状態での待機時間が長ければ長いほど、ランキングの順位が低くなるのよ」とギャビー。「だから文字通り、来る日も来る日もタダ働きをしなきゃいけない羽目になるの。オンライン状態なのにチップを稼げないでいると、1時間おきに頭の片隅で順位が下がる音が聞こえてくる。ほんっとヤキモキさせられるわ。だってランキングの順位が低いと、稼ぐチャンスも減るから、ランキングを上げようにも上げられないのよ」 このシステムで彼女は何度も痛い目に遭った。ギャビーいわく、とあるサイトでは、彼女はチップの65%もピンハネされたうえ、自分の画像を広告目的で好きなように使われていた。「あいつら、私のことを ”あなたの住む町で暮らすセクシーな独身女性がタダでHします”って売り込んだのよ」とギャビーは言う。
「私はどんなことだってタダでサービスするつもりはないわ」

チャットレディから足を洗おうかとも考えた。そんなときTwitter上で、仮想通貨で運営する動画チャットサイトCryptotittiesの抽選キャンペーンに出くわした。参加希望者は、Spankchainというブロックチェーン方式の決済プラットフォームを使ってチケットを購入する。現時点ではまだβ版だが、アダルト産業に特化して開発されたプラットフォームだ。「本気で仮想通貨をやってみようと思ったの。セックスワーカーが決済業者との間で抱える問題を仮想通貨がどう解決してくれるのかな、と思って」とギャビーは言う。

一時期Spankchainのアンバサダーも務めたギャビーは、広く蔓延した決済手続き絡みの問題に仮想通貨やブロックチェーン技術が有効な解決法をもたらすと信じている。「毎日、仮想通貨コミュニティのことばかり考えているか、交流してばかりいるわ」と彼女は言う。アダルト女優のジャニス・グリフィスが2017年Mediumに書いた記事にもあるように、Spankchainをはじめとするブロックチェーンの技術により、アダルト俳優たちは自分の財務状況を自分で管理できるようになった。「Spankchainがあれば、決済業者や仲介業者を介さず、才能ある働き手の懐により多くの稼ぎが入ってきます。出演者は仕事のやり方や今後の在り方を、自分たちで決められるようになりました」と記事の中で彼女は述べている。「今後のキャリアを自分で決められるというのは、究極の力です」

仮想通貨へ移行することで、クリエイティヴな面でも自由が手に入る。
例えば、クレジット決済に対応している人気の動画チャットサイトManyVidsは、あらゆる種類のフェチ行為、カメラの前での居眠りなどを利用規約の中で禁じている。出演者のアップロード規定には、「生理」などのNGワードリストが掲載されている。チャットレディのザディ・グレイいわく、仮想通貨を使えばこうした制限も完全に排除されるという。「基本的になんでも好きなことを発信できるわよ」

IT業界の外部の人間には、ブロックチェーン技術の基本的な機能はいまだ分からないことだらけだが、ギャビーも指摘しているように、「セックスワーカーの中にはもう何年もビットコインを使っている人もいる」という。Strip 4 BitやXotica、Tits For Bitcoin、NSFW RedditのグループGirls Gone Bitcoinなどは、ビットコイン決済に対応しており、2015年から仮想通貨の実験場として活用されてきた。

ベイエリアを拠点に活動するセックスワーカー、マキシン・ドーガンは、活動家であると同時に風俗産業従事者組合の創設者。彼女はBackpage.comが閉鎖された後、サイトへの広告支払いをするためにビットコインの使い方や取引方法を独学で学び、スタートしたばかりの仮想通貨の取引市場を一人で開拓していった。クレジット会社や金融機関はアダルト産業に制限をかけているため、ドーガンは小切手でサービスの対価を受け取ることも、クレジットカードでインターネット広告の支払いをすることもできなかった。広告なしでは仕事も得られない。ドーガンが広告掲載を維持するために仮想通貨を利用したのは、必ずしも選択肢があったからではなく、むしろ生き残るためにやむを得ず取り入れざるを得なかったのだ。そのために無駄な時間を費やした。セックスワーカーにとっては時は金なりなのだ。
「何時間も何時間も、タダ働き同然で仮想通貨とやらを勉強したの。いろいろリサーチしたり、会計処理のメカニズムを理解しようしたりね」

