公判手続きの時点ですでに様々なドラマが起きている。
ラニエール被告の裁判まで数日と迫ったところで、ネクセウム裁判の登場人物をあらためてチェックしてみる。
その1:アリソン・マック
「人物像および起訴内容」
おそらく、ネクセウム裁判の被告の中で一番の有名人。ワーナーのTVドラマ『ヤング・スーパーマン』では、スーパーマンの友人クロエ・サリヴァンを演じていた。マック被告はラニエール被告の右腕だとみられ、ネクセウムの信者を秘密結社DOSに勧誘していた疑いで、性的人身売買および強制労働の罪で起訴されている。ポッドキャスト『Uncovered: Escaping NXIVM』や、DOSのメンバーだったサラ・エドモンソン氏がニューヨーク・タイムズ紙の身の毛もよだつ暴露記事の中で告白しているように、DOSのメンバーは「奴隷」と呼ばれ、「担保」(ヌード写真や、他人に知られては困る不名誉な情報など)をグループの「主人」に差し出さなくてはならない。
またメンバーは入会の儀式の一環として、マック被告とラニエール被告のイニシャルを象ったネクセウムの紋章の焼印を押された。マック被告は、焼印を提案したのは自分だと認め、タトゥーにするべきだという意見を一蹴した。「私はこう言いました。『ちょっとみんな、タトゥーですって? 誰でも酔った勢いで足首に”BFF”とか、トランプ・スタンプ(ウェストからチラ見えするようにいれるタトゥーのこと)を入れるでしょ。

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「罪状認否」
恐喝共謀罪1件、恐喝罪1件で有罪を認めた。今月上旬、マック被告は法廷で涙ながらに、ネクセウム事件での自らの責任を謝罪し、信者を勧誘してラニエール被告に「奉仕」させたことを認めた。「この事件の被害者の皆さんには大変申し訳ないと思っています」と、法廷で言った。「私がキース・ラニエールの教えを信じ込んだせいで、傷つけてしまった人たちに心からお詫びします」。ネクセウム裁判の被告の中でも、マック被告がラニエール被告の一番の側近であり、グループの運営に大きく関与していたことを考えると、彼女が有罪を認めたことは間違いなく最大の衝撃だ。禁固20年を求刑されており、9月に量刑判決が言い渡される予定。
その2:ナンシー・ザルツマン
「人物像および起訴内容」
元精神科の看護婦だったザルツマン被告(グループの中では「パーフェクト」と呼ばれていた)は、ラニエール被告とともにネクセウムを興し、自己啓発講座「エグゼクティヴ・サクセス・プログラム」を作成した(彼女の娘ローレン・ザルツマンもネクセウム裁判の被告の1人。詳しくは後述)。彼女が逮捕された後、連邦捜査官が自宅を家宅捜索し、数十万ドル相当の現金を押収した。ネクセウム信者のユーザーネームとパスワードで勝手にメールアカウントにログインし、外部にネクセウムの情報を漏らしていないかをチェックしていた罪に問われている。

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「罪状認否」
恐喝共謀罪1件で有罪を認めた。「私自身の行いのいくつかは、悪事であっただけでなく、犯罪であったことを認めます」と、3月に出廷した際に涙を浮かべながら述べ、娘を入信させたことを謝罪した。「我々がやっていることはより大きな善行のためだと、正当化したのです」。33~44年の禁固刑を求刑されており、量刑判決は7月に言い渡される。
その3:ローレン・ザルツマン
「人物像および起訴内容」
ネクセウム共同創始者のナンシー・ザルツマン、通称「パーフェクト」の娘。サラ・エドモンソン氏によれば、ザルツマン被告は(彼女の元親友で、結婚式ではブライドメイドの一番手をつとめた)女性の地位向上を目的とする秘密結社だと言って彼女をDOSに入会させ、紋章の焼き印を入れた後、もし脱会すれば「担保」で世間のさらし者にすると脅した。当時エドモンソン氏は医療用のレーザーペンで焼印をほどこされ、その儀式のもようはいわゆる「主人」らによって録画された。ザルツマン被告は、ラニエール被告の元セックスパートナーを2年間、本人の意思に反して奴隷として扱い、強制的にネクセウムの雑務をやらせ、「私や他の人間から頼まれた仕事を終わらせないと、メキシコに強制送還する」と脅した罪に問われている。噂では、この女性はラニエール以外の男性に恋愛感情を抱いた罰として、身分証明書なしでメキシコに送り返されたとみられる。