アダルト産業に端を発し、のちに男性の独壇場となったテクノロジーは仮想通貨が初めてではない。「インターネットの誕生だって、先陣を切っていたのは間違いなくアダルト産業です」というのはリー・キャロン・バトラー氏。アダルト産業に特化した決済トークンIntimateの情報主任を務めている。「webストリーミングを後押ししたのも、アダルトコンテンツや、アダルトコンテンツへのアクセス需要なんです」 最近でいえば、バーチャルリアリティが最初のブームを迎えたのも、セックスワーカーの仕事に発想を得、彼女たちの協力によって開発されたVRポルノからだった。「どういうわけか、IT業界の紳士方は私たちにこの手の手柄を与えるのが嫌みたいね」とグレイも言う。「男たちは、ああいうのを世に送り込んだのは自分たちなんだと、手柄を横取りして独り占めするのよ」

仮想通貨やブロックチェーン技術の専門容疑にも精通するギャビーやグレイのようなチャットレディたちは、仮想通貨の普及に大きな影響力を持っている。「仮想通貨なんて聞いたことないというお客に、仮想通貨を始めてみたら、と勧めれば、かなりの人数になると思うわよ」とグレイ。だが、アダルト産業を成功事例として認めつつも、IT企業は仮想空間からセックスワーカーたちを締め出そうとしている。

2017年、Intimateは毎年開催される世界的なテクノロジーの見本市Web Summitに出展を申し込んだ。同社はアダルトサービスやチャットレディをオンデマンドで予約できるオンラインプラットフォームRendevuを発表したかったのだが、Web Summit側が出展を認めなかった。Webs Summitの代表者によれば、Web Summitのハラスメント禁止ポリシーは出展者、販売者、登壇者が会場内で性的な発言や性的画像を使用、または性的行為を言及するのを禁じているという。
キャロン・バトラー氏はこのポリシーを、セックスを貶める行為だと考えている。「ようするに、『ここではセックスの話題はご法度』と言っているわけです。『風俗なんていかがわしい、ここは男の世界だ、ハードコアポルノの類は恥ずべきことんだ』と言っているにすぎません」

IT業界における性差別や風俗に対する風当たりのせいで、セックスワーカーたちは蚊帳の外。技術やプラットフォームの発展に手を貸してきた当人たちが締め出しを食っている、とグレイは言う。「SnapchatもTumblrも、みんな最初はヌード写真を掲載していたのよ。彼らがこれだけ広まったのも、ヌードのおかげ。それが何百万ドル規模の企業に成長したとたん、私たちは(利用するのは)ダメだっていうのよ」 ドーガンはこうした現象を、風俗産業が味わってきた長い歴史の通過点だとみている。つまり、新興企業がセックスワーカーたちを被験者にし、金づるとして利用するといういつものパターンなのだと。「世間での私たちの待遇に関して、大きな議論が起きている。その下地がようやくできてきたところよ」

SpankchainやIntimateといった決済サイトがますます成長を続ける中、一部のチャットレディたちは、財政面とキャリアのさらなる自立へ新たな希望を模索している。「Spankchainは先を行ってると思うわ」とギャビーは言う。「だって、業界にはびこる問題を解決しようとしているもの」 ギャビーにとって、Spankchainと出会ったことがキャリアの「転換点」となった。
自分がSpankchainと関わることで、セックスワーカーによるIT業界への貢献がもっと認知されれば、と願っている。「私たちの力になりたいという人たちもいるの。世間が見向きもしないところに価値を見出す人がいるのよ」

訂正:この記事の初稿では、RendevuがWeb Summitへの出展を認められたと記載していたが、正しくは、出展申し込みをしたもののの出展は認められなかった。
編集部おすすめ