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「罪状認否」
恐喝および恐喝共謀罪の2件の重罪で有罪を認めた。量刑判決は9月。
その4:キャシー・ラッセル
「人物像」
ネクセウムの元経理。他の被告同様、恐喝共謀罪で逮捕、起訴された。検察側はラッセル被告とラニエール被告が共謀して不法移民を密入国させていたと主張。ラッセル被告はすでに死亡している国際開発銀行(IDA)の女性職員のカードを使ったとみられる。ごく最近では今月上旬、ラッセル被告がネクセウムおよびラニエール被告にかなり傾倒していることが判明。報道によれば、証言中に80回以上も憲法修正第5条の権利を主張したうえ、ラニエール被告がDOSのメンバーや未成年の少女と性的関係を持っていたかという質問はおろか、本人の体重や学歴といった当たり障りのない質問に対しても証言を拒否したという。

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「罪状認否」
金曜日の時点で、ラッセル被告は査証詐欺罪1件で有罪を認めている。
その5:クレア・ブロンフマン
「人物像および起訴内容」
2000年頭から入信している姉の勧めでネクセウムに入信した。はじめは乗り気でなかったものの、すぐに信者の中心的存在となり、父親の故エドガー・ブロンフマン氏の反対を押し切って、姉のサラとともに6500万ドル相当をネクセウムに寄付した。シスター・ブロンフマンはネクセウムを反対勢力から擁護することにも積極的で、グループのカルト商法的に対する数々の訴訟を金でもみ消した。クレア被告はDOSの存在や焼印の儀式を知らなかったとみられるが、2017年に秘密結社の存在を知った際にはラニエール被告の擁護に回り、「変革をもたらす画期的なアイデアと、大勢の人々の人生を豊かにし続けるツールが失われれば、悲劇が訪れるでしょう」と声明を発表した。3月におこなわれた裁判では公判中に卒倒し、話題となった。

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「罪状認否」
先週金曜日の時点では、不法移民を匿ってブロンフマン被告およびネクセウムに「労働および奉仕」をさせていた件で、2014年政府に偽証したとして有罪を認めている。また、死亡した友人のクレジットカードをラニエール被告に使用させた件でも有罪を認めている。裁判は避けられるとしても、求刑は2年以上の禁固刑、また司法取引の条件として600万ドルを裁判所に支払わねばならない。量刑判決は7月。
その6:キース・ラニエール
「人物像および起訴内容」
自称天才のラニエール被告は、1990年代にザルツマン被告とネクセウムを創立する以前から数々のマルチ商法に関わっていた。グループの中では「指導者」と呼ばれ、彼の自己啓発術を使えば個人的あるいは職業上の問題から克服することができると主張し、多くの人々を入信させた。15~20人の女性が性的奉仕を行うハーレムを形成していたといわれ、彼女たちに絶食を強要してスリムな体系を維持させたほか、強制労働させていた。ラニエール被告は強制労働、通信詐欺共謀、人身売買、性的目的での人身売買の罪に問われている。さらに3月には、2005年から2018年にかけて10代の少女と性的関係を持ち、「奴隷」の1人として働かせ、「児童ポルノに該当する」画像を送らせていたとして、児童ボルノ所持罪で訴追された。また少なくとも1名の未成年少女と性的関係を持っていた罪にも問われている。

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「罪状認否」
ラニエール被告はネクセウムのメンバーでただ一人、無罪を主張。